環状肉芽腫
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

環状肉芽腫の概要

環状肉芽腫とは、小さく盛り上がったリング状の皮疹が特徴的な皮膚疾患です。

はっきりとした原因は解明されていないものの、紫外線やけががきっかけとなるほか、糖尿病や虫刺症、末梢循環障害、HIV、B型肝炎などの疾患が関連して発症すると考えられています。

リング状の皮疹は通常全身に1つもしくは複数認められますが、糖尿病の患者さんでは全身に認めることもあります。皮疹は手足にできやすく、特に手や足の甲に多く発生します。

環状肉芽腫は見た目から診断することも可能ですが、より正確な診断には皮疹の一部を採取しておこなう「皮膚生検」が必要になることもあります。

一般的に特別な治療をおこなわなくても自然に治癒する傾向にありますが、完治までは数年単位の時間がかかることもあります。

治療をおこなう場合には、症状に応じて薬物療法や光線療法、凍結療法が選択されます。

環状肉芽腫の原因

環状肉芽腫のはっきりとした原因は分かっていません。しかし、何らかの要因によって免疫に異常が生じることで発症するのではないかと考えられています。

発症のきっかけとなる要因には、虫刺症や糖尿病末梢循環障害のほか、けがや紫外線などが挙げられます。また、HIVやB型肝炎などの感染症が原因で発症することもあります。

環状肉芽腫の前兆や初期症状について

環状肉芽腫の症状は、体の一部に小さく盛り上がった皮疹が発生し、徐々にリング状に広がります。リング状の皮疹は手足にできることが多く、特に手の甲や足の甲に好発します。

また、皮疹は1つのみ生じることもあれば、複数できることもあります。全身に認める場合は、糖尿病を合併しているケースが多く見られます。

皮疹は通常薄い赤色をしていますが、なかには健康な皮膚と同じような色をしていたり、青みがかったりしているものもあります。

一つひとつが盛り上がっているのに対し、中央部分が凹んでいることも特徴です。

皮疹を押すと軽い痛みを認めることがありますが、一般的には痛みや痒みなどの自覚症状は伴わないことが多い傾向にあります。

環状肉芽腫の検査・診断

環状肉芽腫は、一般的に視診によって皮疹の状態から診断されます。

しかし、ほかの疾患との鑑別や、確実な診断をするために、皮膚生検がおこなわれることがあります。

皮膚生検では、皮疹の一部を採取し、顕微鏡で細胞の状態を詳しく調べます。

環状肉芽腫の治療

環状肉芽腫では、症状に応じて治療法が判断されます。

環状肉芽腫は自然に治癒することも多く、特別な治療をおこなわず経過を観察することもあります。

しかし、治癒するまでに時間がかかることが想定される場合や、痛みなどの自覚症状を伴う場合には、皮疹に対する局所治療がおこなわれることがあります。

局所治療としては、薬物療法、光線療法、凍結療法などがあります。

薬物療法

薬物療法では、免疫反応に伴う炎症を抑える作用のある副腎皮質ステロイドや、「タクロリムス」という免疫抑制剤などの外用薬が用いられます。

外用薬のほか、症状によっては皮疹に副腎皮質ステロイド薬の注射をおこなうこともあります。

光線療法

環状肉芽腫では、紫外線を用いた光線療法が行われることがあります。現状実施できる医療機関は限られていますが、Narrow-band UVBやエキシマレーザーなどの光線治療により、皮疹の改善効果が期待できると考えられています。
特にエキシマレーザーは限局した病変にピンポイントで照射できるため、効果的な選択肢とされています。治療法は症状の広がりや患者の状況に応じて選択されるため、医師と相談しながら適切な方法を決定することが重要です。

凍結療法

凍結療法は、液体窒素を用いて皮疹の細胞を壊死させ、取り除く治療法です。

治療では、液体窒素を含ませた綿棒を皮疹に当てる処置を複数回おこないます。細胞が壊死した皮疹は次第に剥がれ落ち、下から新しい皮膚が再生します。

治療後は凍傷によって痛みが生じますが、時間の経過とともに軽快します。

環状肉芽腫になりやすい人・予防の方法

環状肉芽腫の明確な原因は解明されていないため、なりやすい人や予防の方法については分かっていません。

しかし、虫刺症や糖尿病、末梢循環障害、HIV、B型肝炎などがきっかけで発症するケースもあります。そのため、このような疾患を予防したり、既に発症している場合には適切な治療を受けたりすることで環状肉芽腫の予防にもつながるかもしれません。

虫刺症はノミやシラミ、マダニなどに刺されることで発症することがあります。自宅にノミやシラミ、マダニなどが発生している場合には、殺虫剤を使用したり、駆除業者に依頼したりすると良いでしょう。

また、糖尿病は規則正しい生活習慣によって発症予防につながります。定期的な健康診断を受けながら、バランスの取れた食事や適度な運動、禁煙を心がけましょう。末梢循環障害も、糖尿病や高血圧、肥満などがある場合に発症リスクが高まるため、同様の対策が必要です。

HIVやB型肝炎は、原因となるウイルスに感染することで発症します。どちらも感染者との性行為によって感染することがあるため、不特定多数の人との性行為は避けるようにしましょう。

このほか、環状肉芽腫は紫外線の影響によっても発症する可能性があります。紫外線対策のために、外出時には日焼け止めや日傘、サングラスなどを使用したり、紫外線の強い日中などは外出を控えたりすることが有効です。


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