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線状皮膚炎
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

線状皮膚炎の概要

線状皮膚炎とは、「アオバアリガタハネカクシ」という虫の体液によって引き起こされる皮膚炎です。

この虫は通常、人間を刺すことはありませんが、体内に毒性の強い体液(ペデリン)を持っています。そのため、誤って触ってしまったり、潰したりしてしまった際に皮膚に体液が付着し、線状皮膚炎を発症することがあります。

アオバアリガタハネカクシは日本全国に広く生息し、春から秋にかけて活発に活動します。湿気を好み、川辺や田んぼ、池、沼などに生息しており、夜間は光に集まる習性があります。 そのため、キャンプや川遊びをしている際や、夜間自転車に乗っている際などに気づかずに触れてしまうことがあります。

アオバアリガタハネカクシの体液が付着した患部は赤く線状に腫れ、強い痛みを伴います。このような症状がやけどの症状と似ていることから、「やけど虫」とも呼ばれています。

万が一体液が付着した指で目を擦ってしまった場合には、「角膜潰瘍」「結膜炎」などを生じる恐れもあるため、注意が必要です。

発症を予防するためには、アオバアリガタハネカクシに触れないようにすることが重要です。万が一触れてしまった場合には、その部位を流水で洗い流し、手などで触らないようにしましょう。

皮膚炎に対しては、副腎皮質ステロイド外用薬を用いた局所治療がおこなわれます。

線状皮膚炎の原因

アオバアリガタハネカクシという虫の体液に触れることで発症します。

アオバアリガタハネカクシは体長7mm程度の小さな虫で、黒と茶色のツートンカラーをしていることが特徴です。背中には青みがかった羽が生え、アリのような見た目をしていること、大きな羽を隠していることからこのような名称が付けられています。

アオバアリガタハネカクシは「ペデリン」と呼ばれる強力な有毒物質を含む体液を持っており、触ったり手で払いのけたりした際に体液が皮膚に付くことで、線状皮膚炎を発症します。

アオバアリガタハネカクシは国内全域に広く生息し、春から秋にかけて活動します。湿気のある場所を好むため、川原や池、田んぼ、沼などの付近に生息しています。

基本的には野外で繁殖するものの、光に集まる習性があるため夜間屋内に侵入することもあります。また、故意に触れなくても、夜間に自転車に乗っているときなどにアオバアリガタハネカクシが身体に付着してしまうこともあります。

線状皮膚炎の前兆や初期症状について

アオバアリガタハネカクシに触れると、数時間〜12時間ほどして皮膚が赤く腫れます。身体にとまったアオバアリガタハネカクシを払いのけてしまうと、体が潰れて体液が広く伸び、線状のみみず腫れのようになります。

ペデリンの毒性は非常に強く、炎症が皮膚の深層(真皮層)まで及んで強い痛みやひりつきを伴います。症状は時間の経過とともに強くなり、数日ほど経過すると患部が膿を持つこともあります。

また、ペデリンが付着した手で目を触ったりこすったりすると、角膜潰瘍や結膜炎などの目の炎症を引き起こすことがあります。

線状皮膚炎の検査・診断

線状皮膚炎の患部は特徴的な見た目をしていることから、問診や視診等で診断することが可能です。

患部が赤く線状に腫れており、身体に虫がついて払いのけたなどの経緯が確認されれば、線状皮膚炎と診断されます。

線状皮膚炎の治療

医療機関では、副腎皮質ステロイド外用薬を用いた局所治療がおこなわれます。

アオバアリガタハネカクシの体液が他の部位に付着しないよう、触れてしまった部位を手で擦るなどせず、流水で速やかに洗い流しましょう。

薬局で購入できるステロイド外用薬を用いることもできますが、その際には「ストロングランク」など作用の強いものを使用する必要があります。そのため、薬剤師に相談すると良いでしょう。

患部は痛みが強く膿疱ができることもありますが、通常1ヶ月ほどでかさぶたが剥がれて改善していきます。しかし、治癒した後に痕が残ることもあります。

線状皮膚炎になりやすい人・予防の方法

アオバアリガタハネカクシは日本全国に生息しているため、触れてしまうことで誰でも線状皮膚炎を発症する可能性があります。

線状皮膚炎を予防するには、アオバアリガタハネカクシを避けるための対策が必要です。アオバアリガタハネカクシはアリのような見た目で黒と茶色のツートンカラーという特徴的な外観をしています。このような虫を見かけたら、近づかない、触らないことが重要です。

自宅の庭などにアオバアリガタハネカクシがいた場合には、捕まえず殺虫剤などで駆除しましょう。また、夜間は光に集まってくるため、窓を開けたままにせず、網戸やネットなどを活用して侵入を防止しましょう。

アオバアリガタハネカクシはとくに6〜8月に活発に活動するため、このような時期にキャンプや川遊びをする際は特に注意が必要です。子どもが興味を持って触ることのないよう注意し、長袖・長ズボンを着用して皮膚を保護するようにしましょう。

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