目次 -INDEX-

帯状疱疹
高藤 円香

監修医師
高藤 円香(医師)

プロフィールをもっと見る
防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

帯状疱疹の概要

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が原因で皮膚の痛みや発疹が生じる感染症です。症状は、体の神経節に沿った帯状の痛みを伴う発疹が特徴的です。発疹は最初に赤い斑点として現れ、その後水疱に進行し、次第にかさぶたとなって治癒します。なかには、発熱や頭痛、角膜炎、結膜炎、難聴を伴うことがあり、皮膚症状が治っても神経痛が残ることがあります。

帯状疱疹の原因

帯状疱疹の直接的な原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化です。幼少期に水痘(水ぼうそう)を患い、完治した後もウイルスが知覚神経節の神経細胞核内に残存します。数十年後にウイルスが再び活性化すると、帯状疱疹を発症します。

再活性化の主な要因は、加齢やストレス、免疫力の低下です。特に50~70歳代の高年齢者から高齢者、免疫抑制状態(がん治療やHIV感染者)にある患者さんは、帯状疱疹を発症しやすいです。さらに、重篤な疾患や大手術、過労、栄養不足なども免疫力を低下させ、再活性化のリスクを高めます。
ストレスが免疫系に与える影響は大きく、長期間にわたるストレスは身体の免疫機能を低下させ、帯状疱疹を発症させる可能性があります。同様に、過労や睡眠不足も免疫力を低下させる要因として知られています。また、ビタミンやミネラルの欠乏による栄養不足も免疫機能に影響を及ぼすため、バランスの取れた食事が重要です。

帯状疱疹の前兆や初期症状について

帯状疱疹の初期症状は多岐にわたります。最初に現れる症状としては、身体の片側に限局し、神経に沿った帯状に広がる痛み(チクチク、ズキズキ)が特徴的です。通常、この痛みは非常に強く、日常生活に大きな支障をきたす場合もあります。

痛みから3~4日後に皮膚症状として赤い斑点が現れ、次第に水疱に進行し、水疱は集まって発疹や水疱が紅斑の上にかたまって出来ます。これらの発疹は、体幹や顔、特に腰や胸のあたりに多いです。また、発疹が現れる前には、皮膚が過敏になったり、かゆみを感じることもあります。

さらに、帯状疱疹の初期には全身症状として、発熱や頭痛、倦怠感を伴うことがあります。これらの症状は風邪やインフルエンザと似ているため、初期段階での診断が難しいです。しかし、帯状疱疹特有の片側性の痛みと発疹が現れた場合は、早期に医師の診察を受けましょう。

これらの症状がみられた場合、 皮膚科、内科、ペインクリニックなどを受診して適切な検査・治療を受けることをおすすめします。

帯状疱疹の検査・診断

帯状疱疹の診断は、主に臨床症状に基づいて行われます。特に、片側に限局した痛みと水疱を伴う発疹が特徴的なため、視診のみで診断がつくことが多いです。医師は患者さんの症状や病歴を詳しく聴取し、皮膚の状態を確認します。ただ、確定診断のために水疱の内容液を採取し、PCR検査、細胞診、蛍光抗体法、採血で抗体を獲得しているか測定を行うことがあります。

また、特に症状が重篤な場合や診断が難しい場合には、皮膚生検を行うことがあります。この検査の目的は、皮膚の一部を採取して顕微鏡で観察し、ウイルス感染の有無を確認することです。さらに、血液検査では、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する特異的な抗体の存在を確認することができ、これにより診断の確実性が高まります。

帯状疱疹の治療

帯状疱疹の治療は、主に抗ウイルス薬の投与が中心です。抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑えるため症状の軽減と回復を促進します。初期症状の出現からできるだけ早期に治療を開始することが重症化予防に繋がります。

急性期では、痛みを和らげるための鎮痛薬や、炎症を抑えるための抗炎症薬を併用することがあります。帯状疱疹による神経痛が強い場合には、神経痛に効くプレガバリンやオピオイドも必要なこともあります。

薬物療法であまり効果が見られない場合、麻酔によって神経伝達を遮断する硬膜外ブロック・神経ブロック・持続硬膜外ブロックを行う場合があります。これらの治療法は、神経痛の緩和に効果的で、患者のQOL(生活の質)を向上させることが可能です。それでも疼痛コントロールが難しい場合は、脊髄刺激療法を検討します。

帯状疱疹になりやすい人・予防の方法

帯状疱疹になりやすいのは、免疫力が低下している高齢者や、免疫抑制状態にある患者さんです。また、ストレスや過労、栄養不良など、免疫力低下に繋がる要因は発症リスクを高めます。予防の方法としては、健康な生活習慣、ストレス管理、帯状疱疹ワクチンの接種が効果的です。

健康な生活習慣

健康的な生活習慣を維持することが基本です。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠が免疫力を保つために大切になります。栄養面では、免疫力を高めるために、ビタミンCやビタミンE、亜鉛などの栄養素が豊富な食事を心がけましょう。

ストレス管理

帯状疱疹は免疫力低下により発症するため、ストレスで免疫力が低下しないようにするのが大切です。ストレス管理には、リラクゼーションや趣味、友人や家族との交流など、リラックスできることが良いでしょう。

帯状疱疹ワクチンの接種

帯状疱疹ワクチンの接種が発症予防・重症化予防に効果的です。特に50歳以上の人や、免疫抑制状態にある患者さんには、ワクチン接種が推奨されています。より早期の接種が効果的なため、症状が出現した場合はできるだけ早く受診しましょう。
ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンがあり、それぞれの特徴と適応に応じて選択されます。生ワクチンは、副反応の発現率が低いですが、免疫抑制状態の方は受けられません。一方、不活性ワクチンでは発症予防効果が高く、持続時間も長いものの副反応の発現率がやや多く報告されています。


関連する病気

この記事の監修医師