監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
目次 -INDEX-
結節性紅斑の概要
結節性紅斑は、おもに下肢に赤く盛り上がった硬いしこり(結節)ができる皮膚の病気です。
多くの場合は痛みを伴い、発熱や関節痛などの症状が出ることもあります。
特発性(原因がよくわからない)がいちばん多く、感染症、自己免疫・炎症疾患、薬剤などが原因になることもあります。
原因になる病気があればそれに対する治療を行い、ほかに症状を抑える治療をします。
結節性紅斑の原因
結節性紅斑は、体の中で免疫システムが過剰に反応してしまうことで起こると考えられています。
具体的な原因としては、以下が挙げられます。
特発性
いちばん多いのは、はっきりとした原因がわからない特発性のものです。
このような結節性紅斑は繰り返すこともなく、そこまで心配しなくてもよいといわれています。
感染症
とくに溶連菌などの一般細菌、結核などの抗酸菌が原因になることが多いです。
その他、ウイルスや真菌が原因となることもあります。
自己免疫・自己炎症疾患
サルコイドーシスやベーチェット病など、免疫異常で起こる炎症性疾患が原因になることは多いです。
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患でも、腸管外症状として出ることがあります。
薬剤
抗菌薬(抗生物質)やピルなど、さまざまな薬が結節性紅斑を引き起こす可能性があります。
その他
妊娠、悪性腫瘍などが原因となることもあります。
結節性紅斑の前兆や初期症状について
結節性紅斑の前兆として、風邪のような症状(発熱、倦怠感、関節痛など)が現れることがあります。
皮膚の症状としては、赤く盛り上がった硬いしこり(結節)ができます。これは両脚のすねに出てくることが多いです。
結節は触れると熱く、痛みを伴うことが多いです。初期は赤く腫れている結節も、時間の経過とともに紫色や茶色へと変化していきます。
これらの症状が見られた場合は、皮膚科を受診するのがよいでしょう。
場合によっては、リウマチ・膠原病内科などほかの診療科への紹介が必要となることもあります。
結節性紅斑の検査・診断
結節性紅斑は、その特徴的な「見た目」から疑います。
そのうえで、原因を特定するために以下のような病歴聴取・身体診察・検査を行います。
病歴
- いつから、どのような症状が現れているのか(風邪のような症状や、原因になる病気を疑う症状はないか)
- 過去にどのような病気にかかったことがあるか
- 現在服用している薬はあるか
- 血の繋がった家族に同じような症状の人はいなかったか
診察
皮膚所見の確認
ほかの病気を疑う症状はないか:関節の腫れや押したときの痛みなど
検査
血液検査
CRP(炎症の程度がわかる)、ACE(サルコイドーシスのひとで高い数値になることがある)、ASO(溶連菌感染で高い数値になることがある)など
画像検査
胸部X線検査・CT検査(サルコイドーシスや結核などの可能性を調べる)など
皮膚生検
実際に結節の部位を切り取って、顕微鏡で詳しくみる検査(病理組織検査)を行います。結節性紅斑に特徴的な組織所見があるか、ほかの病気らしさはないかなどを調べることができます。
結節性紅斑の治療
結節性紅斑の治療は、「症状を抑える治療」と「原因の病気に対する治療」に分けられます。
症状を抑える治療
原因がはっきりとしない場合は、この治療がメインになります。
結節の痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使うことが多いです。
症状が強い場合には、ステロイドを使用することもあります。
その他、安静や患部を冷やすことも有効です。
原因の病気に対する治療
特定の病気が原因として見つかった場合は、その病気に対する治療を行います。
たとえば細菌感染が原因であれば抗菌薬を、サルコイドーシスが原因であればそれに有効な薬剤(ステロイドなど)を使います。
多くの場合、結節性紅斑は数週間から数ヶ月で自然に治癒していきます。
ただし再発することも少なくありません。
結節性紅斑になりやすい人・予防の方法
結節性紅斑は、20歳から30歳代の女性に多くみられます。
明確な予防法はありませんが、以下の点に注意することで、発症リスクを下げられる可能性はあります。
感染症の予防
手洗い、うがいを徹底し、人混みを避けるなど、感染症の予防に努めましょう。
服用している薬剤の調整
服用している薬が原因で結節性紅斑が出現する可能性があります。
ただし自己判断では薬の服用を中止せず、かならず薬を処方している医師に相談しましょう。
規則正しい生活
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、免疫力を高めましょう。
ストレスをためない
ストレスは免疫力を低下させる要因となります。
ストレスをため込まないように、自分に合ったリフレッシュ方法を見つけましょう。
結節性紅斑は、原因や症状、治療法が多岐にわたる病気です。
自己判断はせず、医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが重要です。
参考文献
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