喉頭炎
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

喉頭炎の概要

喉頭炎(こうとうえん)は、喉頭と呼ばれる声帯が存在する部分が炎症を起こす病気です。喉頭は、声を出す役割を果たしているだけでなく、気道を守る重要な役割も持っています。喉頭が炎症を起こすと、声がかすれたり、声を出しにくくなったり、さらには呼吸困難を引き起こすこともあります。多くの場合、喉頭炎は一時的で数週間以内に回復しますが、場合によっては慢性的に症状が続くことがあります。
喉頭炎の原因はさまざまで、風邪などのウイルス感染、声の酷使、アレルギー、喫煙、胃酸逆流(逆流性食道炎)などが主な要因として挙げられます。早期の治療や生活習慣の見直しによって多くのケースは改善しますが、長期にわたる症状が見られる場合には、医師の診察が必要です。

喉頭炎の原因

喉頭炎の原因はさまざまで、感染性のものから非感染性のものまであります。以下は、喉頭炎を引き起こす主な原因です。

1. ウイルス感染

最も一般的な原因は、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染です。風邪ウイルスやインフルエンザウイルスが喉頭に感染し、炎症を引き起こすことで喉頭炎が発症します。これは急性喉頭炎と呼ばれ、風邪や他の呼吸器感染症に伴って一時的に起こることが多いです。

2. 声の酷使

声を長時間使い続けたり、大声を出しすぎると、喉頭や声帯に負担がかかり、喉頭炎を引き起こすことがあります。特に、歌手、教師、講演者など、職業的に声を使うことが多い人に見られる傾向があります。このタイプの喉頭炎は、声の酷使による「声帯疲労」とも呼ばれます。

3. 喫煙

喫煙は、喉頭に対する大きな刺激の一つです。タバコの煙は、喉頭の粘膜を直接刺激し、炎症を引き起こす原因となります。また、喫煙者は喉頭癌のリスクも高く、慢性的な喉頭炎を引き起こすことがあります。

4. 胃酸逆流(逆流性食道炎)

胃酸が食道を逆流し、喉頭に到達すると、喉頭の粘膜を刺激して炎症を引き起こすことがあります。これを「胃食道逆流症による喉頭炎」と呼び、特に就寝中に胃酸が逆流しやすい場合に発症しやすいです。

5. アレルギー

アレルギー反応も喉頭炎を引き起こすことがあります。特に、花粉やホコリ、動物の毛などに対するアレルギーが原因で喉頭が炎症を起こすことがあります。アレルギー性喉頭炎は、特定の季節や環境で症状が悪化することが特徴です。

6. 細菌感染

ウイルス感染と比べると少ないものの、細菌感染も喉頭炎の原因となることがあります。特に、扁桃炎や咽頭炎から細菌が喉頭に広がる場合に見られます。この場合、抗生物質による治療が必要となることがあります。

7. 化学的刺激物

有害な化学物質や煙、ガスなどに長時間さらされると、喉頭の粘膜が刺激を受け、喉頭炎が引き起こされることがあります。工業地帯で働く人や化学物質に頻繁に接触する職業の人は、特に注意が必要です。

喉頭炎の前兆や初期症状について

喉頭炎の症状は急性と慢性で異なることがありますが、共通する初期症状も多くあります。以下に、喉頭炎の代表的な前兆や初期症状を紹介します。

1. 声のかすれや声がれ

喉頭炎の最も一般的な症状は、声がかすれることです。声帯が炎症を起こすと、声を出すのが難しくなり、かすれ声や音が出にくくなることがあります。特に、朝起きたときや長時間話した後に症状が悪化することがあります。

2. 喉の痛み

喉頭炎の初期には、喉の痛みや違和感が現れることが多いです。特に、飲み込むときや話すときに痛みが強く感じられることがあります。この痛みは、風邪の症状と似ているため、最初は風邪と見分けがつきにくいこともあります。

3. 乾いた咳

喉頭炎では、乾いた咳が特徴的です。痰が絡まない乾いた咳が続く場合、喉頭の炎症が原因である可能性があります。特に、夜間に咳が悪化することが多く、睡眠を妨げることもあります。

4. 呼吸困難

喉頭炎が重症化すると、喉頭が腫れ、気道が狭くなることで呼吸が困難になることがあります。息苦しさやゼーゼーといった呼吸音が聞こえる場合は、緊急性があるため、早急な医療介入が必要です。

5. のどの異物感

喉に何かが詰まっているような異物感が続くことも、喉頭炎の初期症状の一つです。この感覚は、声帯の腫れや喉頭の炎症によって引き起こされ、特に食事をする際や話をする際に不快に感じることがあります。

