

監修医師:
五藤 良将(医師)
乾酪性上顎洞炎の概要
乾酪性上顎洞炎(かんらくせいじょうがくどうえん)は、副鼻腔(鼻の周囲にある空洞)のなかで最も大きい上顎洞に、真菌が感染して炎症が起こる病態です。
副鼻腔真菌症の一つの症状として見られることがあります。
乾酪性上顎洞炎の特徴は、上顎洞に乾酪性(チーズ状)の物質が溜まることです。
乾酪性上顎洞炎は、アスペルギルスなどの真菌の感染が主な原因として起こります。
特に、糖尿病やがん治療を受けている人、免疫抑制剤を使用している人など、免疫力が低下している場合に感染しやすくなります。
症状としては、粘性があり、悪臭のする鼻水が出ることが一般的です。
病状が悪化すると、鼻や目、歯の周りに痛みが生じることがあります。
診断は、画像検査、培養検査、病理検査などによっておこなわれます。
これらの検査によって、上顎洞に乾酪性の物質が溜まっている様子や真菌の有無を確認します。
治療法としては上顎洞の洗浄がおこなわれ、上顎洞に溜まった乾酪性の物質を取り除き、炎症を抑えることを目指します。
洗浄で症状が改善しない場合は、内視鏡を使用した手術で病巣を取り除く場合もあります。
乾酪性上顎洞炎は放置すると周囲の組織に炎症が広がったり、症状が慢性化したりすることがあるため、疑われる症状が見られたら早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

乾酪性上顎洞炎の原因
乾酪性上顎洞炎は、主にアスペルギルス、ムコール、カンジダなどの真菌に感染することが原因で発症します。
通常、真菌が体内に侵入しても、免疫細胞である白血球などにより排除されます。
しかし、免疫力が低下している状態では、真菌を十分に排除することができず、感染しやすくなります。
特に、糖尿病患者、がん治療を受けている人、ステロイド薬や免疫抑制剤を使用している人などは、免疫力が低下している状態が持続するため、真菌感染のリスクが高まります。
このような条件が合わさって真菌に感染し、上顎洞内で真菌が繁殖することで、乾酪性上顎洞炎を発症します。
乾酪性上顎洞炎の前兆や初期症状について
乾酪性上顎洞炎の初期症状として、膿性または粘性のある、ネバネバした鼻水が出ることが挙げられます。
鼻水の量が増えることにより、鼻詰まりも生じやすくなります。
乾酪性上顎洞炎の鼻水は通常と異なり、悪臭を伴う場合があります。
症状が進行すると、頬や鼻、目、歯の周りに痛みが生じることがあります。
また、周りの組織が破壊されて鼻血を伴うケースもあります。
これらの症状が現れた場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
乾酪性上顎洞炎の検査・診断
乾酪性上顎洞炎の検査では、画像検査や培養検査、病理検査などがおこなわれます。
画像検査では、X線検査やCT検査などを使用し、上顎洞に乾酪性の物質が溜まっているかどうかを確認します。
これらの画像検査によって、病変の範囲や性状を詳細に把握できます。
確定診断には、培養検査や病理検査が必要になることがあります。
病変部位から採取した検体を培養し、染色後に顕微鏡で観察することで、真菌の有無を確認します。これらの検査によって原因となっている真菌の種類を特定します。
また、補助検査として、血液検査によって抗原の有無を確かめることもあります。
乾酪性上顎洞炎の治療
乾酪性上顎洞炎の治療は、まず上顎洞の洗浄から始めます。
洗浄によって、上顎洞に溜まった乾酪性の物質を取り除き、症状の改善を目指します。
しかし、洗浄だけで完全に治癒しない場合は手術が検討されます。
手術では上顎洞に小さな穴を開け、内視鏡を使用して病変部位を除去したり、洗浄したりします。
手術によって、病巣を徹底的に取り除くことで、高い確率で治癒が期待できます。
また、必要に応じて真菌薬の全身投与をおこなうこともあります。
真菌薬は体内に残存する可能性のある真菌を死滅させる効果があり、再発予防にも役立ちます。
乾酪性上顎洞炎になりやすい人・予防の方法
乾酪性上顎洞炎は、免疫力が低下している人が特になりやすい傾向があります。
糖尿病患者や、がん治療を受けている人、ステロイド薬や免疫抑制剤を使用している人などは、免疫力が低下しているため、乾酪性上顎洞炎を発症しやすいと考えられます。
また、風邪をひいている人や、不規則な生活習慣を送っている人も、免疫力が低下しやすいため注意が必要です。
乾酪性上顎洞炎を予防するためには、規則正しい生活を心がけ、免疫力を高めることが重要です。
日頃からバランスの取れた3食の食事を摂り、適度な運動習慣を身につけ、十分な睡眠時間を確保するようにしましょう。
特に、がん治療を受けている人や、免疫力を下げる薬剤を使用している人は、感染対策に十分注意する必要があります。
手洗いや手指消毒を徹底し、外出時にマスクを着用する、感染者に近づかないなど、日頃から感染予防に努めることが大切です。
また、副鼻腔真菌症を発症した場合は適切な治療を受け、鼻うがいなどを適切におこなうことで、乾酪性上顎洞炎の発症を防ぐ効果が期待できます。
参考文献




