

監修医師:
五藤 良将(医師)
新生児肺炎の概要
新生児肺炎とは、生後28日未満の赤ちゃんに発症する肺炎です。新生児は免疫力が未熟であるため、肺炎にかかると重症化しやすく、早期の発見と適切な対応が重要になります。
特に、早産児や低出生体重児ではより注意が必要です。
新生児肺炎は細菌・ウイルスなどの病原体による感染が原因で発症します。特にB群溶血性連鎖球菌(GBS)や単純ヘルペスウイルス、リステリア、クラミジアなどの病原体が関与し、胎盤を介した感染や、分娩時の産道を通じた感染が主な経路です。
妊婦健診ではGBSやクラミジアの検査が行われ、陽性の場合は治療が必要となります。リステリア菌は食品を介して感染するため、妊婦は未加熱の食品を避けることが推奨されます。
新生児肺炎は気づいたときには進行していることが多く、症状としては、体温や呼吸・循環異常、消化器症状、神経症状などが現れます。
診断には胸部レントゲン、血液検査、細菌・ウイルス検査が用いられます。
治療は原因となる病原体に応じて異なり、細菌性肺炎では抗菌薬、ウイルス性肺炎では対症療法もしくは抗ウイルス薬の投与が基本となります。
重症の場合、酸素投与や人工呼吸器、輸液療法などが必要になることがあります。
新生児肺炎は赤ちゃんの命に関わる重大な感染症です。新生児は自己治癒力が低く、病状の進行が早いため、早期の治療が重要です。
また、妊娠中からの予防策や周囲の人々の配慮が、赤ちゃんの健康を守る鍵となります。

新生児肺炎の原因
新生児肺炎の主な原因は、細菌やウイルスなどの病原体による感染です。
特に、GBSや単純ヘルペスウイルス、リステリア、クラミジアなどが関与することが多く、これらの病原体は母親から胎盤を介して感染したり、分娩時に産道を通じて感染したりする場合があります。
GBSは健康な成人の腸管や膣内に存在する常在菌です。妊婦がGBSを保菌していても、自身に害を及ぼすことはありませんが、分娩時に産道を介して赤ちゃんに感染することで新生児肺炎等の病気を引き起こします。
妊娠中に性器ヘルペスにかかっている場合も、分娩時に母親の産道を介して赤ちゃんが感染することがあります。
リステリアは、加熱されていないチーズや生ハム、サラダ、無殺菌の牛乳などの食品が感染源になるとされています。
妊婦がリステリア感染症を発症すると、子宮内の赤ちゃんが感染することがあるといわれています。
クラミジアは子宮頸部に感染し、性器クラミジア感染症を引き起こします。特に女性は自覚症状がない場合もあり、知らないうちに感染していることがあります。感染の原因は、クラミジア感染者との性行為が挙げられます。
これらの感染症は、母親が感染していても自覚症状が少ないため、妊娠中は気づかないケースもあり、出生後の検査ではじめて異常が見つかることもあります。
新生児肺炎の前兆や初期症状について
新生児肺炎は、症状が出現した際には病状がかなり進行しているケースが多いと考えられています。
症状は感染症に特有のものはなく、体温や呼吸、循環状態の異常、消化器症状、神経症状として現れます。
具体的な症状としては、低体温や高体温、無呼吸または呼吸数の増加、うなり声、チアノーゼ(口唇や皮膚が青紫色になる状態)などが挙げられます。
さらに循環状態の異常としては血圧低下や皮膚蒼白、嘔吐や腹部膨満などの消化器症状、けいれん、嗜眠(しみん:強い刺激を与えないと覚醒しない状態)などの神経症状が現れます。
これらの症状が出る前に「なんとなく元気がない」「なんとなくおかしい」と異変に気づくことが早期治療につながります。少しでも異常を感じたらできるだけ早く医療機関を受診することが重要です。
特に、新生児は自分で不調を訴えられないため、わずかな変化に気づけるように日頃からよく観察することが大切です。
新生児肺炎の検査・診断
新生児肺炎の診断には、胸部レントゲン検査、血液検査、細菌検査、ウイルス検査が用いられます。
胸部レントゲン検査では肺の炎症や異常を確認し、血液検査では炎症の程度や全身の酸素の状態を評価します。
細菌検査では血液や尿、便などを調べ、原因となる病原体を特定します。また、ウイルス感染症が疑われた場合は、尿や便、髄液、咽頭ぬぐい液を採取してウイルス分離と呼ばれる検査を行い、ウイルスの種類を調べます。
新生児肺炎の治療
新生児肺炎の治療方法は、原因となる病原体に応じて異なりますが、一般的に敗血症(はいけつしょう)とみなして治療していきます。
敗血症とは、細菌やウイルスなどの病原体が血液に入り込み、全身に炎症を引き起こした重篤な状態のことを指します。
細菌性肺炎の場合は抗菌薬の投与が主な治療法となります。ウイルス性肺炎の場合は、対症療法が中心となり、必要に応じて抗ウイルス薬が投与されます。
原因となる病原体に対する治療の他に、重度の呼吸障害がある場合には、酸素投与や人工呼吸器の使用が検討されます。循環動態の異常があれば、輸液や輸血、血圧を上げる薬剤の投与などが行われます。
新生児は自己治癒力が低いため、病気の進行が早く重症化しやすいとされています。早期に治療を開始することが、赤ちゃんの回復にとって非常に重要です。
新生児肺炎になりやすい人・予防の方法
新生児肺炎にかかりやすい赤ちゃんとして、早産児や低出生体重児、先天性心疾患や免疫不全症を持つ新生児が挙げられます。
また、母親が妊娠中に感染症にかかっていた場合、胎盤や産道を介して赤ちゃんが感染し、新生児肺炎を発症するリスクが高まるとされています。
予防のためには、妊婦健診を定期的に受け、感染症の有無を確認することが大切です。
GBSを保菌している妊婦には、予防的に分娩前に抗菌薬を投与することで、分娩時の赤ちゃんへの感染リスクを低減できます。
また、新生児は免疫力が低いため、周囲の人々が手洗いやマスク着用などの感染予防策を徹底することも重要です。
母乳育児は新生児の免疫力を高めるため、有効な予防策の一つです。母乳には抗体や免疫成分が含まれており、感染症のリスクを下げる働きがあります。
特に、初乳にはIgAなどの豊富な免疫物質が含まれているため、できるだけ早期に初乳を与えることが推奨されます。
参考文献




