

監修医師:
高藤 円香(医師)
巻き爪の概要
巻き爪は、爪が横方向に湾曲し、爪の端が皮膚に食い込む状態を指します。巻き爪の症状は、爪の端が皮膚に食い込むことによる痛みや炎症が主なものです。初期段階では軽い痛みや違和感が感じられる程度ですが、進行すると痛みが増し、歩行が困難になることもあります。また、皮膚に傷がつくことで感染が生じ、腫れや膿が発生することもあります。
巻き爪の原因には、遺伝的要因、外的要因、そして環境的要因があります。遺伝的要因としては、爪の形状や生え方に関する遺伝的特性が影響します。一方、外的要因としては、不適切な靴の着用や不適切な爪の切り方が挙げられます。特に先が細い靴やヒールの高い靴を長時間履くことは、爪に過度な圧力をかけ、巻き爪のリスクを高めます。また、爪を短く切りすぎることや、角を丸めて切ることも巻き爪の原因となります。
環境的要因としては、湿気の多い環境や、長時間水に浸かることが影響します。これにより、爪がやわらかくなり、巻きやすくなります。また、スポーツや激しい運動によっても、爪に圧力がかかり、巻き爪が進行することがあります。
巻き爪は、見た目の変形だけでなく、日常生活に大きな支障をきたすため、早期の対応が重要です。なかでも、糖尿病や血行障害を抱える患者さんは、感染のリスクが高まるため、巻き爪の管理には細心の注意が必要です。
巻き爪の原因
巻き爪の原因は多岐にわたり、生活習慣や遺伝的要素が関与しています。
まず、爪の切り方が不適切であることが挙げられます。爪を深く切りすぎたり、角を丸く切ると、爪が成長する過程で皮膚に食い込みやすくなります。適切な爪の切り方は、爪の先端をまっすぐに保ち、角を残すことです。
次に、不適切な靴の使用も巻き爪の原因となります。狭い靴やヒールが高い靴を履くと、足指が圧迫され、爪が皮膚に食い込みやすくなります。特に女性に多く見られる問題であり、足に合った靴を選ぶことが重要です。
さらに、爪の形や厚さの異常も巻き爪の原因となります。遺伝的要因や加齢により、爪が厚く硬くなると、巻き込みやすくなります。また、糖尿病や血行不良などの全身的な健康問題も、爪の健康に影響を及ぼし、巻き爪を引き起こすことがあります。
足の形や歩き方も影響します。偏平足や外反母趾などの足の変形がある場合、ある部位に過度な圧力がかかり、巻き爪のリスクが高まります。歩行時のバランスが悪い場合も同様に影響を与えます。
巻き爪の前兆や初期症状について
巻き爪の前兆として、爪の周囲に違和感を感じることが挙げられます。爪が皮膚に当たり、圧迫感や軽い痛みを感じることがあります。また、爪の端が皮膚に食い込み始めると、爪周辺に赤みや腫れが見られることが多い傾向にあります。この段階で放置すると、症状が悪化し、激しい痛みや感染症を引き起こすことがあります。
特に靴を履いたり歩行したりする際に痛みが増します。さらに、爪の端が皮膚に食い込むことで赤みや腫れが生じ、炎症が進行すると膿が溜まることもあります。この状態により、爪周囲の皮膚が硬くなり、触れると強い痛みを伴います。
巻き爪が進行すると、皮膚が破れて感染を引き起こすリスクが高まります。感染が生じると、痛みが激しくなり、爪周辺に膿が溜まり、悪臭が発生することがあります。さらに、感染が進行すると、全身に影響を及ぼす可能性もあるため、早期の治療が不可欠です。
巻き爪の診断には、皮膚科または整形外科を受診することが推奨されます。特に重症例や再発を繰り返す場合には、専門の医師の診察が必要です。
巻き爪の検査・診断
巻き爪の診断は、主に視診と問診を通じて行われます。患者さんが感じる症状や既往歴を詳しく聞き取り、爪の形状や皮膚の状態を詳細に観察します。
