喉頭軟化症
佐伯 信一朗

監修医師
佐伯 信一朗(医師)

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兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学病院産婦人科、兵庫医科大学ささやま医療センター、千船病院などで研鑽を積む。兵庫医科大学病院産婦人科 外来医長などを経て2024年3月より英ウィメンズクリニックに勤務。医学博士。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会健康スポーツ医、母体保護法指定医。

喉頭軟化症の概要

喉頭軟化症は、新生児や乳児にみられる先天性の喉頭の異常であり、吸気時に喉頭が部分的に閉塞し、喘鳴が生じる病気です。喉頭の軟骨が未熟で軟らかいため、呼吸の際に気道が狭くなり、特徴的な音が発生します。新生児期から生後数週間の間に症状が現れ、特に生後三か月から八か月頃にピークを迎えます。その後、気道の発達に伴い、一歳から二歳までに自然治癒することが多いとされています。

喉頭軟化症の原因

喉頭軟化症の原因は、喉頭の軟骨の発育不全です。喉頭が通常よりも柔らかいため、吸気時に内側へ引き込まれ、気道が狭くなります。これは、喉頭軟化症が発症する主なメカニズムとされています。具体的には、喉頭蓋や披裂部が弱く、吸気時にこれらの構造が潰れることで気道閉塞が起こります。喉頭軟化症は単独で発症することもありますが、他の疾患と合併する場合もあります。特に、胃食道逆流症との関連が指摘されており、この疾患があると喉頭の炎症を引き起こし、症状が悪化する可能性があります。また、漏斗胸や気管軟化症などの先天的な異常を合併することもあります。

喉頭軟化症の前兆や初期症状について

喉頭軟化症の最も特徴的な症状は、吸気時に生じる吸気性喘鳴です。この喘鳴は、高音のゼーゼーやゼロゼロといった音として聞こえます。特に、仰向けで寝ているときや哺乳中、泣いているとき、興奮したときに症状が悪化することが知られています。軽症例では成長とともに症状が自然に改善しますが、重症例では呼吸困難や哺乳困難を伴うことがあり、適切な治療が必要となります。重度の喉頭軟化症では、体重増加不良、閉塞性無呼吸、低酸素血症などの合併症がみられることがあります。

喉頭軟化症の検査・診断

喉頭軟化症は、主に臨床症状喉頭ファイバースコピーによって診断されます。喉頭ファイバースコピーでは、吸気時に喉頭が内側へ潰れる様子が観察され、喉頭の形態異常が確認されます。診断の補助として、頸部X線検査では下咽頭腔の拡張を評価し、肺機能検査では吸気時のピークフロー抑制が確認されます。重症例においては、睡眠時ポリグラフ検査で無呼吸の有無を評価することもあります。また、胃食道逆流症の合併を評価するため、pHモニタリング食道造影検査が実施されることもあります。

喉頭軟化症の治療

喉頭軟化症の治療は、症状の重症度に応じて異なります。軽症例では、自然経過を観察しながら成長を待つことが基本となります。特別な治療を必要とせず、成長とともに症状が改善することが期待されます。ただし、呼吸器感染症が症状を悪化させるため、手洗いワクチン接種を徹底し、感染予防を行うことが推奨されます。体位の管理も重要であり、うつぶせ寝や横向き寝が症状の軽減に役立つ場合があります。哺乳時の工夫として、少量頻回の授乳や哺乳姿勢の調整が行われることもあります。
重症例では、呼吸管理外科的治療が検討されます。呼吸補助が必要な場合には、酸素療法や経鼻陽圧換気が用いられます。また、胃食道逆流症の治療としてプロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーを使用し、症状の悪化を防ぎます。外科的治療が必要な場合には、喉頭形成術や喉頭蓋つり上げ術などが行われます。喉頭形成術では、喉頭蓋や披裂部を切除し、気道を広げます。喉頭蓋つり上げ術では、喉頭蓋を固定し、閉塞を防ぎます。極めて重症な場合には気管切開が行われることもあります。治療後は、定期的なフォローアップが必要であり、特に発達や体重増加の評価が重要となります。

喉頭軟化症になりやすい人・予防の方法

喉頭軟化症のリスク因子には、低出生体重児や早産児、家族歴が挙げられます。予防方法としては、妊娠中の適切な栄養管理と健康管理が推奨されます。また、出生後の感染症予防も重要であり、特に呼吸器感染症に注意を払うことが望まれます。呼吸器感染が症状を悪化させるため、定期的なワクチン接種を受けることも重要です。


関連する病気

参考文献

  • 長谷川久弥. 喉頭軟化症. 小児内科 2021;53(増刊):107-109.
  • Olney DR, et al. Laryngomalacia and its treatment. Laryngoscope. 1999;109:1770-1775.
  • McClurg FL, et al. Laser laryngoplasty for laryngomalacia. Laryngoscope. 1994;104(3 Pt 1):247-252.
  • Sichel JY, et al. Management of congenital laryngeal malformations. Am J Otolaryngol. 2000;21:22-30.

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