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眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

ひょうそ(ひょう疽)の概要

ひょうそ(ひょう疽)とは、爪周囲炎ともよばれ、爪の周囲の傷口から細菌が感染して炎症を起こした状態です。
軽度な外傷であれば通常は自然治癒しますが、細菌が感染して炎症が強くなると自然治癒しづらく、悪化して眠れない程の痛みとなることも少なくありません。
多くの場合は爪の周囲から細菌が感染し、爪周囲炎が広がっていきます。ひょうそ(ひょう疽)となると細菌が指の腹の方まで広がって、指の腹側が痛む場合もあります。

ひょうそ(ひょう疽)の原因

ひょうそ(ひょう疽)の原因は、爪周囲の傷口から生じる細菌感染です。原因菌はブドウ球菌や連鎖球菌であることがほとんどですが、別の細菌の場合もあります。
細菌が感染しやすくなる原因は、主に以下の4つです。

  • ささくれ・手荒れ
  • 巻き爪・陥入爪
  • サイズの合わない靴
  • マニキュア・ジェルネイル

それぞれの内容を解説します。

ささくれ・手荒れ

爪の周囲の皮膚がめくれてできるささくれからは、細菌が感染しやすくなっています。
ささくれは皮膚が乾燥する冬季にできやすく、手が乾燥するとささくれ以外にも手荒れが生じて、細菌感染に弱くなります。
指しゃぶり癖や爪を噛む癖がある方も、唾液によって皮膚がやわらかくなり、歯で細かい傷がついてひょうそ(ひょう疽)を頻発する方が少なくありません。

巻き爪・陥入爪

ひょうそ(ひょう疽)の患者さんは、巻き爪や陥入爪など爪の変形を伴っていることが少なくありません。
巻き爪は爪の外側が内側に巻き込まれている爪の変形で、陥入爪は変形した爪が皮膚に食い込んで炎症を起こしている状態です。
陥入爪では指先に慢性的な傷口ができるため、ひょうそ(ひょう疽)のリスクが極めて高くなります。

サイズの合わない靴

足の指にひょうそ(ひょう疽)ができやすい患者さんは、サイズの合わない靴や先端の細い靴によって爪が圧迫されているケースが少なくありません。
爪に慢性的な圧力がかかると、爪が変形しやすく、爪と皮膚の隙間から細菌が感染しやすくなります。
靴のなかで足が締め付けられていると、血流が悪くなるため、細菌を撃退する免疫の働きも弱くなってしまいます。

マニキュア・ジェルネイル

マニキュアやジェルネイルを頻繁にしている方は、薬剤によって皮膚が荒れてバリア機能が低下する場合があります。
ひょうそ(ひょう疽)は赤く腫れて指先の見た目も悪くするため、頻発するようであればマニキュアなどは控えた方が無難です。

ひょうそ(ひょう疽)の前兆や初期症状について

指先は外傷が起こりやすい部位であり、軽度な外傷ならすぐに自然治癒するため、ひょうそ(ひょう疽)が悪化するまで気が付かないケースが少なくありません。以下のような症状がある場合は、早めに皮膚科を受診してください。

  • 爪周囲の腫れ・痛み
  • 指先腹部の腫れ
  • 指先の黄色い腫れ

それぞれの内容を解説します。

爪周囲の腫れ・痛み

ひょうそ(ひょう疽)の主な症状は、爪周囲の腫れや痛みです。
ささくれや陥入爪の部分が赤く腫れ上がり、脈打つような痛みがある場合には、細菌に感染している可能性が高いでしょう。治療せずにいると、痛みがどんどん悪化していきます。

指先腹部の腫れ

爪周囲の傷口から入った細菌が、指の腹側に移動して炎症を起こすことも少なくありません。
指先の腹にニキビのような赤い腫れができ、触ると痛みを生じる場合には、細菌感染によるひょうそ(ひょう疽)の可能性があります。

指先の黄色い腫れ

ひょうそ(ひょう疽)が悪化して細菌が増殖すると、膿が生じて腫れた部分が黄色くなります。爪の下に膿がたまることもあり、爪の色が黄色くなって一部が膨らんできます。

ひょうそ(ひょう疽)の検査・診断

ひょうそ(ひょう疽)の患者さんは、指先の腫れや痛みを訴えて来院される方がほとんどです。皮膚科医院では、以下のような方法でひょうそ(ひょう疽)を診断します。

  • 視診
  • 細菌培養検査
  • ほかの病気との鑑別

それぞれの内容を解説します。

視診

患部の状態を視診し、腫れや膿の状態から診断します。
爪の周囲や指の腹が赤く腫れ上がっていたり、黄色い膿がでたりしている場合にはひょうそ(ひょう疽)となります。巻き爪や陥入爪など、爪の変形状態も確認が必要です。
職業や家事で手を傷つけることがないか、マニキュア・ジェルネイルの使用頻度や、指しゃぶり癖・爪を噛む癖の有無などの問診も合わせて行います。

