目次 -INDEX-

AGA(男性型脱毛症)
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

プロフィールをもっと見る
防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

AGA(男性型脱毛症)の概要

髪の毛は成長期・退行期・休止期・成長期と、一定の成長サイクルによって成長と脱毛を繰り返します。このサイクルは、生涯で15~20回繰り返すとされています。成長サイクルのうち、通常は2~6年ある成長期が数ヶ月~1年に短縮され、休止期に入る毛包が多くなる状態がAGAです。
AGAはAndro(男性)genetic(遺伝性) Alopecia(脱毛症)の略で、日本では男性型脱毛症と呼ばれます。毛が十分に成長せずに休止期に入るため、毛包が小さくなり、生える毛は軟毛で細く短いのが特徴です。細いまま抜ける毛が増えるにつれ前頭部や頭頂部が次第に薄くなり、やがては髪がなくなります。
毛が抜ける範囲にはいくつかのパターンがあり、前頭部の両脇から進行するM字型・頭頂部が薄くなるO型・生え際が後退するU字型が代表的です。進行すると薄毛部分がつながって頭全体がはげあがります。
AGAの罹患率は高く、日本人男性全体の平均で約30%がAGA患者さんです。年齢別では以下のような分布が見られます。

  • 20歳代:10%
  • 30歳代:20%
  • 40歳代:30%
  • 50歳代以降:40%以上

また、女性のAGAもあります。男性とは違って生え際の後退などはなく、頭頂部から頭皮全体が薄くなるのが特徴です。時期も更年期に多発するなど病態が違うため、近年は女性型脱毛症と呼んで区別するようになりました。

AGA(男性型脱毛症)の原因

AGAを発症する原因としては、男性ホルモンが髪の成長を抑制することがわかっています。

さらに背景として遺伝的要素の存在も無視できません。それぞれを解説していきましょう。

DHT(ジヒドロテストステロン)

AGAを発症する原因は、男性ホルモンのテストステロンが還元酵素の一種・5αリダクターゼによってより強力なDHT(ジヒドロテストステロン)に変わることです。生成されたDHTは、毛根の下端部にある毛包内の毛乳頭細胞周辺の受容体と結合します。
そして、脱毛因子のTGF-β や DKK1を誘導して、毛を作る毛母細胞の細胞分裂・増殖を抑制します。通常は2~6年間成長を続けるはずだった髪の毛は、毛包内でDHTが影響を及ぼした結果数ヶ月~1年で成長が止まり、細く短い毛の状態で成長は終わりです。正常な毛包なら、数ヶ月間休止期に入った後細い毛が抜け、再び成長を始めます。
しかし、DHTの影響下にある毛包は休止したままです。そして小さくなる矮小化をおこします。こうした症状は成長期を迎えた毛のそれぞれにおこります。毛の成長サイクルは1本ずつ違うため、抜け毛・薄毛の進行はゆるやかです。

遺伝

AGAの発症は毛乳頭細胞とDHTの結合によりますが、その結合しやすさやDHTの産生能力に関わるのが遺伝子です。まず、毛乳頭細胞の受容体がDHTと結合しやすい性質は、男性が母親からX染色体で受け継ぎます。そのため母方の祖父・曽祖父が薄毛の場合はリスクが大きく要注意です。祖母や曾祖母など女性だけで遺伝子が引き継がれた場合、女性だから発症しなかっただけで自分だけ発症する可能性があります。
もう一方のDHT産生能力に関わる遺伝子はX・Yどちらの染色体にも存在するので、父母のどちらからも受け継ぎます。ただ、DHTが多くなっても結合力が弱い場合は、発症リスクは大きくなりません。

AGA(男性型脱毛症)の前兆や初期症状について

眼球突出の前兆や初期症状は、一般的に以下のような症状が現れます。
AGAはゆっくり進行するため、初期のうちは異常を発見しにくい病気です。しかし、早期に発見する程治療効果は高くなります

症状があった場合には、皮膚科を受診しましょう。

毛が軟毛になる

DHTが受容体と結合すると毛母細胞の増殖が抑制され、毛包が小さくなって太い毛が育たず軟毛(細くやわらかい毛)が増える症状が出てきます。軟毛で見られるのは、何となくヘアスタイルがまとまらないと感じたり、髪のボリュームがなくワックスを付けても立ちあがらなくなったりする症状です。
進行すると、生え際に産毛のような短い毛が見つかる場合もあります。また抜け毛をよく見ると、明らかに細いとわかる毛が混じるようになります。

