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渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

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1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

花粉症の概要

花粉症は、花粉が原因で引き起こされるアレルギー性鼻炎の一種です。
春になると多くの人が体験する症状であり、特に樹木や草花の花粉が飛散する季節に顕著になります。
花粉症の主な原因は、空気中に漂う植物の花粉で、特にスギやヒノキの花粉は日本で問題となることが多い傾向です。
花粉が鼻や目の粘膜に接触すると、体はこれを異物と認識し、アレルギー反応を起こします。

典型的な症状には以下のものがあります。

くしゃみ 連続して強いくしゃみが起こることが多い傾向です。

鼻水/鼻づまり 透明な鼻水が出たり、鼻がつまったりする症状が見られます。

目のかゆみ 目が赤くなり、かゆみを伴うことがあります。

のどの痛みやかゆみ のどに不快感を感じることがあります。

花粉症の原因

花粉症を引き起こす主な花粉

花粉症の最も一般的な原因は、特定の植物から放出される花粉です。以下はその例3つです。

スギ花粉 日本で最も一般的な花粉症の原因で、2月から4月にかけて大量に飛散します。
スギの花粉は微細で、風に乗って長距離を移動するため、多くの人々に影響を及ぼします。

ヒノキ花粉 スギ花粉のシーズンが終わるころに飛散し始めるもう一つの一般的な花粉です。
ヒノキ花粉もまた、多くの花粉症患者さんに症状を引き起こします。

ブタクサ花粉 夏から秋にかけて、特に北米やヨーロッパで問題となる花粉です。
日本でも近年、ブタクサによる花粉症が増加しています。

花粉症を引き起こす生体内メカニズム

花粉症は、花粉が体内に侵入した際に起こる免疫系の過剰反応によって引き起こされます。
具体的には以下のような過程を経て症状が現れます。

花粉の侵入 花粉が鼻や目の粘膜に接触することで、身体はこれを外来の侵略者と認識します。

抗体の生成 免疫系は花粉に反応して、特定の抗体(IgE抗体)を生成します。
これが花粉に対する初期の防御反応です。

炎症物質の放出 再び花粉が体内に入ると、これらの抗体が活性化し、ヒスタミンをはじめとする炎症物質が放出されます。

症状の発生

ヒスタミンの放出により、鼻水、くしゃみ、目のかゆみ、鼻詰まりなどの症状が引き起こされます。

花粉症の前兆や初期症状について

花粉症は春の訪れと共に多くの人々を悩ませるアレルギー性の疾患です。
適切に対処するためには、その前兆や初期症状を早期に認識することが重要です。
ここでは、花粉症の一般的な前兆と初期症状について、優しく解説します。

花粉症の前兆

花粉症の前兆は、アレルゲンとなる花粉が飛散し始める時期に現れることが多い傾向です。
以下のような症状が表れる場合、花粉症の始まりを示している可能性があります。

軽い鼻水や鼻づまり 花粉が鼻の粘膜に触れると、軽い鼻水やわずかな鼻づまりが始まることがあります。
これは体が異物を排除しようとしている反応です。

目のかすみや軽いかゆみ 花粉が目に入ると、目が少し赤くなったり、かすんだりすることがあります。
目のかゆみや軽い刺激感も花粉症の初期症状です。

花粉症の初期症状

花粉症が本格的に始まると、次のような症状がより明確になります。

繰り返すくしゃみ

連続して何度もくしゃみが出るのは、花粉症の典型的な症状です。
これは、鼻の粘膜が刺激されることによる自然な反応です。

強い鼻水と鼻づまり

透明で水っぽい鼻水が特徴で、時間が経つにつれて鼻づまりが強くなることがあります。
これにより、夜間の睡眠が妨げられることもあります。

目の強いかゆみと赤み

目が赤くなり、かゆみが増すことが一般的です。
これは花粉が目の粘膜に直接触れることによる反応です。
花粉に対するアレルギー反応による鼻の炎症の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、耳鼻咽喉科、アレルギー科です。
花粉に対するアレルギー反応による鼻の炎症であり、耳鼻咽喉科やアレルギー科で診断と治療が行われています。

