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急性扁桃炎
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

急性扁桃炎の概要

急性扁桃炎は、喉の奥にある扁桃腺が細菌やウイルスによって感染し、炎症を引き起こす病気です。扁桃腺は体内に侵入してくる病原体に対して免疫機能を働かせる重要な役割を持っていますが、感染を受けると腫れたり、痛みを感じたりすることがあります。急性扁桃炎は、特に子供や若年層に多く見られる病気で、急性期には喉の痛みや発熱、飲み込みづらさなどが主な症状として現れます。
扁桃炎は軽度の場合は自然に回復することが多いですが、症状がひどくなると治療が必要となり、適切な対応を取らないと慢性化したり、さらに合併症を引き起こす可能性もあります。
この記事では、急性扁桃炎の原因、症状、診断方法、治療法、そして予防策について詳しく説明します。

急性扁桃炎の原因

急性扁桃炎の主な原因は、ウイルスや細菌による感染です。
扁桃腺は口や鼻から侵入する病原体に対して最初に反応する免疫組織の一つであり、ここに病原体が付着すると炎症が発生します。
以下に、急性扁桃炎の主な原因を示します。

1.ウイルス感染

急性扁桃炎の多くはウイルス感染によって引き起こされます。風邪やインフルエンザを引き起こすウイルス(ライノウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルスなど)が扁桃腺に感染し、炎症を引き起こします。ウイルス性扁桃炎は、発熱や喉の痛みなどを伴いますが、軽度の場合は自然に回復することが多いです。

2. 細菌感染

急性扁桃炎の一部は細菌感染によるもので、最も一般的な原因菌は溶連菌(A群β溶血性連鎖球菌)です。溶連菌による扁桃炎は「溶連菌性扁桃炎」とも呼ばれ、強い喉の痛みや高熱が特徴的です。また、リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症を引き起こすリスクがあります。

3. 免疫の低下

免疫機能が低下していると、ウイルスや細菌に対する抵抗力が弱まり、急性扁桃炎が発症しやすくなります。AIDSや免疫抑制剤投与中だけでなく、過労やストレス、睡眠不足、栄養不足なども免疫機能を低下させる要因です。

急性扁桃炎の前兆や初期症状について

急性扁桃炎の症状は、感染の進行に伴って現れます。症状は軽度から重度までさまざまであり、早期に気づくことで迅速な治療が可能です。
以下に、急性扁桃炎の主な前兆や初期症状を示します。

  • 喉の痛み
    急性扁桃炎の最も典型的な症状は、喉の痛みです。喉の奥にある扁桃腺が炎症を起こすことで、飲み込みづらさや喉の違和感を感じることが多いです。痛みは食べ物や飲み物を飲み込む際に特に強く感じられます。
  • 発熱
    急性扁桃炎にかかると、発熱が起こることが一般的です。ウイルス性の扁桃炎では軽い発熱から始まることが多く、細菌性の扁桃炎(特に溶連菌感染)の場合は、39度を超える高熱を伴うことがあります。
  • 扁桃腺の腫れ
    扁桃腺が炎症を起こすと、喉の奥にある扁桃腺が赤く腫れあがることがあります。細菌感染による場合、扁桃腺の表面に白い膿(膿栓)が付着していることがあり、これは感染の重症度を示すサインです。
  • 頭痛や倦怠感
    急性扁桃炎の発症に伴って、全身的な症状として頭痛や倦怠感を感じることがよくあります。これは体が感染と戦っていることを示す症状であり、体力が低下しているときに現れやすいです。
  • 首のリンパ節の腫れ
    扁桃炎が進行すると、首のリンパ節が腫れ、触れると痛みを感じることがあります。これは、免疫系が感染に対して反応していることを示すサインです。

急性扁桃炎の検査・診断

急性扁桃炎の診断は、患者の症状や扁桃腺の状態を基に行われます。特に細菌性の扁桃炎が疑われる場合、迅速な診断と適切な治療が必要です。
以下に、急性扁桃炎の主な検査・診断方法を示します。

