監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
目次 -INDEX-
リンパ節結核の概要
リンパ節結核とは、結核菌に感染してリンパ節が障害される疾患です。
結核は一般的に「肺結核」として知られていますが、結核菌が肺以外の臓器や組織に感染する「肺外結核」もあります。肺外結核には「粟粒結核」や「髄膜結核(結核性髄膜炎)」「泌尿生殖器結核」「心膜結核(結核性心膜炎)」「腹膜結核(結核性腹膜炎)」「皮膚結核」などがあります。リンパ節結核も肺外結核の一種で、肺外結核の中でも比較的発症頻度の高い疾患です。
リンパ節結核を発症すると、リンパ節の腫れを認めます。
痛みや発熱などの症状を伴わないことが多いため、初期では発症に気がつきにくいとされています。また、病状は比較的ゆっくり、数週間から数か月かけて進むことが知られています。
リンパ節結核は首や鎖骨付近のリンパ節に発症することが多いので、腫れが大きくなると視診や触診により患部が確認できることもありますが、その他の部位のリンパ節では発見が遅れることもあります。
リンパ節は次第に大きく腫れ上がり、化膿して膿が出ることもあります。
リンパ節結核の治療では、抗結核薬を用いた化学療法が行われます。
リンパ節結核の原因
リンパ節結核の原因は結核菌による感染です。
結核菌に感染しても、すべての人が結核を発症するわけではありません。しかし、リンパ節結核は、結核菌の影響が肺以外に及ぶ「肺外結核」の中では、比較的頻度の高い病態として知られています。
また、肺結核など、他の結核症状と併発することもあります。
体内で増殖した結核菌が、リンパ管に入り、リンパ節で病巣を作ることでリンパ節結核を発症します。
結核の感染と発病
結核菌の感染経路は主に「空気感染(飛沫核感染)」であり、結核に感染している人の咳やくしゃみから出たしぶきに含まれる結核菌を吸い込んで感染します。
ただし、結核菌に感染していても必ずしもすべての人が発症するわけではありません。健康な人の多くは感染していても発症せず、新たに別の人へ結核菌を感染させることもないとされています。
感染者が小児や高齢者の場合、あるいは健康な人であっても免疫力の低下があった場合に、感染していた結核菌が体内で増殖し発症に至ります。
結核は世界中で感染が確認されており、日本でも明治以降人口が増加したことで蔓延し「国民病」と呼ばれた時代もありました。その後は「結核予防法」が策定され、結核予防のための対策が講じられたことから感染者数は激減しました。しかし、現代でも感染や発症は報告のある疾患です。
リンパ節結核の前兆や初期症状について
リンパ節結核の前兆は、結核菌への感染です。
ただし、結核菌に感染していても発症しない人や、発症するまでの潜伏期間があることから、感染したことを前兆として知るのは難しい場合もあります。
リンパ節結核の初期症状は、リンパ節の腫れです。
症例としてもっとも多く見られる首や鎖骨付近のリンパ節であれば、腫れを確認することも比較的容易です。しかし、体表付近にないリンパ節(臓器など)であれば、初期の腫れを確認するのは難しいケースもあります。
リンパ節結核の症状は、多くの場合、数週間から数か月かけてゆっくりと進むことが知られています。
症状が進むと腫れたリンパ節は化膿し、押すと痛みを伴ったり、リンパ節を覆う皮膚が破れて膿が出たりすることもあります。
リンパ節結核の検査・診断
リンパ節結核が疑われる場合には、結核菌に感染していることを確認するための検査と、リンパ節が結核菌に侵されているかを確認するための検査、他の疾患と鑑別するための検査がおこなわれます。
結核菌の感染を確認するためには、痰などの検体から結核菌の有無を確認する検査や、「ツベルクリン反応検査」などがおこなわれます。
ツベルクリン反応検査では、結核菌が反応する薬剤を注射で投与します。結核菌に感染していると、注射部位に赤みや腫れなどのアレルギー反応が確認されます。
一方、リンパ節が結核菌に侵されているかを調べるためには、腫れているリンパ節を一部切除して顕微鏡で詳しく調べる「リンパ節生検」がおこなわれます。
リンパ節結核の症状は他の疾患と区別がつきにくいケースもあります。そのため、鑑別のためにMRI検査などの画像検査がおこなわれることもあります。
リンパ節結核の治療
リンパ節結核の発症を認める場合には、複数の抗結核薬を併用した化学療法がおこなわれます。
一般的に、治療は6ヶ月以上に渡っておこなう必要があります。標準的な治療として、最初の2ヶ月に抗結核薬の「イソニアジド」に加え「リファンピシン」「ピラジナミド」「ストレプトマイシン」もしくは「エタンブトール」の4種類の薬剤で治療を行います。その後4ヶ月間は、リファンピシンとイソニアジドの2種類か、リファンピシン、イソニアジド、エタンブトールの3種類の薬剤で治療をおこないます。
リンパ節結核になりやすい人・予防の方法
リンパ節結核になりやすい人は、結核菌に感染している人です。したがって、結核菌への感染対策をすることは、リンパ節結核の予防につながります。
手洗いやうがいの励行、人混みでのマスクの着用を心がけることは感染対策として有効とされています。高齢者や小児、免疫抑制薬等で治療中の人は特に入念に感染対策を心がけ、結核患者との接触は避けるほうが賢明です。
また、万一結核菌に感染しても、必ずしもすべての人に発症があるわけではありません。
しかし、健康であっても、生活習慣が乱れることで発症リスクが高まる可能性はあります。生活習慣を整え、免疫力の維持・向上に努めましょう。適度な運動や規則正しい食生活を心がけ、十分に睡眠をとって体を休めたり、シャワーではなくゆっくり入浴したりすることも効果的です。
定期的に健康診断を受けることで結核の早期発見と早期治療が望めます。健康な成人であっても、年に1度は健康診断を受けるようにしましょう。学校や職場で健診が行われない場合には、居住する自治体で実施される健診等を確認しましょう。
このほか、結核の発病を予防するための方法として、BCGワクチンがあります。特に乳幼児期にBCGワクチン接種を終えた場合には、結核に対して高い発病予防効果が期待できるとされています。
関連する病気
- ・結核
- 肺外結核
- 皮膚結核
- 粟状結核
- 髄膜結核(結核性髄膜炎)
- 泌尿生殖器結核
- 心膜結核(結核性心膜炎)
- 腹膜結核(結核性腹膜炎)
参考文献