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高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

褥瘡の概要

褥瘡(じょくそう)とは、長時間同じ姿勢を続けることによって皮膚やその下の組織が損傷する状態を指します。
特に寝たきりの状態が続く高齢者や、動くことが難しい患者さんに発生しやすいです。
皮膚が赤くなったり、ただれたり、ひどい場合には深い傷ができることもあります。

褥瘡の発生リスクが高い部位としては、尾骨(おしりの骨のあたり)、かかと、肩の背中側、肘、耳の後ろなどがあります。
これらの部位は、骨と皮膚の間にクッションとなる筋肉や脂肪が少ないため、体重による圧迫が直接的に影響しやすくなります。

褥瘡は、高齢者や重度の病気で寝たきりの人々に多く見られますが特に、糖尿病や血液の流れが悪くなる病気を持つ患者さんは褥瘡のリスクが高くなります。

また、栄養状態が悪い、動くことができない、感覚が鈍いなどの条件も褥瘡のリスクを高めます。

褥瘡の予防と治療には、早期発見と適切なケアが重要です。
体位変換、適切な栄養管理、特別なマットレスの使用などが褥瘡の予防に役立ちます。

治療には、傷口の環境を整えること(創面環境調整)と、湿った状態を保つ治療法(湿潤環境下療法)が基本となり、壊死した組織を取り除いたり、細菌の負担を減らしたり、乾燥を防ぐことが行われます。

褥瘡の原因

圧迫

長時間同じ場所に圧力がかかると、その部分の血流が遮断され、皮膚や組織が損傷します。
骨が突出している部分に特に多く見られます。

摩擦・ずれ

摩擦やずれによって皮膚が引っ張られたり、ずれたりすることで皮膚が損傷しやすくなります。
これらの力が皮膚に加わることで、褥瘡が発生しやすくなります。

医療機器による圧迫創傷

最近では、褥瘡に代わり医療器具が原因で起こる皮膚の損傷が注目を集めています。
日本褥瘡学会では、医療関連機器圧迫創傷(medical device related pressure ulcer)を、「医療機器による圧迫で生じる皮膚やその下の組織の損傷」と定義しています。

褥瘡の前兆や初期症状について

褥瘡の初期症状としては、皮膚の赤みや痛みがあります。
進行すると、水疱ができたり、皮がむけたりすることもあります。

また、創部から出血したり、膿が出ることもあります。
褥瘡が進行する前にこれらの症状を見つけることが重要です。

褥瘡の検査・診断

褥瘡は、視診や触診、詳細な問診により診断されます。
リスクアセスメントスケールや傷口の状態を評価するツールを使用して、褥瘡の状態や重症度を評価します。
アルブミンやヘモグロビンなどの栄養を表す血液検査の数値が褥瘡の発生や治療の予後に強く関連しているため、これらの検査が行われます。

褥瘡の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、皮膚科です。
褥瘡は長時間の圧迫による皮膚の壊死であり、皮膚科で診断と治療が行われています。

褥瘡の治療

褥瘡の治療には、創面環境の調整(wound bed preparation)と湿潤環境下療法(moist wound healing)が重要です。
発症後1〜3週の急性期には、創面を保護し、湿潤環境を保つためのドレッシング材を使用します。

また、壊死組織の除去、細菌負荷の軽減、創部の乾燥防止、過剰な滲出液の制御、ポケットや創縁の処理も行います。
さらに、抗菌薬の全身投与や外科的デブリードマン(壊死組織の除去)も必要に応じて行われます。

急性期の治療

褥瘡が発症してから1〜3週間の急性期には、傷口を保護し、湿った環境を保つための特別な包帯やドレッシング材を使用します。
この時期には、炎症が強く、痛みや発赤、紫斑、浮腫、水ぶくれ、びらん、浅い潰瘍などが短期間に次々と現れます
観察がしやすいドレッシング材が適していますが、外用薬でも代用可能です。

Wound bed preparation(創面環境調整)

創面環境調整とは、創傷の治癒を促進するために壊死した組織を取り除き、細菌の負担を減らし、傷口の乾燥を防ぎ、過剰な滲出液を制御し、傷口の縁やポケットを処理することです。

Moist wound healing(湿潤環境下療法)

湿潤環境下療法は、傷口を湿った状態に保つことで治癒を促進する方法です。
滲出液に含まれる多核白血球やマクロファージ、酵素、細胞増殖因子などが傷口にとどまり、壊死組織を自然に分解し、治癒を促進します。

体圧分散と体位変換

体圧分散マットレスを使用し、定期的に体位変換を行うことが褥瘡の予防に有効です。
体圧分散マットレスの選択には、患者さんの自立度や病態を考慮し、適切なものを選びます。

すでに褥瘡のある患者さんに対しては、褥瘡部を圧迫しない体位が可能な場合には静的体圧分散マットレスを、圧迫しない体位が不可能な場合には圧切り替え型体圧分散マットレスを使用します。

栄養管理

栄養サポートチーム(NST)に相談し、必要な栄養(熱量、蛋白質)の供給を行うことが、褥瘡の発症予防と治療に有効です。特に蛋白質の補充が重要です。
褥瘡のリスクがある患者さんには栄養補給を行うことが推奨され、これにより褥瘡の発症を予防し治癒を促進します。

褥瘡になりやすい人・予防の方法

褥瘡になりやすい人

褥瘡は、特に寝たきりの高齢者や動けない患者さんに発生しやすいです。

また、糖尿病や血液の流れが悪くなる病気のある人、栄養状態が悪い人、皮膚の感覚が低下している人もリスクが高いです。
長時間同じ姿勢をとらざるを得ない人や、骨が突出している部分に圧力がかかる人も褥瘡になりやすいです。

体圧分散と体位変換

体圧分散マットレスを使用し、定期的に体位変換を行うことが褥瘡の予防に有効です。
体圧分散マットレスの選択には、患者さんの自立度や病態を考慮し、適切なものを選びます。

参考文献

  • 厚生省老人保健福祉局老人保健課 監修, 宮地良樹 編:褥瘡の予防・治療ガイドライン
  • 日本褥瘡学会編:改定 DESIGN-R®2020 コンセンサス・ドキュメント

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