細菌培養検査

感染している細菌を特定するために、細菌培養検査を行うこともあります。
黄色い膿がたまっている場合は、患部を切開して膿を採取し、培養して細菌を特定します。細菌の種類によって効果的な薬剤が異なるため、細菌の特定は重要です。

ほかの病気との鑑別

ひょうそ(ひょう疽)の症状は、細菌感染以外の病気と似ている場合も少なくありません。
いわゆる水虫の原因菌である真菌に感染した場合は、炎症は軽度ですが爪がボロボロと剥がれる状態が長く続きます。ヘルペスウイルスに感染している場合は、爪の周囲に水疱ができるのが特徴です。
乾癬や掌蹠膿疱症のように、感染ではなく自己免疫疾患の場合には、爪周囲以外にも炎症が広がっていきます。

ひょうそ(ひょう疽)の治療

ひょうそ(ひょう疽)は細菌感染が広がった状態で、放置してもなかなか自然治癒はしません。適切な治療をすれば後遺症もなく治ることがほとんどですので、早めに皮膚科を受診してください。ひょうそ(ひょう疽)の主な治療は、以下の3つです。

  • 抗生物質
  • 切開排膿
  • 陥入爪の治療

それぞれの内容を解説します。

抗生物質

ひょうそ(ひょう疽)の治療は、抗生物質の服用により感染した細菌を減らすことが基本です。
抗生物質を服用すると、すぐに症状が治まることもありますが、細菌がまだ残っているとすぐに再発します。抗生物質は、症状が治まっても処方された分をしっかり飲みきりましょう

切開排膿

患部に膿がたまって腫れ上がっている場合は、切開して膿を排出します。
メスで切開するか、穿刺で穴を開けて膿を抜く方法が一般的です。膿を抜いた傷口からの再感染を予防するため、化膿止めの軟膏などを塗って傷口を保護しましょう。

陥入爪の治療

陥入爪によってひょうそ(ひょう疽)を繰り返す場合は、陥入爪を治療しなければ根治しません
陥入爪の治療は、テーピング法やワイヤー法で時間をかけて矯正していく方法と、外科手術によって治療する方法があります。陥入爪の治療は皮膚科で可能ですが、外科手術が必要な場合は形成外科などに紹介される場合もあります。

ひょうそ(ひょう疽)になりやすい人・予防の方法

ひょうそ(ひょう疽)は爪周囲の傷口から生じる細菌感染であるため、爪周囲を傷つけないことが第一の予防法です。ひょうそ(ひょう疽)を予防するために、注意したいポイントは以下の3つです。

  • 爪は正しく切る
  • 靴のサイズを合わせる
  • 水仕事・土仕事は手袋を着用する

それぞれの内容を解説します。

爪は正しく切る

爪周囲炎は、爪の変形によって起こることも少なくありません。
爪の変形を予防する爪の切り方は、以下の3つがポイントです。

  • 爪の先端が指先から少しでる程度の長さにする
  • 足の爪は四角形を意識する
  • 爪の角は引っかからない程度に丸め、角を切りすぎない

巻き爪・陥入爪の原因の多くは、爪を短く切りすぎたり、角を丸めすぎたりしていることです。爪はこまめに切った方がよいですが、切りすぎも問題ですので注意しましょう。

靴のサイズを合わせる

足のひょうそ(ひょう疽)は、小さすぎる靴や先端の尖った靴が原因となることが少なくありません。
靴は適切なサイズを選択し、靴を履いたらかかとを合わせて、つま先に圧力がかからないようにしましょう。
ハイヒールなど先端の尖った靴は、できるだけ頻度を減らすことがおすすめです。

水仕事・土仕事は手袋を着用する

職業や家事で水仕事や土仕事が多い方は、手荒れしやすくひょうそ(ひょう疽)のリスクも高まります。
水仕事や土仕事を避けられない場合は、ゴム製の手袋を着用するなどして、手を保護しましょう。また、ハンドクリームによってこまめに保湿するのも有効です。


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