医師による問診視診

まず、医師は患者の喉を直接確認するために視診を行います。
喉の奥が赤く腫れているか、扁桃腺に膿栓があるかなどを確認し、急性扁桃炎の疑いがあるかを判断します。

溶連菌迅速検査

細菌性扁桃炎、特に溶連菌感染が疑われる場合、迅速検査が行われます。
この検査は、喉の粘膜を綿棒で拭き取り、そのサンプルを使って溶連菌が存在するかどうかを数分で判定できる方法です。陽性の場合は抗生物質治療が必要となる事があります。

血液検査

急性扁桃炎が進行している場合、血液検査を行うことで炎症の程度などを確認する事があります。白血球数やC反応性たんぱく(CRP)の上昇が見られれば、体内で炎症が進行していることを示します。

咽頭培養検査

細菌感染の原因を特定するために、喉の分泌物を採取して培養し、どの細菌が感染の原因となっているかを調べる咽頭培養検査が行われることがあります。特に、抗生物質に対する耐性菌が疑われる場合や、再発を繰り返す場合に有効です。

急性扁桃炎の治療

急性扁桃炎の治療は、原因となる感染がウイルス性か細菌性かによって異なります。治療の目的は症状を和らげ、感染を根治することです。
以下に、急性扁桃炎の主な治療法を示します。

ウイルス性扁桃炎の治療

ウイルスが原因の急性扁桃炎の場合、特定の抗ウイルス薬はなく、症状を緩和するための対症療法が中心となります。十分な休養と水分補給が必要であり、症状が自然に改善するのを待ちます。
喉の痛みや発熱に対しては、解熱鎮痛薬(例:アセトアミノフェンやイブプロフェン)を使用することで症状を緩和することができます。

細菌性扁桃炎の治療

  • 抗生物質治療
    細菌性扁桃炎、特に溶連菌感染による場合は、抗生物質が必要な事があります。ペニシリン系の抗生物質(アモキシシリンなど)が一般的に使用され、適切な期間服用することが重要です。途中で服薬をやめると、症状が再発するリスクや耐性菌が発生する可能性があるため、医師の指示に従って服薬を継続しましょう。
  • 鎮痛剤や解熱剤
    抗生物質と併用して、痛みや発熱を抑えるために鎮痛剤や解熱剤が処方されることがあります。これにより、患者の症状が早期に改善します。

扁桃摘出手術

慢性的に扁桃炎を繰り返す場合や、症状が非常に重篤な場合には、扁桃腺を手術で摘出することが選択肢となります。扁桃摘出手術は、再発を防ぐ効果があり、特に小児においては有効な治療法とされています。

急性扁桃炎になりやすい人・予防の方法

急性扁桃炎になりやすい人

以下のような人々は急性扁桃炎を発症しやすいとされています。

  • 免疫が低下している人
    AIDSや免疫抑制剤内服中の方は免疫機能が低下し、感染にかかりやすくなります。
  • 子供や若年者
    子供や若年層は免疫システムが完全に発達していないため、急性扁桃炎にかかりやすいです。

予防の方法

急性扁桃炎を予防するためには、日常的な生活習慣の見直しが重要です。
以下に、予防のための具体的な方法を示します。

  • 規則的な生活
    バランスの取れた適量の食事、適切な運動、十分な睡眠を心がけ、体調を整えましょう。
  • 手洗い・うがいの徹底
    ウイルスや細菌に感染しないためには、外出後や食事前の手洗い、うがいを徹底することが効果的です。特に、風邪が流行している時期や、感染者が多い場所に行った後は、しっかりと対策を行いましょう。
  • 周囲の感染者との接触を避ける
    急性扁桃炎は感染症であるため、周囲に感染者がいる場合は、なるべく接触を避けることが重要です。特に、風邪やインフルエンザの流行時期には、人が多く集まる場所への外出を控えたり、マスクを着用することで感染予防を行いましょう。


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