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林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
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眼科(角膜外来)

クラミジア性咽頭炎の概要

クラミジア性咽頭炎とは、Chlamydia trachomatis(クラミジア・トラコマティス)という細菌が咽頭(のど)に感染して炎症を起こす疾患です。性感染症(STI)のひとつであり、性器のクラミジア感染と同様に、オーラルセックスなどの性的接触によって咽頭に感染するケースが近年増えています。 クラミジア性咽頭炎は、男女問わず発症し、特に若年層を中心とした性的活動の活発な世代に多くみられます。感染しても自覚症状がないことが多いため、本人が気付かずにパートナーへ感染を広げてしまうリスクがある点でも社会的に注目されています。

症状が現れた場合には、のどの痛みや違和感、軽い咳、微熱など、一般的な風邪と似た症状を示すことが多く、見逃されやすい特徴があります。市販薬で一時的に改善することもありますが、原因菌は残っているため、自然治癒することはほとんどありません。 適切な検査と治療によって完治が可能であり、放置するとほかの部位(性器や結膜など)への感染を引き起こすおそれもあるため、早期発見と治療が重要です。ここでは、クラミジア性咽頭炎の原因、症状、診断方法、治療、予防について詳しく説明します。

クラミジア性咽頭炎の原因

クラミジア性咽頭炎の原因は、Chlamydia trachomatisという性感染症の原因菌が、口腔内・咽頭の粘膜に感染することです。感染の主な経路はオーラルセックスで、感染者の性器や体液に触れることで、のどの粘膜に菌が感染します。通常の会話や食事では感染しませんが、性行為を介した粘膜同士の接触により感染が成立します。 クラミジア菌は感染力が強く、粘膜への接触だけで感染するため、コンドームを使用していても口腔接触があれば感染するリスクが残るという点にも注意が必要です。また、感染後に症状が出ない無症候性のケースも多く、本人が気付かないうちに他者へ感染を広げるリスクがあります。 パートナー間でのピンポン感染(繰り返し感染)が起きやすいことも特徴のひとつです。また、咽頭でのクラミジア感染が長期化すると、性器に比べて治療が難しくなることもあるため、早期の対応が望まれます。

クラミジア性咽頭炎の前兆や初期症状について

クラミジア性咽頭炎の前兆や初期症状は、のどの軽い痛み違和感といった、ごくありふれた症状から始まることがほとんどです。風邪のような症状と区別がつきにくく、多くの方は疲れや気候の変化などによる一時的な不調だと考えてしまい、見逃されることがあります。 感染から数日〜1週間程度で、のどの腫れや赤み、軽い咳、微熱が出ることがありますが、症状が軽い、あるいはまったく無症状であるケースも多くみられます。そのため、知らないうちに他人に感染させてしまうリスクが高く、性感染症のなかでも特に注意が必要とされています。

パートナーがクラミジアに感染していると判明した場合や、感染の可能性がある行為があった場合は、自覚症状がなくても検査を受けることが推奨されます。自分自身の感染に気付かず、性器や他部位に感染を広げたり、治療が遅れて慢性化したりすることを防ぐためです。 咽頭の違和感が長引く、または風邪薬で改善しない場合には、単なる風邪ではない可能性も考えられます。早めに耳鼻咽喉科泌尿器科婦人科など、性感染症に対応している診療科を受診することで、正確な診断と適切な治療につなげることができます。

クラミジア性咽頭炎の検査・診断

クラミジア性咽頭炎の診断は、のどの粘膜から採取した咽頭ぬぐい液を用いた検査で行います。細い綿棒でのどの奥をやさしくこすり取り、その中にChlamydia trachomatisという細菌が存在するかどうかを調べます。採取された検体は、SDA法(鎖置換増幅法)、TMA法(転写媒介増幅法)、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)といった核酸増幅法によって検査します。これらの方法は、ほんのわずかな菌でも検出できる高感度な検査法で、症状が軽い場合やまったく自覚がない場合でも正確に診断ができます。 クラミジア性咽頭炎は、のどの症状がごく軽いか、まったく現れないことも多いため、日常的な風邪や疲れによるのどの違和感と見分けがつかず、気付かないまま放置されてしまうことがあります。特に、過去にオーラルセックスの経験がある方で、のどの痛みや違和感が長く続いている場合や、パートナーがクラミジア感染と診断された場合は、自身にも感染の可能性があるため、症状の有無に関わらず検査を受けることが大切です。

クラミジア性咽頭炎の治療

クラミジア性咽頭炎の治療は、抗菌薬を用いた内服治療が基本です。治療薬としてよく使われるのは、マクロライド系抗菌薬(アジスロマイシンなど)テトラサイクリン系抗菌薬(ドキシサイクリンなど)です。これらの薬は、クラミジア菌の増殖を抑制し、体内から排除する作用があります。 アジスロマイシンは、1回の内服で治療が完了するケースがあるため、通院の負担が少なく、治療の継続が難しい方にも適しています。一方、ドキシサイクリンは1日2回、7日間の服用が必要ですが、咽頭におけるクラミジアへの有効性が高いとされており、特に再発防止の観点から選択されることもあります。

治療中は、医師の指示に従い、服薬期間をきちんと守ることが重要です。途中で服用をやめてしまうと、菌が体内に残ったままになり、再発や薬剤耐性菌の出現につながるおそれがあります。また、治療が完了しても、再感染を防ぐためにはパートナーの同時治療が不可欠です。 症状が改善しても、再検査で菌が完全に消えているかを確認することが推奨される場合があります。特にのどは性器に比べて薬が届きにくいとされており、治療効果の判定には一定の時間とフォローが必要です。

クラミジア性咽頭炎になりやすい人・予防の方法

クラミジア性咽頭炎は、性器クラミジア感染と同様に、性的接触を介して広がる感染症であるため、感染リスクは性行為の経験があるすべての方に存在します。特に、オーラルセックスを含む性行為を避妊具なしで行うことがある方、複数のパートナーと接触のある方、またはパートナーの感染状況が不明な方は、感染の可能性が高くなります。 また、10代後半から20代の若年層では、性教育の機会が限られていたり、感染に対する知識が不十分であったりすることから、感染率が高くなる傾向があります。性感染症の既往がある方や、性器にクラミジア感染があると診断された方は、咽頭への感染も合併している可能性があるため注意が必要です。

クラミジア性咽頭炎の予防には、まず粘膜同士の直接的な接触を避けることが基本となります。オーラルセックスの際にコンドームなどを使用することで、感染リスクをある程度下げることが可能です。ただし、これらを正しく使用しても、感染を完全に防ぐことは難しいため過信は禁物です。 感染の有無に気付かないまま過ごしてしまうことが多いのが、咽頭クラミジアの特徴です。そのため、特に、複数のパートナーとの関係がある場合や、パートナーが感染していたことがある場合には、のどの検査も含めたチェックを心がけましょう。また、感染が判明した際には、自分だけでなくパートナーも一緒に治療を受けることが再感染の予防につながります。性感染症は、早期に見つけて正しく対応することで、周囲への広がりを防ぐことができます。

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