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新生児呼吸窮迫症候群
佐伯 信一朗

監修医師
佐伯 信一朗(医師)

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兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学病院産婦人科、兵庫医科大学ささやま医療センター、千船病院などで研鑽を積む。兵庫医科大学病院産婦人科 外来医長などを経て2024年3月より英ウィメンズクリニックに勤務。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会健康スポーツ医、母体保護法指定医。

新生児呼吸窮迫症候群の概要

新生児呼吸窮迫症候群は、特に早産児に多くみられる呼吸障害で、出生直後から呼吸が苦しそうな状態になる病気です。早産によって肺の成熟が不十分なまま生まれると、肺の中の肺胞という小さな袋がしっかりと膨らむことができず、呼吸が困難になります。肺胞の表面を滑らかに保ち、膨らみやすくする役割を果たす物質(肺サーファクタント)が不足していることが主な原因です。適切な治療により多くの赤ちゃんが回復しますが、重症の場合には合併症や後遺症を残すこともあります。

新生児呼吸窮迫症候群の原因

この病気の主な原因は肺サーファクタントの不足です。肺サーファクタントは妊娠後期に肺の中で作られ始めますが、妊娠34週未満の早産児では十分な量が作られていないことが多く、肺胞が潰れやすくなります。その結果、呼吸をしても肺に酸素が取り込めず、血液中の酸素が不足します。また、母親に糖尿病がある場合や、白人の男児にやや発症が多いことも知られています。帝王切開による出産も、肺内の余分な水分の排出が不十分になりやすく、発症に関わるとされています。

新生児呼吸窮迫症候群の前兆や初期症状について

出生直後から速い呼吸(頻呼吸)がみられることが最も多い症状です。正常な新生児の呼吸数は毎分40〜60回ですが、呼吸窮迫症候群ではそれを超えることが多くなります。さらに、鼻の穴を広げて呼吸したり(鼻翼呼吸)、うなるような呼吸音(呻吟)、胸やお腹の筋肉を使って息をする(陥没呼吸)、皮膚や唇が青紫色になる(チアノーゼ)などの症状が現れます。症状は通常、生後すぐに始まり、12〜24時間以内に悪化することが多いです。重症の場合には全身の活動性が低下し、哺乳が困難になったり、低体温、低血糖なども伴うことがあります。

新生児呼吸窮迫症候群の検査・診断

診断の第一歩は、出生までの経過や母体の情報、出生時の状態を詳しく確認することです。診察では上記の症状が観察されます。追加の検査としては、血液検査で白血球数や炎症の有無、血糖値、血液ガス分析で酸素や二酸化炭素の状態を確認します。特に低酸素血症や酸性血症が確認されることが特徴です。

胸部のレントゲン検査は診断に非常に役立ちます。新生児呼吸窮迫症候群では肺が全体的に白くかすんで見えるすりガラス様陰影や気管支が浮き出て見える所見がみられます。これらは肺胞の虚脱や換気不良を反映しています。他に感染症や先天性心疾患など、他の呼吸障害の原因を除外するための検査も行われます。

新生児呼吸窮迫症候群の治療

治療は、呼吸の補助と原因であるサーファクタント不足を補うことが中心です。軽症の場合は酸素吸入だけで改善することもありますが、多くは人工呼吸器や鼻から圧をかけて空気を送る非侵襲的な呼吸補助が必要になります。中等度から重症では気管内にチューブを挿入して人工呼吸を行いながら、人工的に作られたサーファクタントを肺に注入します。

このサーファクタント補充療法は、治療法が確立されてから多くの赤ちゃんの命を救うようになりました。適切な時期に1回目を投与し、必要に応じて追加投与することで効果が得られます。また、妊娠中に早産が予想される場合は、母体にステロイド薬を投与して赤ちゃんの肺の成熟を促すことが推奨されています。これにより出生後の呼吸窮迫症候群の発症リスクを大きく減らすことができます。

重症の場合は高濃度酸素や血圧の管理、必要に応じて肺血管を広げる薬剤、さらにごく重症例では体外式膜型人工肺(体外循環)などの集中治療が行われることもあります。

新生児呼吸窮迫症候群になりやすい人・予防の方法

妊娠34週未満で生まれた早産児に多く発症します。母体に糖尿病がある場合や、帝王切開による出産、妊娠高血圧症候群などもリスクを高めます。白人の男児にやや多い傾向もあります。また、妊娠中の適切な管理がなされなかった場合、早産のリスクが高まり、結果としてこの病気につながることがあります。

予防としては、妊娠中の適切な管理が重要です。特に早産の予防や、必要に応じたステロイド投与により、発症リスクと重症度を下げることが可能です。分娩のタイミングや方法も医療チームと慎重に相談し決定することが望ましいです。出生後は早期に症状を把握し、適切な医療機関で迅速な対応を行うことで重症化を防ぐことができます。

参考文献

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