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渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

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1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

突発性難聴の概要

突発性難聴とは、突如左右どちらかの耳が聞こえなくなり、耳鳴りやめまいなどの症状を起こす病気です。
働き盛りの40代から60代に起こりやすい病気の1つで、なぜ突発性難聴が起こるのかは現在もはっきりとわかっていません。
症状の特徴は、発症する前日には何も問題なく音が聞こえていたにも関わらず、朝起きたら突然周囲の音が聞こえなくなります。こうした症状は何の前触れもなく起こり、症状も人によってさまざまです。
人によってはまったく音が聞こえなかったり、音によって聞こえる音が決まったりしている場合や日常生活に支障のない症状の場合などがあり、実際に発症しないとどのような症状になるのかはわからないとされています。
もし軽い症状であれば音が聞き取れる状態ですので、突発性難聴と気付かずに放っておいてしまい、病院に行くのが遅れてしまう恐れがあります。突発性難聴は、症状がわかったときに早く病院に行けば、その分完治が早くなる病気です。もし症状に気付かないまま治療を受けるのが遅れると、その分症状がひどくなってしまいます。
突発性難聴は治療を受けないまま放っておいてしまうと、耳鳴りが一生残ってしまったり、ひどい場合には聴力を完全に失ったりしてしまうこともある病気です。早めに治療を受ければよりしっかりと回復が見込める病気のため、少しでも聴覚に異常を感じたら即座に病院へ行きましょう。
突発性難聴は耳の病気ですので、中耳炎などの耳の持病を抱えている方がなりやすい病気だと思っている方も多いかもしれません。しかし突発性難聴は、耳の病気とは無縁だった場合でも発症のリスクがある病気です。
完治するために適切なのは、発症した日に病院に行くのが適切ではありますが、発症から1週間以内には治療を受けるようにしましょう。治療後はなるべくストレスを溜めないよう心がけて、安静にしていれば症状は楽になるといわれています。
突発性難聴は正しい治療を受ければしっかり完治する病気で、完治すれば発症前と変わらず音が聞き取れるようになるので、必要以上に恐れることはありません。

突発性難聴の原因

突発性難聴の原因に関しては、現在でもはっきりとした原因は明らかになっていません。原因の一つとして考えられているのが、内耳で振動を電気信号に変換して脳に伝える有毛細胞が、何らかの原因によってダメージを受けたことで起こるともいわれています。ただ原因に関しては、あくまで有効な説の一つです。
原因はほかにも、耳の中の血流障害やウイルス感染、ストレスの蓄積などが原因としていわれています。

突発性難聴の前兆や初期症状について

突発性難聴には、前兆になる症状はほとんどありません。前日まで健康で身体の不調も感じることなく過ごしていたのに、朝目が覚めると突然耳が聞こえなくなるのが最初の症状であるからです。何の前兆もない状態から発症します

もし朝起きて、テレビの音などが聞き取りにくかったりまったく聞こえない状態になっていたりしたら、ただちに突発性難聴の症状を疑ってみましょう。

ほかに突発性難聴の初期症状には、耳が詰まった感じがしたり、音が二重に聞こえたり強い耳鳴りが起こることもあります。ひどい症状になると、めまいや吐き気などメニエール病に近い症状も発生する可能性もありますが、めまいの症状を何回も繰り返すメニエール病とは異なり何回もめまいや吐き気を繰り返す症状は起こりません。

音の聞こえにくさに関しては、まったく聞こえない状態になる場合もあったり、聞こえる音が限られていたりする場合もあるなど、症状はさまざまです。もし音が少しでも聞こえる場合、正常な耳ではと勘違いしてしまうことで、病院に行くのが遅れて症状を悪化させてしまうことがあります。

突発性難聴は、発症しても時間が経過したら症状が自然に改善するものではありませんので、少しでも音の聞こえが悪いと感じたら突発性難聴を疑いましょう。早めに治療を受ければ早期の回復が見込まれるので、少し聞こえが悪いからといって油断をせず、早めに耳鼻咽喉科に向かうようにしてください。

突発性難聴の検査・診断

突発性難聴の検査は、耳鳴りやめまいなどの症状によって異なることがあります。

突発性難聴の症状が疑われるときには、次のような検査が行われます。

問診

最初に問診を行い、発症した日の前日の行動や、日常生活や仕事などで重いストレスがかかっていなかったかなどを詳しく調べます。患者さんが元々持っている持病が突発性難聴と関係している可能性もあるので、病気歴や服用している薬、過去に耳の病気があったかなどを詳しく調べていきます。詳しく診断するためにも、症状はできる限り詳細に伝えるようにしてください。

聴力検査・ティンパノメトリー検査

問診の後は、耳鏡を使って外耳道や鼓膜の状態を医師によってチェックしてもらった後、純音聴力検査による聞こえの検査を行います。これらの検査は防音室に入ってヘッドホンをつけ、小さい音まで聞こえる状態かを確かめる検査です。聞こえの検査をして、耳の中に聴力のトラブルが発生しているかどうかを確かめます。聴力検査に続いて必要な検査が、ティンパノメトリー検査です。これらの検査は滲出性中耳炎で行う検査ですが、鼓膜の状態を確かめるために行います。空気圧を変化させながら外耳道を圧迫させて、耳全体の振動を確認する検査ですので、耳の正確な状態を知れる検査です。

MRI検査

脳の病気を見つけるために行うMRI検査も、突発性難聴の検査時に行う場合があります。
突然起こるめまいの症状のなかには、小脳と内耳の間にできる神経腫瘍が原因の場合もあります。突発性難聴だと思って治療して、なかなか回復できない場合は脳に関する病気の疑いも考えられるので、この場合はMRI検査を受けることが必要です。MRI装置がある病院は限られているので、もし検査を受けるならMRI装置のある病院を受診するようにしてください。突発性難聴だと思って検査を受けたら、実は聴神経腫瘍だったこともまれにあるので、気になった場合は受診してみましょう。

突発性難聴の治療

突発性難聴は原因がわかっていない病気のため、現在の医療では突発性難聴を治療する特効薬はありません。ですので治療の際には、それぞれの症状に合わせてさまざまな薬を使用します。
治療で主に使用する薬はステロイド剤で、なかでも経口ステロイド剤や副腎皮質ステロイド剤が多く使用されています。ほかにも血管拡張薬やビタミンB12など、いくつかの薬が有効です。
糖尿病など、基礎疾患を持つ方がステロイドを服用する場合、鼓膜の内側にステロイド剤を注入して内耳の血行を改善するステロイド鼓室内注入療法が有効です。こちらの検査は入院が必要になりますが、保険が適用されます。基礎疾患を持つ方や、従来のステロイド治療で完治できなかった場合には有効です。
症状を早めに知るためにも、病院へ行って治療を受けるようにしましょう。

突発性難聴になりやすい人・予防の方法

突発性難聴は、働き盛りの40代から60代の方が発症しやすい病気です。原因不明といわれている病気ですが、主にストレスを抱えていたりひどい過労を起こしたりしたときに起こりやすい病気とされています。また基礎疾患を抱えている方も発症する確率が高く、特に糖尿病や高血圧の病気を持つ方は特に注意が必要です。

日頃から仕事が忙しくて疲れやすい場合は、なるべく睡眠をとって休息をとったり、高いストレスを感じている人はなるべくストレスを溜めたりしないよう気をつけましょう。基礎疾患のある方は、血糖値や血圧を安定した状態にしておくことが大切です。

健康であれば発症する確率も低くなるので、普段から生活リズムを整えて、規則正しい生活を心がけましょう


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