2型炎症
吉川 博昭

監修医師
吉川 博昭(医師)

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医学博士。日本ペインクリニック学会専門医、日本麻酔科学会専門医・指導医。研究分野は、整形外科疾患の痛みに関する予防器具の開発・監修、産業医学とメンタルヘルス、痛みに関する診療全般。

2型炎症の概要

2型炎症とは、アレルギーを引き起こす物質・毒素の体内への侵入や寄生虫の感染などの刺激を受けた際に、身体がそれらを排除しようと防御するために起こる反応のことです。

2型炎症を引き起こす物質が体内に侵入すると、その刺激を感知して免疫細胞(2型ヘルパーT細胞や2型自然リンパ球)の働きが活発になり、免疫細胞から2型サイトカインという物質が産生されます。

2型サイトカインの働きにより粘液の分泌や平滑筋(血管や内臓の筋肉)の収縮などが促されて、体内からアレルギーの原因物質が排除されます。そのため、本来2型炎症は自分の身体を守るための反応と言えます。

しかし、特定の物質に対する反応が過剰な人は、気管支や皮膚、鼻腔などに過度に作用し、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を引き起こす原因となります。

2型炎症は、放置すると症状が悪化する可能性があるため、体調が優れない方は医療機関を受診して適切な治療を受けることが重要です。

2型炎症の原因

2型炎症の原因は、ダニ、カビ、花粉をはじめ、特定の食物や大気汚染物質、タバコの煙などが鼻や口から侵入することで発症します。
また、寄生虫の感染などによっても起こります。これらが体内に入ると、2型ヘルパーT細胞や2型自然リンパ球が活性化され、2型サイトカインが産生されます。

2型サイトカインが、炎症を引き起こす原因となる物質を放出したり、特定の免疫細胞を活性化したりすることで、2型炎症が起こります。

2型炎症の前兆や初期症状について

2型炎症は、それぞれの侵入経路に応じて、2型炎症が起こる場所や症状も変わります。

例えば、ダニやカビは空気と一緒に鼻や口から吸い込まれ、肺や気管支に到達するため、咳やゼーゼーとする呼吸、息苦しさなどの症状があらわれます。

食物は口から摂取して、胃や腸などの消化器を通って体内に吸収されるため、アトピー性皮膚炎のように、皮膚のかゆみや赤み、湿疹などの症状があらわれます。

また、花粉は鼻の穴から吸い込まれ、鼻の粘膜に付着するため、鼻水、鼻詰まり、くしゃみなどの症状があらわれるのです。

アレルギーを引き起こす原因物質に接触したり、刺激されたりすると、これらの症状が悪化する可能性があります。

2型炎症の検査・診断

2型炎症が原因で起こるアレルギー性の病気は多岐にわたるため、さまざまな種類の検査があります。問診で症状やアレルギー症状の発生時期、原因などを確認した後、血液検査やプリックテスト、呼気一酸化窒素濃度測定検査などがおこなわれます。

血液検査

血液検査では、2型炎症の有無や程度を調べます。

アレルギー物質に対するIgE抗体の増加は、アレルギー疾患の診断や原因特定に役立ちます。末梢血好酸球数の増加は、2型炎症が関与する気管支喘息やアトピー性皮膚炎疾患の活動性を反映する可能性があります。

また、TARC(ターク)とSCCA2は、アトピー性皮膚炎の重症度を把握するのに役立つ物質です。

プリックテスト

プリックテストは皮膚テストのひとつであり、ダニやカビ、花粉、食物などに対する反応を一度に調べることができる検査法です。安全性や有効性などから推奨されています。

アレルギーの原因物質を含む液体を皮膚に少量垂らし、15分後にあらわれた赤みや腫れなどがあれば、その物質にアレルギー反応が起きていると考えられます。反応を見ることでアレルギーの原因物質が特定できます。

プリックテストは身体への負担が少ないのが特徴です。ただし、ごくまれにアナフィラキシーショックなどの重篤なアレルギー反応が起こる可能性もあるため、アレルギー専門医のいる医療機関でおこないます。

呼気一酸化窒素濃度測定検査

息を吐き出す際に、呼気中に含まれるNO(一酸化窒素)の濃度を測定する検査です。NO濃度を測定することで、気道(空気の通り道)の炎症状態を把握できます。

NOは2型炎症に関わる物質であり、喘息などの呼吸器疾患の診断や治療効果の判定に用いられます。

検査方法はマウスピースをくわえて、指示通りに息をゆっくりと吐き出すだけです。数回測定して平均値をみます。

ただし、この検査の有効性は十分検証されていないため、現時点では補助的な指標として用いられています。

2型炎症の治療

2型炎症の治療には、薬物療法と非薬物療法があります。

薬物療法

2型炎症の治療薬は、症状や重症度に応じて選択されます。炎症や気管支収縮を抑えるためのステロイド薬や抗ヒスタミン薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬などが用いられます。

例えば、気管支喘息には吸入ステロイド薬や気管支拡張薬が、アトピー性皮膚炎にはステロイド外用薬や保湿剤が用いられます。

近年、2型炎症に関わる分子メカニズムが解明され、新しい治療薬の開発が進んでいます。

非薬物療法

2型炎症の非薬物療法としては、アレルギーの原因物質の回避や環境整備、生活習慣の改善などがあります。

部屋の掃除をして、ダニやカビ、花粉など、アレルギーの原因となる物質をできるだけ避けるようにしましょう。また、室内を清潔に保ち、加湿器や空気清浄機を使って換気を良くすることも大切です。

バランスの取れた食事や十分な睡眠、適度な運動を心がけ、ストレスを溜めないことも2型炎症の治療に取り組むために不可欠です。

症状が改善しない場合や悪化する場合は、アレルギー専門医を受診し、適切なアドバイスや治療を受けてください。

2型炎症になりやすい人・予防の方法

2型炎症になりやすい人としては、アレルギー体質の人や家族にアレルギー疾患を持つ人が挙げられます。

予防法はアレルギーの原因物質を特定し、それを避けることが大切です。原因物質を居室に増やさないための環境整備も重要になります。
生活習慣を整えて、ストレスを溜めないことも2型炎症を治療していくために重要です。


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