監修医師:
渡邊 雄介(医師)
所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長
副耳の概要
副耳(ふくじ)とは、生後すぐに耳の近くや頬にイボ状の突起を認める状態です。まれな疾患ではなく、出生した赤ちゃんの1000人に15人程度にみられます。胎児期に耳が成長する過程で生じ、「耳珠」などの耳の変形を伴うこともあります。
多くの場合、片耳の前方に一つのみイボ状の突起を認めますが、両耳の前にできたり、複数できたりするケースもあります。また、大きさも大小さまざまで、ごく小さなものから大豆ほどの大きさのものもあります。
多くの場合自覚症状は伴わないものの、副耳の根本に湿疹ができることがあります。
自覚症状を認めない場合には、特別な治療は必要ありません。しかし、副耳が目立つ場合には、整容面に配慮して外科的治療を行うこともあります。
副耳の原因
副耳は、胎児期に耳が成長する過程で生じます。
副耳ができる詳細な原因は明らかにされていませんが、遺伝によって生じることもあると言われています。
副耳の前兆や初期症状について
副耳では、生まれてすぐに耳の付近にイボ状の突起を認めます。通常、片耳の近くに一つのみ認めますが、両耳の前にできたり、顔や首にできたりすることもあります。また、一つではなく、複数できるケースもあります。さらに、中には突起ではなく、おへそのように凹んでいるものもあります。
副耳は通常皮膚組織のみを含み、柔らかい感触をしていますが、硬くコリコリとしている場合には、軟骨組織が含まれていることもあります。
一般的に、他に自覚症状は認めないものの、副耳の根元に湿疹ができることもあります。このほか、軽度の耳の変形を伴うケースもあります。
副耳の検査・診断
副耳は外観から観察できるため、特別な検査は行われません。生まれてすぐに耳の近くにイボ状の突起を認める場合には、副耳と診断されます。
副耳の治療
副耳では、一般的に特別な治療は必要ありません。しかし、副耳の根本に湿疹ができやすい場合があるほか、美容面に配慮して保護者が治療を希望するケースもあります。そのような場合には、外科的な治療が考慮されます。
副耳の外科的治療には、「結紮術(けっさつじゅつ)」と「切除術」があります。
結紮術
副耳が小さい場合や軟骨組織を含まない場合には結紮術(けっさつじゅつ)が考慮されることがあります。ただし、実際には軟骨組織を含む副耳のケースが多く、現在はあまり行われていない治療方法です。
結紮術では、副耳の根元を縛り、血流を途絶えさせて1〜2週間で自然に壊死脱落するのを待ちます。結紮術は生後すぐに行うことが可能で、麻酔の必要はありません。
切除術
副耳に軟骨組織が含まれる場合には、結紮術を行ってもイボを完全に取り除くことができません。そのため、軟骨組織を含む副耳では切除術が考慮されます。
切除術には全身麻酔が必要であるため、通常1歳以降に行われます。耳の変形などの形態異常を伴う場合には、それに対する手術を同時に行うこともあります。
術後はできるだけ患部を触らないようにして、適切に消毒を行うことが重要です。
結紮術、切除術ともに術後は傷跡が残りますが、次第に目立たなくなります。
副耳になりやすい人・予防の方法
副耳は胎児期に耳の成長過程で発生するため、予防することは困難です。
なりやすい人についてもはっきりしたことは分かっていませんが、遺伝性のこともあるため、両親や祖父母などに副耳があると、生まれくる赤ちゃんにも副耳ができる可能性が高まります。ただし、遺伝とは関係なく、胎児期の成長過程で偶然発生することもあります。
生まれてすぐ耳の近くにイボ状の突起を認める場合には、医師による診断を受け適切な治療を受けましょう。
関連する病気
- 耳珠