監修医師:
五藤 良将(医師)
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カンジダ性爪囲炎の概要
カンジダ性爪囲炎(かんじだせいそういえん)とは、カビの一種である「カンジダ菌」が爪の周囲に感染して発症する皮膚カンジダ症の一種です。
爪の根本から白く混濁することが多く、爪の周囲の皮膚が赤く腫れるほか、膿が出たり爪が変色・変形したりすることもあります。
カンジダ菌は湿度の高い環境で繁殖しやすいため、調理師や主婦、美容師など、手洗いなどの行為が多い人に発症しやすい傾向があります。
カンジダ菌によって発症する皮膚カンジダ症のうち「カンジダ性指間びらん症」も同じように水を扱う職業の方に発症しやすい病気です。カンジダ性爪囲炎と同時に発症することも多く、指と指の間が赤く腫れたり痒みが出たりします。
カンジダ性爪囲炎の治療には抗真菌薬の外用薬を使用し、毎日塗布すれば1〜2週間程度で治癒することがほとんどです。しかし、強い炎症がみられ、外用薬で十分な改善が得られないケースでは内服薬も検討されます。できるだけ早い治癒と再発防止を促すために、指を清潔に保ち、乾燥させることも推奨されます。
カンジダ由来で発症する爪の病気に「爪カンジダ症」もあります。爪カンジダ症はカンジダ性爪囲炎と異なり、爪そのものが白く分厚くなる病気で、外用薬が効きにくいことが特徴です。双方は似ている病気ですが、治療法が大きく異なるため、カンジダ性爪囲炎の検査のときは爪カンジダ症との鑑別が重要です。
カンジダ性爪囲炎の原因
カンジダ性爪囲炎は、カンジダ菌が指の爪に自己感染することで発症します。特に手洗いなどで、爪と指の間に水が残り、湿度が高い状態になることで発症しやすくなります。
また、糖尿病やエイズなどの免疫力が低下する病気もカンジダ性爪囲炎の原因となります。免疫抑制剤などの薬の使用によって発症することもあります。
カンジダ性爪囲炎の前兆や初期症状について
カンジダ性爪囲炎には症状の前兆はありません。
感染初期から爪の白濁を伴い、爪周囲の腫れや赤みなどの症状が見られます。症状が強い場合は複数の指に自己感染し、炎症が強くなる傾向があります。
炎症が強いケースでは爪周囲から膿が出てくることもあります。
カンジダ性爪囲炎の検査・診断
カンジダ性爪囲炎の診断は医師の視診による爪の症状や変形から診断されます。
爪のカンジダ菌の特定をするために、爪の生検を行うこともあります。
爪の生検の結果、カンジダ菌ではなくほかの細菌が原因で発症している場合は、治療法が大きく異なるため鑑別が重要になります。
カンジダ性爪囲炎の治療
カンジダ性爪囲炎の治療では抗真菌薬の外用薬を患部に塗布して治療します。1〜2週間塗布することで症状の改善が見込めます。
しかし、手を頻繁に洗う人や水を扱う場面が多い仕事をしている人は外用薬が水で落とされる可能性も高く、効果が出にくい可能性があります。そのため、外用薬を塗布した後は外用薬が水で流されないように手袋を使用するなどの工夫も必要です。
また、炎症が強かったり、症状の範囲が広かったりして、外用薬で十分な効果が見込めない場合は、内服薬も検討されます。
カンジダ性爪囲炎になりやすい人・予防の方法
カンジダ性爪囲炎になりやすい人は、水を頻繁に扱う人です。具体的には美容師や理容師、調理師、主婦などはカンジダ性爪囲炎になりやすいといわれています。
手が水に濡れたまま湿度が高い環境が続くと、カンジダ性爪囲炎の原因であるカンジダ菌が繁殖しやすくなります。カンジダ菌の増殖によって発症リスクが高くなるため、水を扱う人は注意が必要です。
また、糖尿病やエイズなどの免疫力が低下している人もカンジダ性爪囲炎になりやすいです。これらの疾患は感染に対する抵抗力が低くなっているため、カンジダ菌が自己感染しやすくカンジダ性爪囲炎を発症しやすいといわれています。
カンジダ性爪囲炎を予防するためには、手を乾燥させるよう心がけてください。手が水で濡れたあとは紙やタオルで十分に拭き、爪の間などの水が溜まりやすい箇所も拭き取りましょう。
また、水に濡れないように手袋などを使用することも効果的です。特に水仕事をするときはビニール手袋で手が濡れないようにするとカンジダ菌が繁殖しにくい環境を作れます。
加えて、免疫力を高めてカンジダ菌に自己感染しにくい体作りもカンジダ性爪囲炎の予防に有効です。規則正しい睡眠と食事、適度な運動を取り入れることで、体の免疫力を高める効果が期待できます。
関連する病気
- 皮膚カンジダ症
- 爪カンジダ症
- 細菌性爪囲炎
参考文献