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咽喉頭異常感症
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

咽喉頭異常感症の概要

咽喉頭異常感症(いんこうとういじょうかんしょう)は、喉や咽頭、さらには喉頭に異常感を感じる症状を指します。一般的には、喉に何かが詰まっている、異物があるような感覚、喉が絞めつけられる感じ、喉の違和感が続くという訴えが多く、物理的な異常がないにもかかわらず、その感覚が持続します。この症状は、「咽喉頭神経症」や「ヒステリー球」とも呼ばれることがありますが、喉自体には明らかな病変が見られないことが特徴です。
咽喉頭異常感症は、しばしばストレスや心理的な要因、生活習慣の乱れが関係していることが多いとされています。通常、病的な状態とは異なり、命にかかわることはほとんどありませんが、患者にとっては不快であり、精神的な苦痛を伴うこともあります。また、症状が長引くと食事や会話に支障をきたすことがあり、QOL(生活の質)が低下することがあります。

咽喉頭異常感症の原因

咽喉頭異常感症の原因は一つではなく、複数の要因が絡み合っていると考えられています。以下に、主な原因をいくつか紹介します。

1. 精神的・心理的ストレス

咽喉頭異常感症の最も一般的な原因は、精神的・心理的なストレスです。過度のストレスや不安が、喉や咽頭周辺の筋肉を緊張させ、異物感を感じることがあります。特に、緊張が強くなると、喉の筋肉が収縮し、喉に何かが詰まっているような感覚が現れます。

2. 胃食道逆流症(GERD)

胃酸が逆流して喉頭や咽頭に到達し、喉の粘膜を刺激することが原因で、喉の違和感が生じることがあります。胃食道逆流症は、胸焼けやげっぷを伴うことが多く、これが繰り返されることで咽喉頭異常感症が引き起こされることがあります。

3. 筋緊張性の問題

ストレスや不安が原因で、首や喉周辺の筋肉が緊張し続けることで、喉の異常感が引き起こされることがあります。この状態は、筋緊張性の喉頭異常感と呼ばれ、喉の筋肉の過剰な収縮が原因です。

4. 喉の炎症や感染症

軽度の喉の炎症や、風邪などのウイルス感染によっても喉の違和感が生じることがあります。これらは一時的なものであり、感染症が治るとともに症状も消えることが一般的ですが、慢性的な炎症が続くと咽喉頭異常感が長引くことがあります。

5. アレルギー

花粉ハウスダストなどのアレルギー反応も、喉の粘膜を刺激し、異物感を引き起こすことがあります。特にアレルギー症状がひどくなる季節や、アレルギー物質が多い環境では、症状が悪化することがあります。

6. その他の原因

薬の副作用や甲状腺の異常、呼吸器系の病気が原因となることもあります。また、口腔内の乾燥(ドライマウス)や喫煙、アルコールの摂取も、喉に異常感を感じる原因の一つとなります。

咽喉頭異常感症の前兆や初期症状について

咽喉頭異常感症の初期症状は多岐にわたりますが、以下のような前兆や初期症状が現れることがあります。

1. 喉の詰まり感

咽喉頭異常感症の初期症状として、最も一般的なのは「喉に何かが詰まっているような感覚」です。実際に何かがあるわけではありませんが、喉に異物があるかのように感じることがあります。この感覚は特に、食事や飲み込みの動作を行う際に強く感じることが多いです。

2. 喉の絞めつけ感

喉が何かに絞めつけられているような感覚も、咽喉頭異常感症の特徴です。この感覚は、常に感じるわけではなく、ストレスや緊張が強まったときに強くなることがあります。

3. 乾燥感

喉や咽頭に乾燥感を感じることも、咽喉頭異常感症の初期症状として現れることがあります。特に、口呼吸や過度の喫煙、アルコール摂取が原因となっている場合には、喉の乾燥感が強くなります。

4. 飲み込みにくさ

食べ物や飲み物を飲み込む際に、何かが引っかかっているような感じがすることがあります。これは、喉頭や咽頭の筋肉が緊張しているために起こる現象で、喉に異常感を覚えるきっかけとなることがあります。

5. 軽い痛みや違和感

咽喉頭異常感症では、軽い痛みや不快感を感じることもあります。これは、喉の粘膜が過敏になっていることや、喉の筋肉が緊張していることが原因です。この痛みや違和感は、一時的であることが多いですが、症状が長引く場合には原因の特定が必要です。