視診では、爪のカーブの程度や皮膚への食い込み具合、炎症や感染の有無を確認します。炎症が重度の場合や、皮膚の深部に感染が疑われる場合には、さらに詳細な検査が必要になることがあります。
また、必要に応じて、画像検査や細菌培養を行うことがあります。例えば、感染が疑われる場合には、細菌培養を行い、適切な抗生物質を選定するための情報を得ることが重要です。
さらに、骨に異常がある場合や慢性的な炎症が続く場合には、X線検査が用いられます。これにより、骨の変形や異常な成長が原因で巻き爪が生じているかどうかを確認できます。
加えて、巻き爪の診断は、糖尿病や血行障害など、ほかの疾患が影響している場合も考慮されます。これらの疾患があると、巻き爪の治療が複雑になるため、全身的な健康状態の評価も重要です。
巻き爪は放置すると、感染や炎症が悪化し、日常生活に支障をきたす可能性があるため、医師の指導のもと、適切なケアを行い巻き爪の再発を防ぎ、健康な爪を維持できます。
巻き爪の治療
巻き爪の治療には、保存的治療と矯正治療の二つの方法があります。
保存的治療は、軽度の巻き爪に対して優先される治療法です。この方法では、爪の端を切り取ったり、爪の形を修正することで症状の改善を図ります。家庭でできる対処法としては、温水に浸したり、適切な爪のカットを行うことが推奨されます。しかし、これらの方法は一時的な対策に過ぎず、根本的な解決には至らないことが多い傾向にあります。
一方、矯正治療は、保存的治療が効果を示さない場合や中等度から重度の巻き爪に対して行われます。矯正治療には、ワイヤーやプレートを使用して爪の形状を徐々に修正する方法があります。内側に巻き込んだ爪を矯正することで、痛みや炎症を緩和し、爪の自然な成長を支援します。この方法は、非侵襲的であり、患者さんの負担が少ないため、広く採用されています。
さらに、重症例や感染を伴う場合には、手術療法が検討されます。手術療法では、爪の一部または全体を除去し、爪床の形状を修正することで再発を防ぎます。術後のケアとしては、再発防止のための適切な爪のカット方法や、定期的な診察が必要です。手術後の経過観察と適切なフォローアップが重要となります。
巻き爪の治療を行う際には、医師の診察を受けることが重要です。自己判断での対処は、症状を悪化させる可能性があるため、医師による適切な診断と治療計画が求められます。
巻き爪になりやすい人・予防の方法
巻き爪になりやすい方には、いくつかの特徴があります。
まず、爪の形状や成長の方向に問題がある場合、巻き爪が発生しやすくなります。例えば、爪が極端にカーブしている方や、爪の先端が尖っている方はリスクが高まります。また、不適切な靴の選択も巻き爪の原因となります。特に、先の細い靴やハイヒールは足の指に過度な圧力をかけ、巻き爪を引き起こす可能性があります。
さらに足の変形、歩行の質や量の問題も巻き爪のリスクを高めます。足の指に力がかからない状態が続くと、正常な爪の成長が妨げられ、巻き爪が発生しやすくなります。糖尿病や血行不良などの健康状態も影響を与えることがあります。
巻き爪を予防する方法は、以下のとおりです。
まず、適切な爪の切り方が基本です。爪はまっすぐに切り、角を丸めずに残すことで、皮膚への圧力を減らします。適切な靴の選択も重要です。足に合った靴を選び、足指に余裕を持たせることで圧力を軽減します。
また、足の衛生管理も予防に役立ちます。足を清潔に保ち、乾燥させることで感染リスクを減らします。さらに、定期的な足の運動やストレッチも推奨されます。これにより、足の筋力を維持し、正常な爪の成長をサポートできます。
巻き爪がひどくなる前に早期の対応が重要なため、適切なケアと予防策を講じ、巻き爪の発生を防ぎ、健康な足を保つことが大切です。
参考文献