滴状乾癬
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

滴状乾癬の概要

滴状乾癬(てきじょうかんせん)は乾癬の一型で、白色の皮(鱗屑:りんせつ)が付着した米粒ほどの赤い皮疹が全身に出現する疾患です。

乾癬はフケのような皮が付着した赤い皮疹が全身に出現する疾患で、遺伝的に発症しやすい体質があることが分かっています。遺伝的な体質に加え、不規則な生活習慣や感染症、ストレスなどの要因があると、乾癬を発症しやすい傾向にあります。

滴状乾癬は小さな子どもが風邪をひいた際に発症するケースが多く見られます。風邪が治癒すると皮膚症状も軽快する傾向にありますが、一部では一度治癒した後、成人になってから尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)を発症することがあります。

滴状乾癬を診断するために、皮疹を一部採取して顕微鏡で調べる生検をするケースもあります。

治療では症状の程度や皮疹の出現する範囲によって、薬物療法や光線療法などが考慮されます。

滴状乾癬の原因

滴状乾癬のはっきりとした原因は分かっていませんが、遺伝的に乾癬を発症しやすい体質があると考えられています。
家族や親族に乾癬の発症者がいる人は、感染症や不規則な生活習慣、肥満、ストレス過多、特定の薬剤の使用などによって発症する可能性があります。

欧米では、家族内で乾癬を発症する頻度が20〜40%と高い確率であるのに対し、日本では家族内の発症率は4〜5%といわれています。そのため、家族内に乾癬の発症者がいても必ずしも自分に発症するとは限りません。

滴状乾癬では、特に小さな子どもが風邪をひいた際に急激に発症する事例が多く見られています。

出典:公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q &A 「感染の原因は何ですか?」

滴状乾癬の前兆や初期症状について

滴状乾癬の発症初期には、全身の皮膚に白く厚い鱗屑の付いた米粒状の赤い皮疹が出現します。多くは風邪をひいた際に発症し、風邪症状の軽快に伴って皮膚症状も治る傾向にあります。

滴状乾癬の検査・診断

滴状乾癬の検査では、問診や視診、生検、血液検査などがおこなわれます。

滴状乾癬の症状は特徴的であるため、問診や視診で診断がつくケースもあります。しかし、診断が困難なケースやほかの疾患と区別する必要がある場合には、生検によって皮疹を一部採取して顕微鏡で詳しく調べることもあります。

このほか、乾癬の発症者は「メタボリックシンドローム」を併発しやすい傾向があるため、必要に応じて血液検査をおこない、脂質の値や血糖値などを調べるケースもあります。

滴状乾癬の治療

小さな子どもが風邪をひいたときに滴状乾癬を発症している場合は、風邪が治るにつれて皮膚症状が軽快するケースが多い傾向にあります。しかし、滴状乾癬の症状が長引く場合や、成人になって尋常性乾癬に移行した場合などには、症状に応じて薬物療法や光線療法がおこなわれます。

薬物療法

薬物療法では、症状に応じて内服薬や注射薬、外用薬が用いられます。

皮疹が広い範囲に出現している場合には、内服薬や注射薬による全身療法が考慮されます。

内服薬では、免疫抑制薬の「シクロポリスン」や「メトトレキサート」、ビタミンA 誘導体の「エトレチナート」、免疫調整薬の「アプレミラスト」などが用いられます。

これらの薬剤は滴状乾癬の要因になる免疫の異常などに作用し、皮疹が厚くなるのを抑えます。注射薬では、生物学製剤である「アダリムマブ」や「インフリキシマブ」などを用いて、免疫の異常を抑えます。

外用薬は皮疹の範囲が狭い場合に用いられ、炎症を抑える「副腎皮質ステロイド薬」や、表皮が厚くなるのを抑える「ビタミンD3製剤」などが使用されます。

光線療法

皮疹が広範囲に出現している場合や、外用薬で十分な効果が期待できない場合などには光線療法も考慮されます。

乾癬による皮疹は紫外線を当てると軽快することが分かっており、医療機関でも人工的な紫外線を用いた光線療法がおこなわれています。

乾癬に対する光線療法には「ターゲット型エキシマランプ照射療法」や「ナローバンドUVB療法」「PUVA(プバ)療法」などがあります。

ターゲット型エキシマランプ照射療法では、乾癬の治療に有効な紫外線のUVB波を特定の波長で皮疹のみに照射する治療法です。

ナローバンドUVB療法では、UVB波を全身に照射します。

PUVA(プバ)療法では「ソラレン」という物質を摂取した後、紫外線のUVA波を照射します。UVA波はソラレンを摂取した後に照射すると症状の改善に効果が期待できることが分かっています。ソラレンを摂取する方法は内服のほか、導入した浴槽に入浴する方法が用いられることもあります。

滴状乾癬になりやすい人・予防の方法

滴状乾癬は遺伝的な体質に加え不規則な生活習慣や感染症、ストレス、肥満などの要因が加わることで発症しやすくなります。

家族や親族に乾癬の発症者がいる場合などは、生活習慣を整えることで発症予防につながるケースがあります。日頃からバランスの取れた食生活や適度な運動、十分な睡眠を心がけるのに加え、ストレスを過度に溜め込まないことも重要です。

風邪やインフルエンザなどの感染症だけでなく「歯槽膿漏(しそうのうろう)」なども発症の要因になることがあります。マスクや手洗いなどの感染対策に加え、歯科関連の疾患がある場合には速やかに治療するようにしましょう。

喫煙も症状を悪化させる可能性があるため、喫煙者は禁煙するようにしましょう。


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