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松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

絞扼輪症候群の概要

絞扼輪症候群(こうやくりんしょうこうぐん)とは、四肢の途中にヒモで縛ったようなくびれが生じる先天性の病気です。そのくびれによって末端への血流が阻害され、浮腫、指・骨・神経などの欠損、指の癒着・成長障害などのさまざまな症状が生じます。

絞扼輪症候群を発症するこどもは15,000人に1人とされています。発症する原因は定かではありませんが、遺伝性の要因ではないことはわかっています。胎児期の細胞分化の過程に問題が生じるという仮説や、羊膜が巻きついた影響を受けるという仮説が有力とされています。

四肢の絞扼は医師の視診で判別可能です。ただし、くびれによる血流への影響、四肢の欠損、神経障害などはそれぞれ慎重に検査する必要があります。具体的にはサーモグラフィーによる皮膚温の測定やレントゲンでの画像検査、神経伝導検査を行います。

治療は絞扼輪症候群による四肢のくびれを外科的に取り除くことが中心となります。くびれを取り除いて血流を回復させたうえで、くびれの末端に生じた浮腫や神経障害、指や骨の欠損などを外科的に回復させる処置が検討されます。

外科的に治療した四肢の回復は症状の程度により個人差があります。絞扼の程度が軽いケースでは、比較的良好な経過を辿りますが、欠損や癒合の程度によっては機能回復が難しいケースもあります。

絞扼輪症候群の原因は特定されていないため、完全に予防することはできません。妊娠中の健康管理に気を配り、定期的な妊婦検診を受けることで、発症リスクを下げられる可能性があります。早期発見と適切な治療により、患者さんの生活の質を改善できる可能性があります。

絞扼輪症候群の原因

絞扼輪症候群の原因は判明していません。現在のところ、2つの仮説が有力とされています。1つ目の仮説は、受精卵が赤ちゃんの形に分化していく際に問題が生じ、絞扼輪ができるという説です。

もう1つの仮説は、胎児が母胎内で羊膜(ようまく:胎児を守るためにある薄い膜)が四肢に巻きついてしまうために絞扼輪が生じるという説です。いずれにせよ、絞扼輪症候群は先天性の疾患ではあるものの、遺伝子異常等が原因ではない(遺伝性がない)と考えられています。

絞扼輪症候群の前兆や初期症状について

絞扼輪症候群は先天性の病気であるため、前兆症状はありません。出生直後から四肢のいずれか、あるいは複数個所で絞扼輪(くびれ)がみられます。

軽症例では、四肢にくびれはあっても、機能的な問題が生じないケースもあります。しかし、重症例になるとくびれより末端側の四肢に浮腫やしびれが出現するケースや、末端の指が欠損しているケース、複数の指が先端で癒合しているケース、骨や神経の発達に影響を与えているケースなどがあります。

絞扼輪症候群の検査・診断

絞扼輪症候群は医師の視診によって診断されます。また、絞扼輪に伴う諸症状の検査が必要です。末端の浮腫が大きい場合、循環障害が考えられるためサーモグラフィーで皮膚の表面温度を測定します。

また、絞扼輪より末端の指などに機能障害や発達阻害が疑われる場合は、指の構造・機能検査を行います。具体的にはレントゲン画像で骨の状態を確認したり、神経伝導検査で神経機能を検査したり、筋力検査で絞扼輪より末端の筋力を検査したりします。

絞扼輪症候群の治療

絞扼輪症候群の治療は、外科的手術が中心です。くびれを解消する皮膚手術を行い、くびれによる循環障害の改善を第一に考えます。方法としてはくびれを完全に切り取って皮膚を縫合したり、皮膚を互い違いに縫合したりする方法があります。

くびれよりも末端側に指の合指や指・骨の欠損が見られる場合には、それらに対する対症療法が必要です。指が癒合している合指では、癒合している指を外科的に分離する手術を試みます。骨移植術や骨延長術などが行われるケースもあります。

他にも、機能回復や見た目上の問題の改善を目的とした治療が行われます。

絞扼輪症候群になりやすい人・予防の方法

絞扼輪症候群は新生児にみられる先天性の疾患ですが、発症原因が明確ではなく、完全に予防する手段はいまのところありません。

また、発症は遺伝的な要因とは無関係と考えられているため、家族歴などからなりやすい人、発症リスクの高い人を予測することもできないと考えられています。

一方、妊娠中の羊膜損傷は、発症リスクに関わる可能性があります。そのため、妊娠中は母体感染や早期破水などに気をつけて過ごし、羊膜損傷のリスクを下げることが、絞扼輪症候群の予防につながる可能性はあります。

いずれにせよ、妊娠・出産においては定期的な妊婦検診を受けるなどの行動が、さまざまな先天性疾患の早期発見にもつながります。妊娠中の女性は健康的な生活を心がけ、心身ともにできるだけストレスの少ない環境で出産を迎えられるとよいでしょう。不安があれば、周囲の人や医療機関などに気軽に相談できる体制も大切です。

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