目次 -INDEX-

松本 学

監修医師
松本 学(きだ呼吸器・リハビリクリニック)

プロフィールをもっと見る
兵庫医科大学医学部卒業 。専門は呼吸器外科・内科・呼吸器リハビリテーション科。現在は「きだ呼吸器・リハビリクリニック」院長。日本外科学会専門医。日本医師会認定産業医。

結核(肺結核)の概要

結核は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)という細菌によって引き起こされる感染症です。
主に肺に感染しますが、ほかの臓器にも影響を及ぼすことがあります。
結核は世界中で重大な公衆衛生問題となっており、日本でも依然として注意が必要な病気です。

結核は、感染者が咳やくしゃみをすることで空気中に放出された菌を吸い込むことによって伝染します。
適切な治療を受けない場合、結核は命に関わることがあります。
しかし、現代の医学では、結核に効く薬があり、早期に診断して適切な治療を行えば完治することができます。

結核(肺結核)の原因

結核菌による感染

結核は、結核菌という細菌が原因です。
この細菌は空気を介して伝染し、感染者が咳やくしゃみをすることで空気中に放出され、それをほかの人が吸い込むことで感染します。
結核菌は大変感染しやすく、免疫力が低下している人々に特に感染しやすいです。

免疫力の低下と感染リスク

結核に感染するリスクは、免疫力が低下している場合に増加します

例えば、HIV/AIDS患者さん、糖尿病患者さん、喫煙者、お酒を飲みすぎる人、栄養が足りていない人などが該当します。
また、結核は貧しい地域や人が多く住んでいる場所でより広がりやすいです。

結核(肺結核)の前兆や初期症状について

結核の初期症状は、一般的な風邪やインフルエンザと似ているため、見逃されやすいです。
以下のような症状が現れることがあります。

  • 3週間以上続く咳
  • 血の混じった痰
  • 発熱
  • 夜間の発汗
  • 体重が減る
  • 食欲がなくなる
  • だるさや疲れやすい感じ

これらの症状が見られる場合は、早期に病院を受診し、検査を受けることが重要です

結核の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、呼吸器内科です。
結核は肺に影響を及ぼす感染症であり、呼吸器内科で診断と治療が行われています。

結核(肺結核)の検査・診断

結核の診断にはいくつかの方法があります。
主な診断方法は以下の通りです。

胸部X線検査(レントゲン)

胸部X線検査は、結核の診断に最も一般的に使用される方法です。
肺の異常を確認するために胸部のX線写真を撮影します。
結核による肺の損傷や異常がX線画像に映ることで、結核の疑いを確認することができます。
さらに詳細に評価する際にはCT検査を行います。

ツベルクリン反応検査

ツベルクリン反応検査は、結核菌に対する皮膚反応を確認するための検査です。
皮膚の下に結核菌の一部であるツベルクリンを注射し、48〜72時間後にその部分の皮膚反応を観察します。
皮膚が赤く腫れる場合、結核菌に対する免疫反応があることを示します。
ただし、この検査は過去にBCGワクチンを接種した人や非結核性抗酸菌感染にも反応することがあります。

インターフェロンγ放出アッセイ(IGRA)

結核菌の感染を確認するための血液検査です。
血液を採取し、結核菌に特異的な抗原に対する免疫反応を測定します。
IGRAはBCGワクチンの影響を受けにくいため、ツベルクリン反応検査よりも正確に結核感染を確認することができます。

喀痰検査

喀痰検査は、痰(肺からの分泌物)を採取して結核菌の存在を確認する方法です。
顕微鏡で痰を観察し、結核菌が存在するかどうかを確認します。
また、痰を培養して結核菌を増やし、結核菌の種類や薬剤耐性の有無を調べることもできます。

早期に適切な検査を行うことで、結核の早期発見と治療が可能となります

結核(肺結核)の治療

結核の治療には抗結核薬を使用します。
治療期間は通常6〜9ヶ月であり、医師の指示に従って正確に薬を服用することが重要です。
主な抗結核薬には、リファンピシン(Rifampicin)、イソニアジド(Isoniazid)、ピラジナミド(Pyrazinamide)、エタンブトール(Ethambutol)などがあります。
治療中は定期的に病院でチェックを受け、副作用や治療の効果を確認します。
治療を途中でやめると、薬が効かなくなる結核(多剤耐性結核:MDR-TB)になるリスクがあるため、必ず治療を続けることが求められます

直接監視療法

結核の治療中に、医療従事者が患者さんの家を訪れて薬を服用する様子を監視する「直接監視療法」(DOTS:Directly Observed Treatment, Short-course)が推奨されることがあります。
この方法は、患者さんが薬を服用したことを視認し、副作用や治療効果を確認するためのものです。
治療の成功率を高め、薬剤耐性結核のリスクを減少させます。

結核(肺結核)になりやすい人・予防の方法

免疫力が低下している人

免疫力が低下している人は、結核に感染しやすいです。
特にHIV/AIDS患者さん、糖尿病患者さん、がん患者さん、栄養不足の人々が該当します。
また、免疫力を抑える薬を飲んでいる人もリスクが高くなります。

貧困地域や過密状態にある人

結核は、衛生状態が悪く、過密な環境に住んでいる人々の間で広がりやすいです。
貧困地域に住む人々や、ホームレスの人々、長期間拘束される施設にいる人々はリスクが高くなります。

予防接種(BCGワクチン)

結核予防のために、BCGワクチンが使用されます。
これは結核菌の感染を防ぐ効果があり、特に乳幼児期に接種されます。
日本では、定期予防接種として生後5ヶ月から8ヶ月の間に接種が推奨されています。

生活習慣の改善と感染予防

結核の予防には、免疫力を高めることが重要です。
栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理などが効果的です。
また、感染者と接触するリスクを減らすために、適切な換気やマスクの着用なども推奨されます。

薬剤耐性結核(MDR-TB)とその予防

薬剤耐性結核(MDR-TB)は、結核菌が抗結核薬に耐性を持つようになった状態を指します。
これは治療の中断や不適切な薬物使用が原因です。
MDR-TBの予防には、適切な薬物療法の継続と、治療計画に従うことが重要です。
また、新しい治療法や薬剤の研究が進められており、これによりMDR-TBの治療効果が向上することが期待されています。

参考文献

  • 日本結核病学会ガイドライン
  • 世界保健機関(WHO)結核対策ガイドライン

この記事の監修医師