監修医師:
大坂 貴史(医師)
白癬菌の概要
白癬菌とは真菌、いわゆる「かび」に分類される病原体のひとつです。白癬菌によって引き起こされる疾患のなかで有名なものに「水虫」があり、医学的には足白癬とよんでいます。
皮膚での白癬菌感染症は足のみならず、股間や体幹部にできることもあり、「いんきんたむし」や「たむし」とよばれることも多いです (参考文献 1)。
髪の毛に感染する場合もあり、その部位の頭皮が抜け落ちてしまうこともあります。世間一般では「しらくも」とよばれることが多いです (参考文献 1)。
水虫が有名で、水虫は「痒い」というイメージ強いかもしれませんが、「痒くないから水虫ではない」「痒くないから白癬菌感染症ではない」とはいえず、治療を開始するまでの間は周り人へ白癬菌をばらまくリスクがあるので注意してください (参考文献 1)。
寮生活をはじめとした集団生活、足ふきマットを共用する銭湯、身体的接触の多い格闘技などが発症リスクとなっています (参考文献 1)。
治療では本人の症状に応じて外用薬や内服薬を組み合わせて使います。白癬菌は非常にしぶとい感染症で、一見治ったように見えても患部にはまだ白癬菌がいることが多いです。自己判断で治療を中断せずに、医師の指示通りに根気強く治療してください (参考文献 1)。
白癬菌の原因
水虫やたむしなどの白癬菌感染症は感染症ですから、白癬菌が身体について付着することから始まります。
白癬菌はケラチンという皮膚組織に多く含まれる成分を栄養源にしている真菌 (カビ) の一種です (参考文献 1)。自分のごはんが沢山あるがために皮膚に好んで感染し、人間には不快な症状を引き起こす厄介なカビだとイメージしてください。
白癬菌感染症の一種である水虫 (足白癬) が分かりやすいのでこれについて解説すると
- 主に家庭内で床やスリッパ、足ふきマットなどから足に付着する
- ほとんどの白癬菌は足から自然に脱落していきますが、一部足に付いたままだったり、お風呂での洗浄が不十分で落としきれなかった白癬菌は足に定着し、白癬菌の感染が成立する
- 感染した白癬菌がその部位で症状を引き起こすほか、他の部位でも感染が成立して症状が広がる
といった流れで足白癬による感染症が引き起こされていきます (参考文献 1)。
白癬菌の前兆や初期症状について
足白癬の症状は患者さんによって様々で、痒みが出る方もいれば痒みは無い方、指の間の皮膚が割れてしまって痛い方、足の裏の皮膚が分厚くなってしまう方、小さな水ぶくれのようなものができる方がいます (参考文献 1, 2)。
水虫は「痒い」というイメージが先行しがちで、「痒くないから水虫ではないだろう」と考えて病院に行かない方も多いですが、これは大きな誤解です。水虫で痒みが出る方は 10% それもほとんどが夏だけなので (参考文献 1)、痒みがないからといって水虫ではないとはいえないことに注意してください。
「痒くないから水虫ではないだろう」と考えて治療を開始しないままでいると、その間に家族や周りの人に白癬菌をばらまくことになってしまいます。
股間や身体の他の部位に発症する白癬菌感染症では、割っかのような発疹が出て、その割っかが広がり、強い痒みを伴うことが多いです(参考文献 1, 2)。「銭」に似た形ということで「ぜにたむし」と呼ばれることが多いです。
髪の毛に感染する頭部白癬では、白癬菌が感染した部位の髪の毛が抜け落ちてしまい、残った毛根だけ斑点のようにのこる症状や、髪の毛が抜け落ちた領域に鱗屑 (ふけ) のようなものが多くみられるといった症状が一般的です (参考文献 3)。
お近くに皮膚科がある方は、まずはそちらを受診することをオススメします。
白癬菌の検査・診断
白癬菌感染症が疑われる箇所の皮膚をピンセットやハサミ、メスなどを用いて少し採取して、スライドガラスのうえで水酸化カリウムをかけて顕微鏡で観察し、白癬菌がいるかどうか確かめます(参考文献 1)。
白癬菌の治療
症状に応じて外用薬や内服薬を用いて治療していきます。
足白癬や体部白癬などの皮膚の比較的浅い箇所での感染であれば塗り薬をもちいた外用薬で治療をすることが多いですが、皮膚が分厚くなるタイプの白癬菌感染症だったり、髪の毛や爪に感染している場合には外用薬のみでは対処が難しいので内服薬も使用します(参考文献 1, 2)。
白癬菌感染症では一見治ったようにみえても、白癬菌はしぶとく残っていることが多く、自己判断で薬をやめてしまうと症状がぶり返してきます。医師の指示通りに薬を使い続けてくださいね(参考文献 1, 2)。
白癬菌になりやすい人・予防の方法
白癬菌は感染症ですので、白癬菌の患者と同居していたり、接触の機会が多いと発症の可能性が高まります。家庭内に白癬菌感染症の方がいる場合や、寮生活で足ふきマットが共用されていたり、格闘技などで身体的接触の機会が多いコミュニティに属している人は白癬菌感染症発症のリスクが高いといえるでしょう。
また、犬や猫からも人に白癬菌が感染することが知られており、ペットが触れやすい頭や首、腕などに感染することが多いです (参考文献 1)。
予防のためにはまずは患者自身の適切な治療、そのほかにもスリッパや足ふきマットを共用しないこと、丁寧に身体を洗うことなどを心がけていきましょう (参考文献 1) 。
銭湯や寮生活のお風呂などの現実的には足ふきマットを共用せざるを得ない環境では、ほぼ確実に足ふきマットには白癬菌がいます。このような施設を利用する場合には、しっかりと足の裏を乾いたタオルで拭いてから靴下を履くようにしましょう (参考文献 1)。
格闘技など身体的接触が多い行動をした後は、競技の後は施設併設のシャワーでしっかりと身体を洗って、家庭内に白癬菌を極力持ち込まないことが重要です (参考文献 1)。
参考文献