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掌蹠膿疱症
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

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防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

掌蹠膿疱症の概要

掌蹠膿疱症とは、手のひらや足の裏に膿の溜まった皮疹が発生する皮膚の病気です。皮疹は一定の期間を経て、かさぶたになって皮が剥けます。
ただし繰り返し皮疹ができるため、慢性的になり、治療期間が長期にわたる点が特徴です。また皮疹のほかに、爪の変形や手足の腫れを伴うこともあります。合併して関節炎を引き起こすことがありますので、関節痛や関節の腫れも掌蹠膿疱症に関連した症状です。
疼痛は首や腰、手足の関節にあらわれることが多く、掌蹠膿疱症性骨関節炎として治療が必要になる可能性もあります。
症状が気になる場合には主治医に相談したほうがよいでしょう。
膿を伴った皮疹にも菌がいるわけではありませんので、ほかの人にうつる心配はありません

掌蹠膿疱症の原因

掌蹠膿疱症の原因は体質による要素があると想定されているものの、まだ明確に判明しているわけではありません
無症状の別の病巣が原因で、離れた臓器に別の疾患を引き起こす病巣感染が、大きく関係しているとされています。病巣は扁桃や歯周炎、金属アレルギーなどがあり、多岐に渡る点が特徴です。
ただし、因果関係がはっきりとわかる患者さんばかりではありません。はっきりとした病巣がわからない場合にも検査での診断と対症療法での治療を行っていくことになります。

掌蹠膿疱症の前兆や初期症状について

掌蹠膿疱症の初期症状としては膿を伴った膿疱と呼ばれる皮疹が手のひらや足の裏に発生します。この水ぶくれのような膿疱は、かゆみを伴うことが少なくありません。またこの症状は、次々に皮疹が発生する場合や、緩和と悪化を繰り返す場合など、患者さんによって分かれます。患者さんご自身のなかでも、体調やその時々の生活習慣によって、症状の表れ方が異なるため注意が必要です。
このような初期症状は、水虫やかぶれと判断がつきにくいことも少なくありません。
症状が気になる場合には、ご自身で判断するのではなく、最寄の皮膚科などを受診して相談するとよいでしょう。
また皮疹は放っておくと徐々に化膿し、その後黄色に変色します。さらにかさぶたになり角層が剥がれ落ちます。ただし掌蹠膿疱症の特徴は、繰り返し皮疹ができることです。一度皮疹がなくなっても再度症状としてあらわれることから、繰り返すようでしたら皮膚科などを受診して検査を受けたほうがよいでしょう。

掌蹠膿疱症の検査・診断

掌蹠膿疱症の検査や診断は大きく2つに分かれます。
まず1つ目は皮疹が掌蹠膿疱症かどうかを判断するための検査です。
そしてもう1つは病巣感染の可能性があることから、感染を引き起こした病巣を特定するための検査です。

皮疹が掌蹠膿疱症によるものであるか否かの診断

掌蹠膿疱症の診断は、皮膚の表面の観察です。ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いて検査します。ただし、似た症状の病気と判断がつきづらい場合などには、皮膚表面の角層を一部取って顕微鏡で調べる皮膚生検を併せて用いることがあります。

感染巣を特定するための検査

病巣感染が疑われる場合には、感染を引き起こした感染巣を特定するための検査を行うこともあるでしょう。例えば金属アレルギーが疑われる際に金属パッチテストを行います。歯周炎が疑われる場合には、歯科検診で歯性病巣を確認する場合もあります。これらの検査は治療の方針を決めていく際にも重要な要素となるでしょう。また、掌蹠膿疱症性骨関節炎の症状が見られる場合などで、血液検査・X線検査・CT検査といった方法を用いて診断を行う場合もあります。さらに問診も並行し、病巣感染といった原因を探るほか、合併症がないかといった現状について確認し総合的な診断を実施します。

掌蹠膿疱症の治療

掌蹠膿疱症の治療は、上述の検査による状況で分けることができます。
感染巣が特定できている場合と、その憎悪因子、つまり症状の原因がはっきりとしない場合では治療法は異なります。
それぞれの場合に分けて治療法を見ていきましょう。

感染巣が特定できている場合の治療

掌蹠膿疱症を引き起こした感染巣がはっきりとしている場合には、その感染巣に対しての治療を行うことで症状の緩和を目指します。抗菌薬の投与や病変部の除去が一般的です。金属アレルギーが原因で、掌蹠膿疱症を発症している場合があります。検査で陽性となった場合には、対象の金属を避けることで症状が緩和する可能性もあるでしょう。これらの感染巣の治療のために、歯科医院や耳鼻科に並行して受診する必要性も考えられます。まずはしっかり主治医と相談して、治療方法を決めていくことをおすすめします。

憎悪因子がはっきりしない場合の治療

掌蹠膿疱症を引き起こした要因がはっきりしない場合には、対症療法が中心となってくるでしょう。皮疹に対しては、ステロイド軟膏を中心とした外用薬を用いることが考えられます。また、痒み関節の痛みに対して内服薬を処方して、症状の緩和を図ることもあるでしょう。 なお、患者さんのうち感染巣がはっきりせず対症療法によって治療を進める方は7〜8割と少なくありません。ただし平均3〜7年で症状が軽減されることや治癒することが少なくありません。長期を要するものの支障がない状態まで回復するとの研究もあります。 長期での治療となる可能性は否めませんが、根気よく向き合っていくことで日常への影響がかなり減らせると考えられます。まずは皮膚科に相談したほうがよいでしょう。

掌蹠膿疱症になりやすい人・予防の方法

掌蹠膿疱症の感染者は、男性よりも女性のほうが多いことから、女性の感染の可能性が高いと考えられます。また30代〜50代の患者数が保険請求件数から多いと推察されます。

掌蹠膿疱症は病巣感染の可能性があることから、その感染巣とされる扁桃や歯周の炎症、金属アレルギーに罹患している方は感染の可能性がほかの人と比べて高いです。

予防の方法としては感染巣を軽減することが挙げられます。
扁桃や歯周の炎症が影響すると考えるならば、感染症への予防が効果的です。
病巣感染のきっかけとしては、喫煙や精神的なストレス、下痢や便秘といった免疫状態の変化が想定されます。

特に喫煙は統計学的にも掌蹠膿疱症との関連があるといった研究結果があります。掌蹠膿疱症の患者さんの80%が喫煙者といったデータもあることから、喫煙との関連性は高いと考えられるでしょう。禁煙をしたからといって必ず症状が改善するわけではありませんが、喫煙を避けることをおすすめします。

下痢や便秘も感染症同様、体内環境に大きな影響を及ぼすと考えられることから、まったく関係がないとは言い切れません。
下痢や便秘には栄養バランスの乱れだけでなく運動不足やストレスといったさまざまな要因が関連しています。日頃の生活習慣を見直すことで改善に向かうことも考えられます。
またストレスの緩和は、それ自体が掌蹠膿疱症の予防に効果をもたらす可能性があるため、覚えておくとよいかもしれません。

掌蹠膿疱症が皮膚疾患であることから、症状のあらわれる手のひらや足の裏を保湿することも、発症後の負担を軽減につながります。日頃から実践してみると効果がある可能性があります。

原因がはっきりと特定されていないうえ、病巣感染の原因が多岐に渡るため、予防の方法もさまざまです。日頃の生活習慣を見直すことが掌蹠膿疱症の予防に大きく関わるといえるでしょう。


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