喉頭炎の検査・診断

喉頭炎が疑われる場合、医師は以下のような方法で診断を行います。

1. 問診

医師はまず、患者の症状や病歴、喉の痛みや声のかすれ、咳などの症状について詳しく尋ねます。また、喉頭炎の原因を特定するため、喫煙習慣、職業、アレルギー歴などについても確認します。

2. 喉頭鏡検査

喉頭炎の診断において、喉頭鏡検査が重要です。医師は喉頭鏡という器具を使って、喉頭や声帯を直接観察し、炎症や腫れ、ポリープの有無を確認します。これにより、喉頭炎の重症度や原因を特定することができます。

3. 細菌培養検査

喉頭炎が細菌感染によるものである可能性がある場合、喉から分泌物を採取して細菌培養検査を行うことがあります。この検査により、原因菌を特定し、適切な抗生物質を選択することができます。

4. 画像検査

喉頭炎が慢性化していたり、腫瘍が疑われる場合、CTスキャンやMRIなどの画像検査が行われることがあります。これにより、喉頭周囲の組織やリンパ節の状態を詳しく調べることができます。

喉頭炎の治療

喉頭炎の治療は、その原因や症状の重さによって異なります。軽度の喉頭炎は、自宅でのケアや生活習慣の改善で自然に治ることが多いですが、重度の場合は医療機関での治療が必要です。

1. 自宅でのケア

  • 声を休める
    声を休めることは、喉頭炎の回復に非常に重要です。炎症がある声帯を無理に使い続けると、症状が悪化する可能性があります。できるだけ話すことを控え、声帯に負担をかけないようにしましょう。
  • 水分補給
    水分を多く摂ることで、喉の乾燥を防ぎ、炎症を緩和することができます。特に、ぬるま湯ハーブティーなどが効果的です。また、喉を潤すために加湿器を使用することもおすすめです。

2. 薬物療法

  • 抗生物質
    喉頭炎が細菌感染によるものであれば、抗生物質が処方されます。抗生物質は、細菌を殺すことで炎症を抑え、症状を改善します。ただし、ウイルス感染が原因の場合には効果がないため、必要な場合にのみ使用されます。
  • ステロイド
    重度の喉頭炎や喉頭の腫れがひどい場合には、ステロイドが処方されることがあります。ステロイドには強力な抗炎症作用があり、腫れを抑えて気道の閉塞を防ぎます。
  • 鎮咳薬や鎮痛薬
    乾いた咳が続く場合には、鎮咳薬が処方されることがあります。また、喉の痛みが強い場合には、鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)を使用して痛みを和らげることができます。

3. 手術

  • ポリープや腫瘍の切除
    慢性的な喉頭炎や声帯にポリープができている場合、手術でポリープを切除することが必要になることがあります。特に、喉頭癌のリスクがある場合には、早期の治療が重要です。

喉頭炎になりやすい人・予防の方法

喉頭炎になりやすい人

喉頭炎になりやすい人には、いくつかの特徴があります。

  • 声をよく使う人: 歌手や教師、講師など、日常的に声を酷使する職業の人は、喉頭炎にかかりやすいです。
  • 喫煙者: 喫煙は喉頭や声帯に対して強い刺激を与え、喉頭炎のリスクを高めます。
  • アレルギー体質の人: 花粉やホコリ、ペットの毛などに対するアレルギーを持つ人は、喉頭炎を引き起こすリスクが高まります。
  • 逆流性食道炎の患者: 胃酸逆流が原因で喉頭炎を発症しやすいです。

予防の方法

喉頭炎の予防には、日常生活でのケアが重要です。以下に、喉頭炎を予防するためのポイントをいくつか紹介します。

  • 声の酷使を避ける
    長時間にわたって大声を出したり、無理に声を使い続けることを避けましょう。特に、職業的に声を使う人は、適度に声を休めることが重要です。
  • 禁煙・節酒
    喫煙や過度の飲酒は、喉頭や声帯に対する強い刺激となるため、喉頭炎を予防するためには禁煙や節酒を心がけることが大切です。
  • 加湿器の使用
    乾燥した空気は喉頭の粘膜に刺激を与えるため、室内を適度に加湿することで喉を保護することができます。特に冬季やエアコンを使用する際には、加湿器を使用することをおすすめします。
  • 胃酸逆流の管理
    逆流性食道炎の人は、食事後すぐに横にならない食事内容を見直すなどの対策を取り、胃酸の逆流を防ぐことが喉頭炎の予防につながります。
  • アレルギー対策
    アレルギー性喉頭炎を予防するためには、アレルゲンとの接触を避けることが重要です。アレルギー薬の使用や、花粉の多い季節にはマスクを着用するなどの対策を行いましょう。

これらの予防策を実践することで、喉頭炎の発症リスクを減らし、喉の健康を保つことができます。


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