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良性発作性頭位めまい症(BPPV)
渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

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1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の概要

良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、頭の動きによって誘発される回転性のめまいを特徴とする疾患です。内耳の三半規管に耳石(カルシウムの結晶)が入り込むことで発生すると考えられています。BPPVは、特に朝起き上がる時や寝返りを打つ時、頭を急に動かした時に起こりやすいです。症状は通常、1分以内に収まりますが、頭を再び動かすと再発することがあります。

BPPVは、特に中高年の女性に多く見られます。加齢に伴い耳石がもろくなり、三半規管に入り込みやすくなるためです。命に関わるような疾患ではありませんが、強い発作が続くと日常生活に大きな影響を及ぼします。そのため、適切な治療と生活習慣の見直しが必要です。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の原因

BPPVの主な原因は、内耳にある耳石が剥がれ落ち、三半規管に入り込むことです。耳石は、内耳の卵形嚢や球形嚢に存在するカルシウムの結晶で、頭の動きを感知する役割を果たしており、耳石による過剰な刺激が脳に誤った信号を送り、回転性のめまいが発生します。耳石が剥がれ落ちる原因は、加齢、頭部外傷、長時間同じ姿勢を続けることなどです。特に加齢による耳石のもろさが進行すると、耳石が剥がれやすくなります。

また、女性ホルモンの変化やカルシウム代謝の異常も耳石の剥がれやすさに影響を与えます。閉経後の女性に多く見られることから、ホルモンバランスの変化が関与している可能性もあります。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の前兆や初期症状について

BPPVの前兆は、特定の頭の動きによって引き起こされます。例えば、朝起き上がる時や寝返りを打つ時、頭を急に動かした時にめまいが発生する場合が多いです。めまいの持続時間は通常、1分以内であり、頭を再び動かすと再発する場合があります。

BPPVの特徴として、周囲がぐるぐる回るような回転性めまいであり、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。めまいの発作は、特定の頭位によって誘発され、患者さんは上を向いたり、横を向いたりする動作を避けるようになります。
長時間同じ姿勢を続けた後に生じる場合や、デスクワークや長時間の読書後に症状が現れることもあります。

これらの症状に悩まされている場合は、耳鼻咽頭科や脳神経内科を受診するのがおすすめです。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の検査・診断

問診

BPPVの診断は、主に問診と眼振の検査を行います。問診では、めまいの持続時間、発作の頻度、発作が起こるタイミングなどを詳しく聞き取ります。
眼振の検査では、患者さんの症状や発作がどの方向に頭を動かしてめまいが引き起こされるか確認します。以下で具体的に解説します。

頭位変換眼振検査

BPPVの診断には、頭位変換眼振検査(Dix-Hallpike法)という検査が用いられます。この検査では、患者さんに横になっていただき、頭を特定の方向に動かしてめまいが発生するか確認します。眼振が見られる場合、BPPVの可能性が高いです。

フレンツェル眼鏡

また、フレンツェル眼鏡(特殊な眼鏡)や赤外線CCDカメラを用いた眼振検査も行われます。フレンツェル眼鏡は、頭を動かした際に目が左右に振れる眼振が起こるかどうかを確認します。眼振が見られる場合、BPPVの可能性が高いです。一方、赤外線CCDカメラは、患者さんに特殊なゴーグルを装着して眼振を検査します。患者さんは真っ暗で何も見えないですが、医師からは眼球の運動をはっきり確認できる方法です。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の治療

BPPVの治療には、耳石置換法・薬物療法・体操の3つの治療法があります。以下で、具体的に解説します。

耳石置換法

BPPVでは、主に耳石置換法(Epley法やSemont法)と呼ばれる運動療法が用いられます。耳石置換法は、第1ステップから第5ステップまで姿勢や頭の位置を変えることで三半規管内の耳石を元の位置に戻す治療法です。

耳石置換法は、約70%の患者さんに効果があり、1回の治療で症状が改善することが多いです。治療後もめまいが再発する可能性があるため、定期的な受診が必要になります。再発を防ぐためには、急に頭を動かさないようにする、長時間同じ姿勢を続けないようにするなど、日常生活内で行える対策が有効です。

耳石置換法の手順

第1ステップ 座った状態で頸部を右に45度に傾けながら、頭部を引き上げる。その後、ベッドに寝るように頭位を移す。
第2ステップ 寝た状態で頸部を右45度に傾けた姿勢から、左45度に傾ける。(頭部は引き上げた状態を維持)
第3ステップ 左45度の状態からさらに90度左下へ傾ける。(頭部は引き上げた状態を維持)
第4ステップ 左下へ135度傾けた状態から座った状態へ戻る。
第5ステップ 座った状態で頸部を前屈する。

薬物療法

BPPVの治療には薬物療法も用いられることがあります。抗ヒスタミン薬や抗めまい薬、抗不安薬、血管拡張薬などを単独または組み合わせて処方することが多いです。頸部の外傷などで耳石置換法ができない場合や耳石置換法を希望しない場合は、薬物療法が適応になります。ただし、薬物療法はBPPVの原因を取り除く治療法ではないため、症状が一時的に緩和したとしても根本的な治療にはなりません。1〜2週間程度で治療効果が見込めない場合は耳石置換法へ移行することも検討してみましょう。

体操

BPPVの治療には、患者さん自身が行うことができる体操も有効です。耳石くずし体操(Brandt-Daroff法)は、自宅で行うことができる体操で、耳石を移動させる効果があります。座位から側方に横たわり顔を45度上方に向け、約30秒間めまいが消失するまで姿勢を維持して座位に戻ります。体操を行う際には、医師の指導を受けることが重要です。体操中にめまいが起こることがあるため、無理をせず、症状が改善しない場合は医療機関を受診することが推奨されます。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)になりやすい人

BPPVは、特に中高年の女性に多く見られます。加齢に伴い耳石がもろくなり、三半規管に入り込みやすくなるためです。閉経後の女性に多く見られることから、ホルモンの変化やカルシウム代謝の変化も関係していると考えられます。また、長時間同じ姿勢を続けることや、頭を動かさずにいることもBPPVの発症リスクを高める要因となります。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の予防方法

BPPVの予防には、日常生活での注意・カルシウムの摂取・適度な運動・定期的な健康チェックが重要です。具体的な内容を以下で解説します。

日常生活での注意

日常生活では、急に頭を動かさないようにする、長時間同じ姿勢を続けないようにするのが有効です。また、ストレスや疲労を溜めないようにすることも大切です。適度な休息を取り、リラックスする時間を持つことが予防につながります。

カルシウムの摂取

耳石が剥がれやすくなる原因として、カルシウム不足が挙げられ、カルシウムを含む食品を積極的に摂取することが予防に大切です。乳製品や小魚、緑黄色野菜などをバランスよく食べることが推奨されます。また、ビタミンDの摂取はカルシウムの吸収を助けるため、日光浴やビタミンDを含む食品を摂取することが大切です。

適度な運動

BPPVの予防には、適度な運動も効果的です。頭を動かす運動やバランスを取る運動が効果的です。例えば、ヨガやストレッチ、ウォーキングなどは、耳石の剥がれを防ぎ、三半規管の機能を維持するのに役立ちます。

定期的な健康チェック

最後に、BPPVの予防には、定期的な健康チェックも重要です。特に、中高年の女性は、耳鼻咽喉科での定期的な検査を受けることが推奨されます。早期に異常を発見し、適切な対策を講じることで、BPPVの発症を防ぐことができます。


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