監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
女子顔面黒皮症の概要
女子顔面黒皮症とは、リール黒皮症とも呼ばれ、主に化粧品を使用した顔に現れる炎症性の色素沈着のことです。かつては中年女性での発症が多いと報告されていましたが、近年は化粧品の成分や製造方法の改善により、あまり発症しなくなりました。
女子顔面黒皮症は接触皮膚炎の一種と考えられ、最初は化粧品を使用した顔の赤みやかゆみが生じることが多いです。炎症が続くと色素沈着し、肌の色に変化がみられます。
また、小さな茶色の斑点が集まって境界線のない網目模様のように見えたり、毛穴に一致した小さな隆起(ポツポツ)が一緒に現れたりすることもあります。
女子顔面黒皮症が疑われる場合は、まずは原因となる化粧品の使用を避けることが重要です。あわせて、炎症や症状の程度に応じて、ステロイド外用薬などの処方が検討されます。
女子顔面黒皮症の原因
女子顔面黒皮症は、主に化粧品に含まれる成分が原因で引き起こされると考えられています。
化粧品には香料や防腐剤が含まれており、これらの成分が皮膚に触れると、体がそれを危険とみなし、アレルギー反応を引き起こします。
アレルギー反応により、皮膚にかゆみや赤みなどの炎症が生じ、さらにその部分に色素が過剰に生成されるため、濃い色の跡が残るというメカニズムです。
ただし、近年はアレルギーを引き起こす可能性のある成分の使用が減少しているため、女子顔面黒皮症の発生はほとんどありません。
女子顔面黒皮症の前兆や初期症状について
皮膚に炎症が起こることが原因で、顔にさまざまな症状が現れます。
主な症状としては、かゆみを伴う赤みや小さな水ぶくれです。
長期間炎症が続いた場合、肌の色が変わったり、硬くなったりすることがあります。
発症初期には、まず顔が赤くなり、かゆみを伴う炎症が現れ、その後色素が沈着してメラニンが増えることで黒皮症が形成されます。
色素沈着の色調は異なり、褐色、褐青色、紫褐色、紫灰色、黒褐色などさまざまです。
外見の変化が心理的なストレスを引き起こすこともあり、人前に出るのが恥ずかしく感じたり、気分が落ち込むこともあります。
女子顔面黒皮症の検査・診断
似た症状を示す他の皮膚病との鑑別が重要です。
医師による問診、視診が中心となりますが、必要に応じて、パッチテストや病理組織検査などを行うことがあります。
問診、視診
肌の色が変わる原因は多岐にわたるため、肌の状態だけでなく、他の症状や体全体の状態もチェックすることが大切です。
どのような状況で症状が出たのか、過去に同じような症状があったかなどを確認します。
医師が色素沈着の形、大きさ、色など、実際に皮膚の状態を目で見て確認します。
パッチテスト
パッチテストは、特定の物質に対するアレルギー反応を確認するための検査です。
皮膚にその物質を直接つけて、一定期間後に皮膚の反応を観察します。
使用している製品、たとえば化粧品やシャンプーなどを持参し、それらを皮膚に塗布して反応を確認します。
テスト部位の皮膚に赤みやぶつぶつ、水ぶくれ、かゆみなどの症状が出た場合、陽性の可能性があり診断をつけることができます。
原因が特定された後は、その中のどの成分に対して反応が出ているのかをさらに詳しく調べることがあります。
病理組織検査
皮膚の異常部分を少しだけ取り出して、顕微鏡でその変化を詳しく調べる検査です。
病理組織検査を行うことで、多くの重要な情報を得られます。
女子顔面黒皮症では、メラノファージが皮膚の真皮上層に見られることがあります。
メラノファージとは、メラニンを含んだ細胞です。
これは、皮膚の色素沈着や色素異常に関連しています。
女子顔面黒皮症の治療
女子顔面黒皮症が疑われる場合、原因となる物質を特定し、避けることが重要です。
肌の炎症が強い場合は、炎症を改善するために薬物療法を行います。
原因物質を避ける
肌に炎症を起こす原因となる化粧品を使わないようにすることで、肌の状態は徐々に良くなっていきます。
ただし、肌にできた色素沈着が完全に消えるまでには、数年かかることもあります。
薬物療法
炎症が酷い場合は、症状を抑えるためにステロイドの外用薬が処方されます。また、かゆみが酷い場合には、抗ヒスタミン薬を併用することもあります。
さらに、感染を伴う場合には、抗生物質を使用します。
女子顔面黒皮症になりやすい人・予防の方法
女子顔面黒皮症は、30~40歳頃の発症が多いという報告がありますが、幅広い年齢で発症する可能性があります。
化粧品の成分や製造方法が改良されたことで、現在では女子顔面黒皮症を起こす人は少ないものの、アレルギーを引き起こす可能性のある物質の使用は避けるようにしましょう。
また、できるだけ肌への刺激を避け、保湿や紫外線対策を心がける、また必要に応じてパッチテストを行うことが予防につながると考えられます。
刺激を避ける
40度以上のお湯は、肌を保護する皮脂を溶かしてしまい、肌が乾燥する原因となります。
入浴時にはあまり熱いお湯を使わないように心がけましょう。
また物理的な刺激は、肌のバリア機能を壊すことがあるため、タオルでゴシゴシ洗ったり、爪で皮膚を掻くことも避けてください。
肌の保湿
肌が乾燥すると皮膚が弱くなり、刺激が直接皮膚に伝わりやすくなります。
入浴後や洗顔後、肌が乾燥していると感じたら保湿剤を使うことが大切です。
入浴後は、肌の水分がどんどん蒸発してしまいます。
乾燥が進む前に保湿剤を使うことで、肌のうるおいを守り、柔らかく健康的な状態を保てます。
紫外線を避ける
紫外線による肌の炎症に注意しましょう。
長袖の服や帽子を使用し、肌の露出を最小限に抑えましょう。
外出時には日傘などを使用し、顔やその他の露出しやすい部分には、日焼け止めを塗ります。
特に首の後ろや手の甲、耳、目の周りなど、塗り忘れがちな箇所にも注意が必要です。
日焼けしてしまった場合は、冷たいタオルや保冷剤などで肌を冷やして炎症を抑え、その後、乾燥しないように保湿剤を使いましょう。
パッチテストを行う
新しい化粧品を使う場合や肌が敏感な方は、自分の肌に合うかどうかパッチテストを行いましょう。
かゆみや炎症が出た場合は、その化粧品の使用を中止してください。
関連する病気
- 接触皮膚炎
- 扁平苔癬様皮疹
- 化粧品皮膚炎
- 摩擦黒皮症
- 色素沈着性接触皮膚炎
- 肝斑雀卵斑
- 太田母斑
参考文献