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高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

強皮症の概要

強皮症とは、身体の組織が繊維化して硬くなる病気です。強皮症と呼ばれる病気には、限局性強皮症・全身性強皮症の2種類があります。限局性強皮症は組織の硬化が皮膚にのみ起こる病気で、皮膚以外の組織に硬化が広がることはありません。一方、全身性強皮症では皮膚だけでなく臓器や血管にも組織の硬化が起こることがあります。ただし、全身性強皮症にもいくつかのタイプがあり、大きくは下記の2つに分類できます。

  • びまん皮膚硬化型全身性強皮症
  • 限局皮膚硬化型全身性強皮症

びまん皮膚硬化型全身性強皮症は、発症から5~6年程は病気が進行することが多いタイプの全身性強皮症です。対して、限局皮膚硬化型全身性強皮症は全身性強皮症でありながら進行は緩徐で、ほとんど病気が進行しないこともあります。なお、強皮症により組織が硬化すると、本来組織が持っている機能が正常に働きません。そのため、強皮症が進行すると硬化が起こった部位によりさまざまな症状が現れてきます。

強皮症の原因

強皮症は厚生労働省が指定する指定難病の一つです。

ここでいう難病とは、原因やメカニズムが明確にはわからないため、治療方法も確立されておらず長期の療養を要する病気を指します。

このことからもわかるように、強皮症は原因についてまだわかっていない部分がある病気です。

しかし、原因の一部と考えられるものや、発症に関与する要因について徐々に明らかになってきました。

自己免疫による損傷

まず、発症に関わっていると考えられるのが自己免疫です。免疫機能は、本来であれば外部から入り込んだ異物を攻撃して自分の身体を守っています。しかし、免疫機能に異常が起こると自分の組織を免疫が攻撃することがあります。強皮症の主なきっかけと考えられているのが、自己免疫による組織の損傷です。

線維芽細胞の活性化

人の真皮には線維芽細胞という細胞があり、傷ついた組織を修復するために重要な役割を果たしています。この線維芽細胞が上記のような自己免疫による損傷をきっかけに活性化することで、組織化が起こりやすくなります。

強皮症の前兆や初期症状について

強皮症は、症状の現れ方や進行の早さに個人差がある病気です。しかし、初期の段階から患者さんが自覚できる症状がいくつかあります。

下記のような症状が気になったら、強皮症の疑いがあるため皮膚科の受診をおすすめします。なお、患者さんが子どもの場合には小児科での診察も可能です。

レイノー症状

全身性強皮症になった方の約80%にレイノー症状がみられます。レイノー症状とは、指先が急速に白や紫に変色するもので、冷たいものに触れたり寒い場所へ行ったりしたときに起こります。レイノー症状の原因は、末梢の血管が収縮して血流量が低下することです。強皮症になると血管にも線維化が起こることが多く、血管が広がりにくいためレイノー症状が現れやすくなります。

皮膚の硬化

限局性強皮症や一部の全身性強皮症では、皮膚の硬化をきっかけに強皮症と診断される方もいます。このような場合にも、最初からはっきりと皮膚の硬さを感じる方は少なく、手が腫れぼったい感じが続くといった訴えが多いようです。

その他の症状

全身性強皮症の場合、線維化が起こった臓器によって現れる症状が異なります。上記のような外見からわかる症状のほか、症状が進行すると肺線維症による空咳や息苦しさを自覚する患者さんもいます。また、腎臓の血管が硬化して機能低下をきたすことで、急激な血圧上昇や頭痛をきたす場合もあるため注意が必要です。また、胸やけをはじめとする逆流性食道炎の症状から強皮症の診断に至る場合もあります。

強皮症の検査・診断

強皮症が疑われた場合、問診や視診により強皮症に特徴的な症状の有無を確認します。限局性強皮症と全身性強皮症では診断基準が異なり、進行の仕方にも違いがあるため両者の判別も重要です。まず、限局性強皮症の診断基準には下記のようなものがあります。

