カンジダ性指間びらん症
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

カンジダ性指間びらん症の概要

カンジダ性指間びらん症は、手足の指の間に発症する「皮膚カンジダ症」の一種です。「カンジダ属」に分類される真菌(カビ)によって発症します。

カンジダは健康な人の口腔内や膣、消化管などにも生息するありふれた真菌で、通常は体内で増殖することはありません。しかし、カンジダは湿っている部位で増殖したり、免疫力が低下している際に体内で増えたりすることがあります。

カンジダ性指間びらん症では、手足の指の間が湿っている状態が長いことで発症するケースが多く、特に水仕事が多い人に好発します。家事に従事する中高年の女性に多く発症しますが、水仕事をしている人など条件次第であれば男性でも発症することがあります。

ほかにも、免疫力の低下しやすい高齢者、妊婦、がんや糖尿病、膠原病、AIDSを発症している人、抗がん剤や副腎皮質ステロイドで治療中の人などに発症することもあります。

発症すると患部が赤くただれ、周囲の皮膚が白くふやけたような状態になります。痒みや痛みを伴うこともあり、日常生活に支障をきたすこともあります。症状が十分に改善しないまま放置していると、患部が徐々に広がって広範囲に及ぶこともあります。

カンジダ性指間びらん症を予防したり症状の悪化を防いだりするためには、できるだけ素手で水に触れないようにするほか、水仕事の際に手袋を使用することが有効です。

既に発症している場合には、必要に応じて抗真菌薬の外用薬や内服薬を用いた治療がおこなわれます。

カンジダ性指間びらん症の原因

カンジダ性指間びらん症は、手足の指の間にカンジダ属の真菌が増殖することで発症します。

カンジダは健康な人の口の中や膣、腸などにも生息し、通常は過剰に増えることはありません。しかし、湿潤している環境で増殖しやすいため、指間が濡れている時間が長いことでカンジダ性指間びらん症を発症する可能性があります。

特に家事や職業上の習慣が引き金となることが多く、日常的に食器洗いをする主婦や飲食業、鮮魚商などに従事する人に好発します。

汗をかきやすい夏場に指間が湿っていたり、寝たきりの患者さんのスキンケアが不十分だったりした場合に発症するケースもあります。

このほか、カンジダ性指間びらん症は全身の免疫力が低下した際にも発症しやすくなります。そのため、副腎皮質ステロイド薬や抗がん剤などの使用や糖尿病、がん、膠原病、AIDSなどの基礎疾患、放射線療法、透析治療などは発症リスクが高まる傾向にあります。

免疫力の低下しやすい高齢者は、病気や治療の有無に関わらず、カンジダ性指間びらん症を発症することもあります。

カンジダ性指間びらん症の前兆や初期症状について

カンジダ性指間びらん症では、手足の指の間が赤くただれます。ただれは手の場合、右手の中指と薬指の間に生じやすく、足の場合には薬指と小指の間に多く認めます。

患部は徐々に範囲が広くなり、中心部が真っ赤になって周囲の皮膚が白くふやけた状態になります。また、時に細菌感染を合併し、痒みや痛みを伴うケースもあります。

カンジダ性指間びらん症の検査・診断

カンジダ性指間びらん症の検査では、問診や視診、顕微鏡検査などがおこなわれます。

皮膚の視診からカンジダ性指間びらん症が疑われる場合は、問診をおこない職業や生活習慣などについて確認します。

しかし、視診や問診でカンジダ性指間びらん症が疑われる場合でも、ほかの疾患と区別がつきにくいケースがあります。特に、手の指間では細菌感染の一種である「紅色陰癬」、足の指間では皮膚糸状菌によって引き起こされる「白癬」と鑑別しにくいことがあります。

鑑別のために、患部から角質などを採取して顕微鏡でカンジダの存在を確認したり、患部にブラックライトを当てて真菌の有無を観察したり(ウッド灯検査)することもあります。

カンジダ性指間びらん症の治療

カンジダ性指間びらん症の治療では、生活習慣の改善や症状に応じた薬物療法がおこなわれます。

生活習慣の改善

生活習慣の改善は、症状の改善と再発予防のためにおこなわれます。

カンジダ性指間びらん症は、多くの場合、手が濡れている時間が長いことで発症します。そのため、水仕事をおこなうことが多い人に対しては、ゴム手袋を着用して水に触れたり、極力素手で水に触れたりしないよう指導されます。

薬物療法

症状に応じて外用薬や内服薬を用いた治療がおこなわれます。

軽症の場合は、カンジダ属の真菌に有効な抗真菌薬の外用薬が用いられます。カンジダ属の真菌に有効な抗真菌薬には、「マイコスポール」「アトラント」「ニゾラール」などがあり、一般的にクリームや軟膏などの形状で使用します。

外用薬で症状が軽快しない場合や、患部が広範囲に及んでいる場合などは、抗真菌薬の内服薬を使用することもあります。内服薬としては、カプセル錠の「イトリゾール」「ジフルカン」や、錠剤の「ボリコナゾール」などが用いられます。

カンジダ性指間びらん症になりやすい人・予防の方法

日頃手を濡らすことの多い人は、カンジダ性指間びらん症になりやすい傾向にあります。カンジダ属の真菌は湿潤している環境によって増殖しやすいため、日常的に食器洗いをする主婦や飲食業、鮮魚商などの人は特に注意が必要です。

発症を予防するためには、水に直接触れることをできるだけ控えましょう。水仕事をする場合は、ゴム手袋を使用することも有効です。素手で水仕事をした際は、水気をよく拭き取ってください。

このほか、免疫力の低下によって発症することもあるため、糖尿病やがん、AIDS等で治療中の場合には皮膚を清潔に保つよう心がけましょう。


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