花粉症の検査・診断

花粉症の診断プロセス

花粉症の診断は、まず患者さんの症状の詳細と既往歴の聴取から始まります。
医師は以下の情報を確認します。

  • 症状の種類(くしゃみ、鼻水、目のかゆみなど)

  • 症状の発生時期と持続期間
  • これまでのアレルギー歴や家族歴

花粉症の検査方法

花粉症の診断を裏付けるために、以下のような検査が行われることがあります。

プリックテスト

このテストでは、小さな針を使って複数の一般的なアレルゲン(花粉を含む)を皮膚に少量ずつ塗り、その部位の反応を観察します。
特定のアレルゲンに対する皮膚の反応(発赤や腫れ)が見られた場合、そのアレルゲンに対する感受性があることが示されます。

血液検査

IgE抗体検査とも呼ばれ、血中の特定のアレルゲンに対するIgE抗体の量を測定します。
これにより、体内のアレルギー反応の程度を客観的に評価することができます。

診断後の対応

花粉症と診断された後、医師は個々の症状とアレルギーの程度に基づいて治療計画を提案します。
この計画には、生活習慣の調整、薬物療法、場合によっては免疫療法が含まれることがあります。

花粉症の治療

花粉症の一般的な治療法

抗ヒスタミン薬 花粉症の最も一般的な症状であるくしゃみ、鼻水、目のかゆみに対して、抗ヒスタミン薬が効果的です。
例えば、セチリジンやロラタジンなどの薬が、これらの症状を軽減するのに役立ちます。

点鼻薬

鼻づまりに対しては、点鼻薬が有効です。
ステロイドを含む点鼻薬は、鼻の内部の炎症を抑え、通気を良くすることで鼻づまりを解消します。

点眼薬

目の痒みや充血には、抗アレルギー成分または抗ヒスタミン成分を含む点眼薬が推奨されます。
これにより、目の不快感が和らぎます。

生活習慣の調整

治療薬と同様に、日常生活での工夫も花粉症の症状を軽減するのに重要です。

室内環境の改善

空気清浄機を使用することで室内の花粉を減少させることができます。

個人でできる対策

外出から帰宅した際には、すぐに衣服を洗濯し、顔を洗うことで、身体に付着した花粉を除去します。

重度花粉症の治療

重度の花粉症の場合、免疫療法が検討されることがあります。
これは、アレルギーを引き起こす物質を少しずつ身体に慣れさせていく治療法で、数年にわたって行う必要がありますが、長期的には効果的な方法です。

花粉症になりやすい人・予防の方法

花粉症は多くの人々が春の季節に苦しむアレルギー症状ですが、特定の条件下にある人々は特にこの症状を経験しやすいことがあります。
理解しやすく、また具体的な予防策をご紹介しますので、これらを活用して快適な春を迎えましょう。

花粉症になりやすい人の特徴

アレルギー体質の人

遺伝的にアレルギー体質を持つ人々は、花粉だけでなくほかのアレルゲンにも反応しやすい傾向があります。

屋外での活動が多い人 園芸やスポーツなど、屋外で活動する時間が多い人は、花粉に晒される機会が増えるため、花粉症になりやすいです。
都市部に住む人

都市部では空気汚染が重なり、花粉の影響を受けやすくなることが知られています。

花粉症の予防方法

花粉症の症状を防ぐためには、日常生活での注意が重要です。

花粉の情報をチェック

花粉の飛散情報を日々チェックし、飛散量が多い日は外出を控える、または必要な対策をとることが有効です。

マスクと眼鏡の着用

外出時にはN95マスクやポリカーボネートの眼鏡を着用し、花粉が体内に入るのを防ぎます。

室内の空気を清潔に保つ

家の中では窓を閉めて空気清浄機を使用することで、花粉の侵入を最小限に抑えます。

帰宅後の対応

外から帰ったら、衣服をすぐに洗濯し、シャワーを浴びることで体に付着した花粉を洗い流します。

健康的な生活習慣

適切な睡眠と栄養バランスの取れた食事は、免疫システムを強化し、アレルギー反応を抑えるのに役立ちます。

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