咽喉頭異常感症の検査・診断

咽喉頭異常感症の診断は、症状を詳しく評価し、他の病気を除外することによって行われます。以下は、一般的に行われる検査や診断方法です。

1. 問診

医師はまず、患者の症状や生活環境、ストレスの有無について詳しく聞き取ります。特に、最近の生活習慣や食事、睡眠状態、職場や家庭でのストレスのレベルなどが重要な情報となります。これにより、精神的な要因や生活習慣が症状に影響しているかどうかを確認します。

2. 喉頭鏡検査

喉頭鏡を用いて、喉や咽頭の内部を直接観察することで、物理的な異常がないかを確認します。この検査では、腫瘍や炎症、ポリープの有無などを確認し、病変がないことを確かめます。

3. 胃食道逆流症の検査

胃酸の逆流が原因で咽喉頭異常感が引き起こされている可能性がある場合、胃食道逆流症の検査が行われることがあります。これは、内視鏡検査pHモニタリングによって胃酸の逆流を確認する方法です。

4. 血液検査

甲状腺機能の異常やアレルギーが原因となっている場合、血液検査によってホルモンのレベルアレルギー反応を調べることがあります。これにより、甲状腺の異常やアレルギー性の原因を特定します。

5. 精神的評価

精神的な要因が強く関与している場合、心理的な評価やカウンセリングが行われることがあります。精神科医や心理カウンセラーによる評価を通じて、ストレスや不安が症状にどのように影響しているかを確認します。

咽喉頭異常感症の治療

咽喉頭異常感症の治療は、原因や症状の程度に応じて異なります。以下は、一般的な治療法です。

1. ストレス管理とリラクゼーション

咽喉頭異常感症の多くは、ストレスや不安が原因となっているため、リラクゼーションストレス管理が非常に効果的です。ヨガや瞑想、深呼吸法などのリラクゼーション法を取り入れることで、喉の緊張が和らぎ、症状が軽減されることがあります。また、ストレス源を特定し、それに対処することも重要です。

2. 食事療法と生活習慣の改善

胃食道逆流症が原因の場合、食事療法が有効です。脂っこい食べ物や刺激物、アルコールを避け、消化の良い食事を心がけることが大切です。また、寝る前に食事を摂ることを控えることも、逆流を防ぐ効果があります。

3. 薬物療法

場合によっては、抗不安薬抗うつ薬が処方されることがあります。これらの薬は、ストレスや不安を和らげ、喉の緊張を軽減する効果があります。また、胃食道逆流症に対しては、胃酸分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカー)が使用されることがあります。

4. カウンセリング

心理的な要因が強く関与している場合、カウンセリング認知行動療法(CBT)が有効です。専門のカウンセラーや精神科医のサポートを受けながら、自分のストレスや感情に対処する方法を学ぶことが、症状の改善につながります。

咽喉頭異常感症になりやすい人・予防の方法

咽喉頭異常感症になりやすい人

  • ストレスを感じやすい人: 仕事や家庭生活でのストレスが多い人や、不安感を抱えやすい人は、咽喉頭異常感症になりやすい傾向があります。
  • 過去に喉の病気を経験した人: 喉の炎症や感染症、アレルギーなどを経験した人は、咽喉頭異常感症を発症しやすいです。
  • 胃酸逆流症を持つ人: 胃酸逆流が頻繁に起こる人は、喉の粘膜が刺激されやすく、異常感を感じることが多くなります。
  • 緊張しやすい性格の人: 緊張しやすい性格や完璧主義の人は、喉の筋肉が過度に緊張しやすく、咽喉頭異常感症のリスクが高くなります。

予防の方法

  • ストレス管理
    日常生活でのストレスをうまく管理することが、咽喉頭異常感症の予防につながります。定期的にリラクゼーションを取り入れ、ストレスが溜まらないように心がけましょう。
  • 適切な生活習慣
    バランスの取れた食事と規則正しい生活を送ることが、咽喉頭異常感症の予防に効果的です。特に、寝る前に食事を控え、胃酸の逆流を防ぐようにしましょう。
  • 喫煙や飲酒を控える
    喫煙過度の飲酒は、喉の粘膜に刺激を与えるため、これらの習慣を控えることで、咽喉頭異常感症の発症リスクを低減することができます。
  • 定期的な運動
    適度な運動を行うことで、ストレスを解消し、精神的な健康を保つことができます。特に、有酸素運動やヨガなどのリラクゼーションを伴う運動が効果的です。

咽喉頭異常感症は、命に関わる病気ではないものの、患者にとっては非常に不快な症状です。適切な治療生活習慣の改善を行うことで、症状を和らげ、日常生活を快適に過ごすことが可能です。

関連する病気

  • 逆流性食道炎(GERD)
  • 咽喉頭神経症
  • 甲状腺疾患(甲状腺腫)

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