抜け毛が増える

抜け毛自体は日常的で、1日50~100本程度は抜けているのが普通です。しかし、AGAでは短期間で成長期が終わり休止期に入る毛が急速に増えるため、抜け毛の量が増えてきます。抜け毛が気になったら、枕の上・風呂の排水口・洗面台・ヘアブラシなどで見つかる抜け毛はどうなのかチェックしましょう。
抜け毛が100本を超える状態が続いたら要注意ですが、正確に数えなくても見た目で判断して多いと感じたら、AGAの初期症状の可能性が濃厚です。

頭皮が透けて見える

AGAでは軟毛化で毛が細くなったり、抜け毛が増えたりする症状が出てきます。その結果、髪の密度が低くなり頭皮が透けて見える場合があります。前頭部の透ける状態は鏡で確認できますが、頭頂部が透ける状態は鏡を2枚使って確認する方法になります。

AGA(男性型脱毛症)の検査・診断

初期症状などがあってAGAが疑われる場合、クリニックでは検査や診察によって症状を確認して診断します。

その結果によって治療方法を決め、治療が開始される手順です。検査や診断の内容を具体的に確認しておきましょう。

AGAの検査

AGA治療に先立って行われる検査は、血液検査と遺伝子検査です。血液検査の目的は下記のとおりです。

  • AGAとほかの病気を区別
  • 治療薬が使えるかを確認
  • 治療薬の効果を予測

検査の結果で、AGAであることの確認と治療方法の選択が行われます。また、遺伝子検査ではDHTに対する感受性を調べることで、適切な治療薬を選ぶ参考情報が得られます。

AGAの診断

AGAを判定する診断では、問診と視診が行われます。問診で行われるのは、症状や発症からの経緯・生活習慣・家族の来歴などの詳細な聞き取りです。視診では前頭部の後退程度の観察や、前頭部・頭頂部の毛が細く短くなっているかを確認して診断します。
AGAの診断には、拡大鏡やダーモスコピーなどの機器が重要な判定手段です。病態の分類には、国際標準のハミルトン・ノーウッド分類に、頭頂部が薄くなる日本人の特徴を加味するために高島分類を加えた方法が一般的に使われています。

AGA(男性型脱毛症)の治療

AGAの治療法には、DHTの産生を抑えて抜け毛を防ぐ脱毛抑制と、小さくなった毛包を活性化して太くしっかりした毛を育てる発毛・育毛があります。どちらも薬剤治療で、内服薬と外用薬を単独または併用で使う治療です。

内服薬ではフィナステリド(商品名プロペシアなど)とデュタステリド(商品名ザガーロなど)があります。5αリダクターゼ型の作用を抑えて、DHTの産生を阻害し抜け毛を防ぐ薬です。外用薬ではミノキシジル(商品名リアップなど)があります。こちらは萎縮した毛包を活性化し血行を促すことで、発毛を促し太くて長い毛に成長させる作用を持つ薬です。
ほかにも塩化カルプロニウムなど各種の発毛・育毛薬がありますが、AGAへの対応では上述の3点が主に使われます。

治療期間は最短でも4~6ヶ月の連続した継続使用が必要です。一定の成果が得られても、薬を止めると間もなく効果が失われるため、医師の指導のもと減薬して現状を維持する長期治療になります。

AGA(男性型脱毛症)になりやすい人・予防の方法

AGAは男性ホルモンが関係する病気ですが、生活習慣などさまざまな要因も重なって発症します。そのためAGAになりやすい人がいて、ある程度の予防も可能です。

AGAになりやすい人の特徴と予防法が以下です。

AGA(男性型脱毛症)になりやすい人

AGAになりやすい人では、次のような人が挙げられます。

  • 祖父・曾祖父が薄毛
  • 栄養バランスの悪い食生活
  • 睡眠不足
  • ストレスを感じやすい
  • 喫煙者
  • 頭皮の状態が悪い

AGAでは遺伝による発症が80%と多く、特に母方の祖父が薄毛の方はAGAの発症リスクが高いです。栄養バランス・睡眠不足・ストレスなどの生活習慣も、薄毛を進行させる可能性があります。喫煙習慣・頭皮の炎症・乾燥は血行を妨げるなど、髪の成長を抑制してAGAを進行させる要因です。

AGA(男性型脱毛症)の予防法

AGAの発症を予防するには、髪の毛が成長しやすい環境を整えることです。日常生活のなかでできる予防法をいくつか挙げておきましょう。

  • 食生活の見直し
  • 充分な睡眠
  • 飲酒と喫煙は控える
  • ストレス解消に努める

髪の毛はケラチンというタンパク質でできています。毛の成長に必要なタンパク質の摂取とともに、合成に必要なビタミンB・亜鉛も必須です。睡眠中に分泌される成長ホルモンの確保のために、十分な睡眠を取ります。睡眠の質を下げる飲酒と血流を減らす喫煙は控えましょう。併せて血流を抑えるストレスの解消に努めましょう。

関連する病気

この記事の監修医師