

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
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群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。
目次 -INDEX-
肺がん(原発性肺がん)の概要
肺がんは、肺胞や気管支の細胞ががん化して発生します。日本人のがんによる死因の第2位を占め、男女ともに罹患者数が多い深刻な病気です。肺がんは、組織型によって「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に分類されます。非小細胞肺がんには腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんがあり、腺がんが半数以上の割合を占めます。一方の小細胞肺がんは、進行が早く転移しやすい特徴があります。小細胞肺がんは早期発見が難しく、発見時にはすでに進行がんであることが多いです。治療方法の選択は、病期や組織型、異常が見られる遺伝子などに応じて標準治療が基本となり、患者さん本人の希望や全身状態、生活環境、年齢などから総合的に判断して決められます。肺がん(原発性肺がん)の原因
肺がんの最大の原因は喫煙習慣です。発症原因の70%を占めると言われており、その他に受動喫煙や食生活、放射線の被曝、薬物による影響などが挙げられます。たばこの煙には60種類以上の発がん性物質が含まれており、肺や気管支が繰り返し発がん性物質に晒されることで、細胞に遺伝子の突然変異を引き起こします。この遺伝子変異が繰り返し起こることで肺がんが発症するのです。喫煙者は非喫煙者に比べて、男性で4.4倍、女性で2.8倍肺がんになりやすいです。若年層のうちに喫煙開始しているほど肺がんリスクは高くなり、高齢になるほど発症リスクが上がって、50歳以上で発症率が急増します。喫煙以外の原因としては、慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎、アスベスト暴露による肺線維症などの呼吸器疾患、肺がんの既往歴、家族歴なども指摘されています。肺がん(原発性肺がん)の前兆や初期症状について
肺がんの初期症状に特徴的なものはありませんが、咳嗽や喀痰、血痰、発熱、倦怠感、呼吸困難などの呼吸器症状が現れます。しかし、咳や痰が長引いたり、血痰が出現したりする場合は要注意です。このような症状が見られる肺がんを肺門部(中心型)肺がんといいます。また、検診や他疾患の経過観察中に発見される無症状の肺がんを、肺野型(末梢型)肺がんと分類します。 がんが進行すると、肺野型肺がんでも胸壁や縦隔、鎖骨上窩に進行が見られ、胸痛や体重減少、呼吸困難感、上腕神経叢への進行による上肢神経痛、上大静脈症候群、反回神経麻痺による嗄声、Horner症候群などの症状が出現します。さらに進行すると脳転移が見られ、頭痛やふらつき、嘔吐などが代表的な症状です。症状の有無に関わらず、喫煙歴のある方や高齢者は定期的な健診やがん検診を受けることが推奨されます。また、原因不明の咳や痰が2週間以上続く、血痰が出る、発熱が5日以上続く場合はがんの可能性があるため要注意です。 肺がんの症状が見られる場合は、一般内科や呼吸器内科を受診することをおすすめします。肺がん(原発性肺がん)の検査・診断
肺がんを疑う場合、画像検査、生検・病理検査が行われます。それぞれの検査方法について以下で詳しく解説します。画像検査
画像検査では、胸部X線やCT検査、PET検査などで異常陰影を確認します。胸部X線検査では、肺にがんを疑う陰影がないか確認するため、胸部の全体にX線を照射します。CT検査はがんを疑う病変がないかリンパ節や胸部、その他の臓器にX線を照射する方法であり、現在では最も有力な検査方法です。がん病変の大きさや位置、転移の有無などを断面図に示して確認ができます。PET検査は、がん細胞の糖代謝を画像化することで病変部位を特定できる有用な検査です。 異常が見つかれば、肺がんが疑われる部位から細胞を採取して病理検査を行います。また、肺がんの診断後に転移の有無を調べるために、頭部MRI検査や骨シンチグラフィー、腹部超音波検査なども実施されます。気管支鏡検査・生検
気管支鏡検査では、直径3〜6mmほどの内視鏡を鼻や口から挿入し、気管支内の観察を行う検査です。超音波検査やX線透視装置などで病変の場所を確認し、がん病変が疑われる部位の組織や細胞を採取します。また、CTガイド下で針を刺して細胞や組織を採取する生検も行われます。気管支鏡が届きにくい位置にがんの病変がある場合は、別の検査と照らし合わせて総合的な診断を行うのが一般的です。検査による合併症として、肺や気管支の出血、気胸などがあります。経皮的針生検
