

監修医師:
高藤 円香(医師)
皮膚真菌症の概要
皮膚真菌症とは真菌(カビの一種)が皮膚に感染することで起こる病気です。
水虫やたむしなど、身近にみられる皮膚の感染症の多くが皮膚真菌症に当たります。
皮膚真菌症は感染する部位によって症状が異なり、かゆみや赤みをともなう発疹が現れたり、皮膚や爪が白っぽくなったりするのが特徴です。
プールや銭湯、ジムなどの共用施設の場で他者から感染することがあります。
また、基礎疾患が原因で免疫力が低下している状態でも発症しやすくなります。
皮膚真菌症は医師の指示通りに抗真菌薬を使用することで、治療により治ることが多い病気です。
発症後は周囲の人に感染する可能性があるため、早めに適切な治療を受けましょう。
皮膚真菌症の原因
皮膚真菌症の主な原因は「皮膚糸状菌(ひふしじょうきん)」や「カンジダ」「マラセチア」などの真菌です。
これらの真菌は高温多湿の環境で繁殖する特徴があるため、足の指の間や下着が当たる部分など、皮膚と皮膚が重なる部分で皮膚真菌症が発症しやすくなります。
また、皮膚真菌症の人が使用したタオルやスリッパ、靴下などでも繁殖するため、プールや銭湯などの共用施設では他者からの感染に注意が必要です。
特に高齢者や基礎疾患がある人などは免疫機能が低くなりやすく、感染しやすくなります。
皮膚真菌症の前兆や初期症状について
皮膚真菌症の主な症状は、発疹が出たり皮膚がふやけたりすることで、部位によってはかゆみをともないます。
足の指の場合は指の間の皮膚がむけたり、皮膚が白くふやけたような状態になったりします。
爪に感染した場合は爪が白っぽく濁ります。
発症初期は爪の一部分のみに症状が出ますが、放置すると白濁が広がり爪全体が肥厚します。
脚の付け根(鼠径部)の場合、周囲の皮膚との境界がはっきりしている発疹が出現し、赤みやかゆみをともなうことが多いです。
皮膚真菌症の症状は、ほかの皮膚疾患とも似た症状を示すことがあるため、見分けがつきにくいことが特徴です。
症状が見られたら自己判断は避けて医療機関で医師の診察を受けましょう。
皮膚真菌症の検査・診断
皮膚真菌症の診断は問診や視診などの検査を通しておこないます。
視診では発疹の形や広がり方、色調など、皮膚真菌症の特有の症状がないか確認します。
また、Wood灯検査や直接検鏡法、真菌培養検査などをおこなうこともあります。
Wood灯は特定の種類の真菌に紫外線を当てると蛍光を発するライトで、真菌の有無を確かめるために用いられます。
直接検鏡法は症状のある部分から採取した皮膚や爪の組織を、顕微鏡で直接観察する検査で、より正確性の高い診断をするために利用します。
真菌培養検査は採取した組織を培養し、どのような種類の真菌に感染しているのかを詳しく調べる検査です。
皮膚真菌症の治療
皮膚真菌症の治療は、主に抗真菌薬を使用します。
抗真菌薬には軟膏やクリームなどの外用薬や、内服薬があり、症状の程度や部位、状態などを考慮して薬剤を選択します。
外用薬による治療は皮膚真菌症の標準的な治療法です。
抗真菌作用のある軟膏やクリームを必要な部位に直接塗ります。
薬の成分は皮膚を介して吸収されるため、効果を感じるまでに時間を要する場合があります。
内服薬による治療は、症状がひどい場合や広範囲に及ぶ場合、外用薬が届きにくい部位に症状が出現している場合におこないます。
内服薬は体内から作用するため、外用薬より早い効果が期待できます。
皮膚真菌症の治療には、治療効果を高めたり悪化を防いだりするために、生活習慣の改善も重要になります。
タオルや靴下を毎日清潔なものに交換したり、通気性の良い靴を着用したりして、蒸れが生じないようにすることが大切です
また、治療中は定期的に医師の診察を受け、症状の経過観察を受ける必要があります。
医師から指示が出る前に抗真菌薬の使用を中断すると再発する可能性があるため、症状の改善がみられても自己判断でやめることは控えましょう。
皮膚真菌症は適切な治療を行えば治癒が望める病気です。
状態によっては症状の改善に時間がかかることもありますが、医師の指示通りに治療を続けることが不可欠です。
皮膚真菌症になりやすい人・予防の方法
汗をかきやすい体質の人や密閉性の高い靴・下着を着用することが多い人は、皮膚が蒸れることで真菌が増殖しやすく、皮膚真菌症になりやすいといえます。免疫機能が低下しやすい疾患の人や高齢者なども、皮膚のバリア機能や免疫力が低下することで真菌に感染しやすいです。
皮膚真菌症の予防のためには日常生活でのケアが重要です。
入浴後は指の間や皮膚が重なる部分などの水分をしっかり拭き取り、十分に乾かすよう心がけましょう。
衣類は吸湿性や通気性の良い素材のものを選び、毎日清潔なものに取り替えることが大切です。
プールや銭湯、フィットネスジムなどの共用施設を利用する際は、自分専用のスリッパやサンダルを着用し、素足で床に直接触れることは避けましょう。
家庭内の浴室の床やマットは真菌が繁殖しやすい場所であるため、こまめに清掃してください。
家族の中に皮膚真菌症に感染している人がいる場合は、タオルやスリッパなどの共用を避け、それぞれ専用のものを使用することが大切です。
気になる症状が出た場合は早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
関連する病気
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- 皮膚粘膜カンジダ症
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