  • 類円形または楕円形の境界明瞭な紅斑
  • 四肢、顔面、頭部に陥凹した片側性の硬化
  • 上記がみられた場合の皮膚生検

皮膚生検で真皮に線維化がみられると、限局性強皮症と診断されます。なお、診断がついた後も経過観察のために定期的な検査が必要です。定期検査では、血液検査のほか造影MRIやドップラー超音波検査を行うことがあります。一方、全身性強皮症の診断基準は下記のとおりです。

大基準:手または足の指を越えて広がる皮膚硬化
小基準:

  • 1)手または足の指を越えて広がる皮膚硬化
  • 2)指先の陥凹性瘢痕または指腹の萎縮
  • 3)肺基底部の線維症(両側性)
  • 4)抗核抗体陽性

上記の基準のうち大基準を満たしている場合、または小基準の1を満たしたうえで2~4のうち1つ以上を満たす場合を全身性強皮症と診断します。ここでいう抗核抗体とは、自分の身体を攻撃してしまう自己抗体のうち、細胞の核に作用するものをいいます。具体的には、抗セントロメア抗体や抗トポイソメラーゼ1抗体、抗RNAポリメラーゼ抗体などです。

強皮症の治療

強皮症の主な治療方法は薬物療法です。

しかし、限局性強皮症か全身性強皮症か、また全身性強皮症の場合にはどの部位で線維化が進んでいるかによって治療方法が異なります。

限局性強皮症の治療

限局性強皮症に対しては皮膚の硬化を抑制する目的でステロイドやタクロリムスの外用薬が使用されます。また、薬物療法以外に光線療法で治療効果を得られることもあります。しかし、限局性強皮症であっても急速に進行するケースや皮膚硬化が広範囲に及ぶ場合には、ステロイドの内服や免疫抑制剤の投与など全身療法の検討が必要です。さらに、症状が進行し外見上の問題や運動機能の低下がみられる場合には、リハビリや外科療法を検討するケースもあります。

全身性強皮症の治療

全身性強皮症は根治が困難な病気ですが、薬剤や病気の研究が進んだことで症状の抑制が期待できるようになりました。全身性強皮症に対して有効性が期待される薬剤は下記のとおりです。

  • ステロイド
  • プロトンポンプ阻害薬
  • リツキシマブ
  • ニンテダニブ
  • シクロフォスファミドパルス療法
  • ボセンタン
  • ACE阻害剤

代表的な症状である皮膚硬化には、ステロイドのほかリツキシマブやシクロフォスファミドパルス療法が有効とされます。また、逆流性食道炎は全身性強皮症によくみられる症状であり、プロトンポンプ阻害薬によりしっかりと治療を継続することが大切です。一方、肺線維症に対して有効とされるのがリツキシマブやニンテダニブの投与、シクロフォスファミドパルス療法です。その他、肺高血圧症や皮膚潰瘍がみられる場合にはボセンタン、腎臓の血管硬化による強皮症腎クリーゼに対してはACE阻害剤が有効とされます。

強皮症になりやすい人・予防の方法

強皮症は女性に多いという統計があります。患者さんの男女比は1:9または1:12ともいわれており、有意に女性が罹患しやすいといえるでしょう。

特に30~50代の女性に好発しますが、小児期や70代以降で発症するケースもあります。

なお、強皮症の発症に関与する遺伝子がいくつか明らかになっていますが、発症に至るまでには複数の遺伝子が関与するため単一の遺伝子により発症が決まるわけではありません。

そのため、強皮症の発症には遺伝的要因はあまり関与しないと考えられています。また、発症に影響する生活習慣や環境的な要因は明らかになっていません。

このような背景から強皮症の予防は難しく、皮膚の変化や強皮症と思われる症状に気付いたら早期に受診することが適切な治療に結びつく近道といえるでしょう。


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