気管支鏡が届きにくい位置にがんが疑われる病変がある場合、経皮的針生検が実施されます。部分麻酔を行って体表から細い針を刺し、超音波やX線透視装置などで病変の位置を確認しながら、細胞や組織を採取する検査方法です。気管支鏡検査と同様に、気胸や肺からの出血などの合併症を伴うリスクがあります。実施の際は検査が行えるか、医師と相談しながら進めていくとよいでしょう。胸腔鏡検査
胸部を切開し、内視鏡を胸腔内に挿入する検査方法です。肺や胸膜、リンパ節などの細胞や組織を採取し、がん細胞の有無を検査します。従来は全身麻酔をして行っていましたが、近年では局所麻酔のみで行えるようになっており、患者さんの負担が軽減できるようになっています。がん遺伝子検査
非小細胞肺がんで薬物療法を選択する際に、がん細胞の発生や増殖に起因する遺伝子がないか調べる検査です。生検で採取した組織や胸水などに含まれている遺伝子を用いて異常がないか調べます。検査する遺伝子は以下の通りです。| 検査する遺伝子 |
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PD-L1検査(PD-L1免疫染色検査)
非小細胞肺がんに対して免疫チェックポイント阻害薬の効果判定をする検査です。PD-L1というタンパク質を持っているがん細胞の割合を調べ、治療方針を検討していきます。骨シンチグラフィ
肺から骨への転移がないか調べる検査です。骨シンチグラフィの薬を静脈へ注入し、3時間後に撮影を行います。注入した薬剤が骨転移病巣へ集まり、黒く示された場所に骨転移が確認されます。腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカー検査は、がんと診断された後の経過や治療効果を見る目的で実施されます。腫瘍マーカーとはがん細胞やがん細胞に反応した細胞によって作られた特徴的な物質です。腫瘍マーカーの数値が高く出たからといって、必ずしもがんと断定されるわけではありません。そのため、がん診断の補助として実施されます。肺がん(原発性肺がん)の治療
肺がんの治療法は、手術療法、放射線治療、薬物療法の3つに分けられ、これらを複合的に実施します。がんの組織型、進行度合い、患者さんの全身状態などを考慮して決められます。手術療法
手術では、肺がんがある肺葉と周辺のリンパ節を切除するリンパ節郭清が標準です。もし、がんが2つの肺葉にまたがる場合は2つとも切除します。肺の入り口や片側の肺全体に広がっている場合は肺全摘術になる場合もあります。早期のステージ1期や2期の場合は、手術による腫瘍の切除が第一選択です。放射線治療
放射線治療では、リニアックという機械でX線を照射する外部照射法を用います。治療計画用のCTを撮影後、放射線量や照射回数・照射範囲を決めます。高齢者や合併症のある患者さんでは手術リスクが高いため、放射線治療が選択されることが多いです。薬物療法
がんが進行し、手術で取り切れない場合に実施されます。主な薬は、細胞障害性抗がん剤治療、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、血管新生阻害薬などがあり、放射線治療を併用することもあります。肺がん(原発性肺がん)になりやすい人・予防の方法
肺がんのリスク因子として最も大きいのは喫煙習慣です。現在喫煙中の人だけでなく、過去に喫煙していた人も高リスク群に含まれます。受動喫煙の影響も無視できません。また、喫煙以外の原因として、慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎、アスベスト暴露による肺線維症などの呼吸器疾患、放射線被爆の影響、大気汚染物質への曝露肺がんの既往歴、家族歴などもあります。肺がんの予防方法
予防対策として最も重要なのは禁煙です。喫煙者は一刻も早く禁煙することが大切です。同様に、受動喫煙の機会を減らすことも大切です。さらに、定期的な検診の受診も有効な予防策の一つと言えます。CT検診により、がんの早期発見が可能になり、早期治療につながります。特に、喫煙習慣がある人、よく受動喫煙してしまっている人は、検診を受けることが大切です。関連する病気
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 間質性肺炎
- アスベスト関連疾患




