

監修医師:
江崎 聖美(医師)
小耳症の概要
小耳症は、先天性の耳介形成異常の一つで、外耳の発育不全により耳介が小さくなる、あるいは完全に欠損する状態を指します。
外耳道の閉鎖や狭窄を伴うことが多く、しばしば伝音性難聴(音を耳の奥までうまく伝えられないために、音が聞こえにくくなる状態)を引き起こします。小耳症は、片側性または両側性に発生し、顔面の非対称性や聴力障害など、患者さんの生活に大きな影響を与える可能性があります。
小耳症の発生頻度は、日本において5,000~10,000人に1人とされています。しかし、実際にはこの発生率はもう少し高いのではないかと考えられています。
男性の右耳に多く発生し、両側性の小耳症は全体の約10%を占めます。
小耳症の原因
胎児が母親のおなかの中にいる際に、第1鰓弓と第2鰓弓という部分が癒合して耳や顎が形成されます。この過程の異常により、未発達のまま止まってしまい小耳症となります。環境、高齢出産、喫煙との関連性は認められておらず、原因が特定できないものがほとんどです。サリドマイド、葉酸拮抗剤(抗がん剤の一種)、レチノイン酸誘導体(美容製品の一種)などの一部の薬剤の関与が示唆されていますが、そのほかでは特定の薬剤や疾患の関与は知られていません。基本的には遺伝性はないとされていますが、一部に家族発生があるとされています。
小耳症の前兆や初期症状について
小耳症は基本的に出生時に診断される疾患であり、耳の形が通常よりも小さい、あるいは変形しているなどの外耳の形態異常がみられます。
耳の形によりいくつかのタイプに分類され、耳たぶとその上方の隆起のみが残存する耳垂型や、耳介の下半分が残存する耳甲介型などがあります。
小耳症においては、通常外耳道の閉鎖(耳の穴が埋まっている)、または外耳道狭窄(耳の穴が細い)を高率に伴っています。中耳の奇形を高率に伴い、内腔が狭く、耳小骨の変形を伴うことが多く、聴力の低下が生じます。
外耳道閉鎖では太鼓の大きな音などが聞こえる、外耳道狭窄では大きな声で話せばある程度聞こえるなど、全く聞こえていないわけではありません。
小耳症が片方だけで反対側の聴力が正常であれば補聴器を使用しなくても日常生活に大きな支障を感じないことも多く、言語発達や学習能力においては何ら劣るところはないとされています。
両側小耳症で聴力障害がある場合には、骨導補聴器を利用して早くから音を入れてあげることが重要です。適切に音が入らないと言語発達や学習能力の遅れにつながるとされています。
また、平衡感覚を司る内耳は比較的正常に近い状態が維持されているため、バランス感覚に影響することは稀です。
小児科で全身的な評価や他の合併症の有無を確認したり、耳鼻咽喉科で聴力の評価や治療を行ったり、形成外科で耳介の形態を評価し再建手術を計画したりと、色々な科が協力して評価や治療を行うため、これらの科を受診する必要があります。
小耳症の検査・診断
生後早期に行う聴力検査としては、聴性脳幹反応検査(ABR)が代表的です。睡眠時に音を入れて、脳波の変化を調べる検査です。どちらかの耳で音を拾っていれば、聞こえているということがわかります。極めて正確な検査ではなく、あくまで指標となります。成長によって聴力が下がるということはあまりないので毎年必要というわけではありません。聞き返すことが増えたり変化がある場合は、中耳炎などにより聴力低下が起きている可能性もあるため耳鼻咽喉科を受診してください。
小耳症の治療
治療に関しては形成外科と耳鼻咽喉科が協力しながら行います。
小耳症の問題点は機能面と整容面に分けられます。
機能面では眼鏡やマスクがかけられないこと、聴力障害を伴うことがあります。
整容面はいわゆる見た目の問題で、反対側と比べても違和感のない耳を作ることを目標として耳の形をつくる手術は形成外科がメインで行います。
標準的な治療法は本人の肋軟骨を用いた耳介形成術です。手術時期は中学生以降が望ましいとされています。20歳以降は肋軟骨が徐々に硬く脆くなっていくため、綺麗な耳の輪郭を作るのが困難になり、それまでに手術することが望ましいとされています。
現在では肋軟骨移植術と耳介挙上術の2回の手術で耳介形成を行うのが主流です。1回目の手術は肋軟骨を使って耳のかたちの基礎となる枠組みを作る手術を行います。この枠組みを側頭部の皮膚の下に埋め込みます。この時点では耳は側頭部にはりついたままの状態です。半年程度間を空けて、完全に瘢痕が成熟するのを待って2回目の手術を行います。2回目は、側頭部にはりついている耳を起こす手術を行います。作った耳を前方に持ち上げて耳の後ろに皮膚を移植します。眼鏡をかけたりマスクをかけたりする、耳の後ろの溝ができます。
ティッシュ・エキスパンダーを用いて2〜3回の手術で行う方法もあります。
耳のタイプやもみあげ、生え際の状態や手術時の年齢などにより術式が異なります。
軽度の耳介低形成の場合には、対側からの耳甲介軟骨移植や局所皮弁による耳介形成を行うこともあります。
肋軟骨移植以外の治療として海外では人工物であるMedporを利用した耳介形成術も行われています。感染や人工物が飛び出してくるなどのトラブルも多いため日本では認可されていません。肋軟骨移植が困難な症例では義耳の装着が行われることもあります。
聴力改善のために外耳道や鼓室を形成する手術が施行されることもありますが、その効果に関しては賛否両論があります。近年では、埋め込み型骨導補聴器や人工中耳などの手術が行われるようになっています。
小耳症になりやすい人・予防の方法
男性の方が女性よりも多いとされています。原因の項で述べたように、一部の関連の薬剤が示唆されているほか、最近の論文では単独発生の小耳症に関しては出生体重が低いこと、奇形の家族歴(特に小耳症)、母親の抗生物質、ベンゾジアゼピン、非ステロイド性抗炎症薬、プロゲステロン、漢方薬の摂取や母親の糖尿病(妊娠していない時に発症したもの)、上気道感染症、放射線被曝により、子の小耳症のリスクが増加するとの報告もあります。
小耳症は単独で生じるというよりも第1、第2鰓弓症候群の一症状であり、程度の違いはあるものの、下顎骨や頬部の軟部組織の低形成により顔貌の左右差がみられるhemifacial microsomia(片側顔面矮小症)や顔面神経麻痺、巨口症などを合併することがあります。
小耳症単独の場合はhemifacial microsomiaの軽症例とされています。
また、Treacher-Collins症候群やoculo-auriculo-vertebral spectrum(Goldenhar症候群)などの先天異常症候群の一部症状としても現れることがあります。比較的頻度の高い他部位の合併症としては、心疾患、口唇裂、口蓋裂、四肢異形成、脊椎異形成などが挙げられます。精神発達の遅れを伴うことは稀です。
関連する病気
- 外耳道閉鎖症
- 耳下腺
- ワイアー・ワイアー症候群
- ヴァン・デ・ヴェレ症候群
- 染色体異常
- 中耳疾患
参考文献
- 日本形成外科学会
- 札幌医科大学 形成外科
- 形成外科治療手術手技全書Ⅳー先天異常 克誠堂出版
- Risk Factors of Isolated Microtia: A Systematic Review and Meta-Analysis.Plast Reconstr Surg.2023;151(4):651e-663e.




