

監修医師:
五藤 良将(医師)
尋常性毛瘡の概要
尋常性毛瘡(じんじょうせいもうそう)は、毛穴に細菌が感染して起こる皮膚のトラブルです。主にヒゲを剃った後の肌に発生しやすく、一般的に「カミソリ負け」として知られています。
皮膚には無数の毛穴があり、そこから毛が生え、皮脂も分泌されています。尋常性毛瘡では、ムダ毛を剃ったときなどに皮膚が傷ついて毛穴に細菌が入り込み、炎症が起きることで発症します。
尋常性毛瘡の症状は皮脂分泌が活発な思春期以降の若い世代に多く見られます。皮脂の分泌が多いことで毛穴が詰まり、細菌が増殖しやすい環境が作られやすくなります。
尋常性毛瘡の治療は主に抗菌薬の外用薬によっておこないます。早期に適切な治療を始めることで、症状の改善を早めたり、傷跡を最小限に抑えたりすることができます。
日頃から予防のために肌に優しいヒゲ剃りを心がけることも大切です。

尋常性毛瘡の原因
尋常性毛瘡は、皮膚に存在している常在菌が毛穴に入り込むことで起こります。健康な皮膚では常在菌は問題を起こしませんが、さまざまな要因が重なることで炎症を起こすことがあります。
最も一般的な原因は、カミソリでヒゲを剃る際についた小さな傷です。とくに切れ味の悪いカミソリを使ったり、強く押しつけたりすると、目に見えない小さな傷が多数でき、細菌が侵入しやすくなります。
また、体力の低下や疲れ、ストレス、睡眠不足なども要因となります。これらの状態が続くと、皮膚の抵抗力が弱まり、普段は問題のない細菌でも感染しやすくなります。
さらに、高い気温や湿度で皮脂が多く出たり、マスクなどで蒸れた状態が続いたりすることも発症の原因となります。
一度症状が出ると、掻いたり触ったりすることで周りに広がることもあるため、清潔な状態を保つことが大切です。
尋常性毛瘡の前兆や初期症状について
尋常性毛瘡の症状は、皮膚の下に硬いしこりが触れることから始まります。この段階では軽い痛みや違和感を感じる程度ですが、そのまま放置すると徐々に症状は進行していきます。
その後、皮膚が赤く腫れて痛みを感じるようになります。この腫れは徐々に大きくなり、熱を持ち、触れると強い痛みを伴うようになります。腫れた部分の中心が少し盛り上がり始め、最終的には白や黄色の膿がたまります。
この段階では、見た目の問題が生じるだけでなく、痛みでヒゲ剃りもできなくなることがあります。
症状は一箇所だけでなく、複数の場所に同時にあらわれることもあります。
尋常性毛瘡の検査・診断
症状の様子や経過から尋常性毛瘡の診断を行います。問診では、症状が出始めた時期やヒゲ剃りの方法などを詳しく確認します。
通常は症状の特徴から診断できますが、炎症が広がっていたり、なかなか治らない場合は、膿の培養検査を行うことがあります。培養検査で原因となっている細菌の種類を特定し、より効果的な治療法を選ぶことが可能になります。
何度も繰り返し発症する場合は、体の抵抗力が低下していないかを調べるために血液検査を行うこともあります。これにより、症状が長引いたり、再発したりする原因を見つけることができます。
尋常性毛瘡の治療
尋常性毛瘡の治療は抗菌薬の薬物療法を中心に行われます。
症状が軽い場合は、抗菌成分を含んだ塗り薬を使用します。患部に直接塗ることで、細菌の増殖を抑えて炎症を和らげる効果があります。
炎症が強い場合や、複数の場所に症状がある場合は、飲み薬の抗菌薬を使用したり外用ステロイド薬が処方されたりすることもあります。
症状が進行して膿が過度にたまった場合は、切開して膿を出す治療が行われることもあります。
また、治療中は、可能な限りヒゲ剃りを控えめにするように指導されます。症状が落ち着いてきても、しばらくは慎重にヒゲ剃りを行うことが、再発防止につながります。
尋常性毛瘡になりやすい人・予防の方法
尋常性毛瘡は、ヒゲの濃い若い男性に多く見られます。皮脂の分泌が活発な時期であることや、日常生活でヒゲ剃りが必要になることが原因です。肌が敏感な人は特に発症しやすい傾向があります。
予防のためには、肌に優しいヒゲ剃りを心がけることが大切です。カミソリは常に新しいものを使い、ヒゲを剃る際にも丁寧に行います。電気シェーバーを使用する場合も、刃の状態が良いものを選び、強く押しつけないように注意しましょう。
ヒゲを剃るときは十分に肌を温めてから行いましょう。剃った後は清潔なタオルで優しく拭き、保湿剤などで肌を整えることで、刺激をできるかぎり抑えられます。炎症がある部分は避けて剃り、傷つけないよう十分注意してください。
また、日頃から健康的な生活を送り、十分な睡眠をとることで、肌の抵抗力を保つことも重要です。体調の管理を徹底しながら肌への刺激を抑えることで、発症のリスクを下げることができます。




