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林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

カポジ水痘様発疹症の概要

カポジ水痘様発疹症は、アトピー性皮膚炎やそのほかの皮膚疾患を持つ人々が、単純ヘルペスウイルス(HSV)、コクサッキーウイルス、ワクシニアウイルスに感染することで発症する皮膚感染症です。この疾患は、一般的に皮膚に小さな水疱や潰瘍を形成し、全身症状として発熱や倦怠感を引き起こすことがあります。カポジ水痘様発疹症は、重症化すると命に関わることもあり、迅速な診断と治療が必要です。

カポジ水痘様発疹症の原因

カポジ水痘様発疹症の主な原因は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)2型(HSV-2)による感染です。これらのウイルスは通常、口唇ヘルペスや性器ヘルペスを引き起こしますが、アトピー性皮膚炎や、湿疹により皮膚バリアが弱まっている患者さんが感染すると、全身に広がりやすくなります。

特にアトピー性皮膚炎患者さんは、皮膚の防御機能が低下しているため、ヘルペスウイルスが容易に皮膚に侵入し、感染が拡大しやすくなります。

カポジ水痘様発疹症の前兆や初期症状について

カポジ水痘様発疹症の初期症状は、一般的にウイルスに感染してから数日後に現れます。発熱、倦怠感、リンパ節の腫れなどの全身症状と共に、皮膚に小さな水疱や潰瘍が現れ、これらは痛みを伴うことが少なくありません。水疱は主に顔や首、上半身に出現しますが、全身に広がることもあります。これらの症状が現れた場合は、速やかに皮膚科を受診することが推奨されます。特に、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を抱えている方は、早期に医師の診察を受けることが重要です。

カポジ水痘様発疹症の合併症

カポジ水痘様発疹症の合併症は、感染が進行することでさまざまな形で現れることがあります。一般的な合併症には、細菌による二次感染、皮膚の広範囲な潰瘍、さらには全身の重篤な感染症が含まれます。表面に細菌感染が合併すると伝染性膿痂疹(とびひ)との鑑別が困難になります。重症例ではヘルペスウイルスが血流を介して全身に広がり、脳炎や内臓への影響を引き起こす可能性もあります。

このような合併症が発生した場合、迅速な対応が求められ、場合によっては集中治療が必要になることがあります。さらに、カポジ水痘様発疹症の再発リスクも無視できません。免疫機能が弱まった状態や、アトピー性皮膚炎が悪化した際には、再びヘルペスウイルスの活動が活発化し、再発する可能性があります。特に、ステロイド外用薬や免疫抑制薬の使用中は、感染リスクが高まるため、医師と相談しながら治療を進めることが重要です。

カポジ水痘様発疹症と日常生活

カポジ水痘様発疹症の診断を受けた患者さんは、治療期間中の日常生活においても特別な注意が必要です。感染が他人に広がる可能性があるため、特に水疱が破れている期間は、家族や周囲の人との密接な接触を避けることが推奨されます。また、ウイルスが含まれる体液に触れることで感染が広がる可能性があるため、タオルや衣類などの個人用品は別々に使用するようにしましょう。

さらに、症状が軽減した後も、完全に治癒するまでの間は、皮膚の保湿や清潔を保つことが必要です。
肌の乾燥を防ぐために、医師から処方された保湿剤を使用し、皮膚のバリア機能を回復させることが重要です。
また、ストレスや過労は免疫機能を低下させ、再発リスクを高める要因となるため、十分な休養を取ることがすすめられます。

カポジ水痘様発疹症の心理的影響

カポジ水痘様発疹症は、身体的な症状だけでなく、心理的な影響も及ぼす可能性があります。特に、顔や体の目立つ部分に水疱や潰瘍が現れることで、患者さんは外見に対する不安や自信の喪失を感じることがあります。また、発症中の痛みやかゆみが日常生活に支障をきたし、活動が制限されることで、ストレスや不安感が増すこともあります。

特にアトピー性皮膚炎など、慢性的な皮膚疾患を持つ患者さんは、これらの症状が再発するたびに精神的な負担を感じることがあります。患者さんが心理的なストレスを感じる場合は、医療提供者に相談し、必要に応じて心理的サポートを受けることが重要です。カウンセリングやサポートグループの参加は、同じような経験を共有するほかの患者さんとの交流を通じて、心理的な支えとなるでしょう。また、家族や友人の理解と支援も、回復において大きな役割を果たします。

カポジ水痘様発疹症の検査・診断

カポジ水痘様発疹症の診断は、主に臨床症状と病歴に基づいて行われます。医師は、患者さんの皮膚に見られる特有の水疱や潰瘍を観察し、患者さんの既往歴(特にアトピー性皮膚炎やほかの皮膚疾患の有無)を確認します。また、確定診断のためには、水疱の内容液を採取して単純ヘルペスウイルスの検出を行うことがあります。ウイルス培養やPCR検査を用いてウイルスの存在を確認することが一般的です。

カポジ水痘様発疹症の治療

カポジ水痘様発疹症の治療は、主に抗ウイルス薬の投与が中心となります。アシクロビルバラシクロビルといった抗ヘルペスウイルス薬が使用され、早期に治療を開始することで症状の進行を抑えることができます。また、感染による痛みや炎症を抑えるために、鎮痛薬や抗炎症薬が併用されることもあります。重症例では、入院して点滴による抗ウイルス薬の投与が必要になることもあります。加えて、二次感染を防ぐために、皮膚の清潔を保つことが重要です。

カポジ水痘様発疹症になりやすい人・予防の方法

カポジ水痘様発疹症は、特にアトピー性皮膚炎や湿疹を持つ人に発症しやすいとされています。これらの患者さんは、皮膚バリア機能が低下しているため、ヘルペスウイルス感染に対して脆弱です。また、免疫力が低下している人や、ステロイド治療を受けている人も感染リスクが高まります。

予防のためには、ヘルペスウイルスに感染している人との直接接触を避けることが重要です。
また、皮膚のバリア機能を維持するために、適切なスキンケアを行い、アトピー性皮膚炎や湿疹の症状をコントロールすることが推奨されます。さらに、免疫力を高めるために、バランスの取れた食事や十分な睡眠、適度な運動を心がけることも効果的です。

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