

監修医師:
吉川 博昭(医師)
多趾症の概要
多趾症とは、本来5本の足趾(そくし:足の指)が、生まれつき6本以上になる先天性疾患です。胎児のときに足趾が多く分裂することで発症しますが、詳しい発症メカニズムはわかっていません。
多趾症による余分な足趾の多くは小指にでき、イボのような小さなものから、完全な足趾の形をしているものまでさまざまです。男女比は3:2とわずかに男性の方が多い傾向があります。
多趾症の治療は、手術により余剰な指を除去し、必要に応じて筋肉や骨の角度などを調整します。手術や麻酔が乳児に与える影響を考慮して、生後1〜2年経過してから行うことが一般的です。
なお、手術後に足趾や爪の形が変化していく可能性があるため、手術後も定期検査が欠かせません。子供の成長に合わせて、足趾を含めた足全体の形を観察していく必要があります。
余剰な足趾が小指の根本から生えている場合には、小指を曲げ伸ばしする機能などに障害が出る可能性が高いとされています。しかし、余剰な指が爪に近い位置で生えていたり、骨がなかったりする場合には、機能障害は小さくなる傾向にあります。
多趾症の原因
多趾症は胎児のときに足趾が形成される段階での過剰な分裂が原因です。しかし現在のところ、足趾が通常よりも多く分裂する詳しい発症メカニズムは分かっていません。
通常、胎児の足趾は妊娠14〜16週程度でしゃもじのような形をした組織が裂けて分裂することで形成されます。この分裂が通常より多く起こることで、多趾症が生じると考えられています。
多趾症の前兆や初期症状について
多趾症は足趾が5本より多くある状態で生まれてくるため、前兆となる症状はわかりません。妊娠中のエコーで発見される場合もあれば、生後はじめて気づく場合もあります。
多趾症で存在する余剰な足趾は小指に多く発生します。小指から発生する多趾症は全体の90%を占めるとされており、その他の指から発生するケースはまれです。分裂した足趾は完全な指の形をしているものから、イボのようなわずかな突出しかみられないものまでさまざまです。
この余剰な足趾による機能障害は、足趾がどの部位から発生しているかで決まり、余剰な足趾が小指の根本から生えるほど機能障害が重い傾向があります。 反対に小指の先(爪側)から生えていて、余剰足趾の骨がない場合にはほとんどのケースで機能障害が発生しません。
なお、多趾症による機能障害の主な影響は、指の曲げ伸ばしがしにくくなることです。余分な足趾をそのままにしておくと、歩きにくさや痛みが生じる可能性があります。また、靴や靴下が入らないなどの問題や、見た目の問題も発生します。
多趾症の検査・診断
多趾症は見た目の視診によって診断されるため、多くのケースでは診断のための検査は必要ありません。しかし、多趾症の手術をする場合には骨や筋肉・血管の向きや数などの状態を把握するために、X線検査(レントゲン)やMRI検査などの画像検査が必要です。
また、手術後は足趾の変形が起こる可能性があるため、成長期が終わるまで年1回程度のX線検査を行い、経過観察を続けます。
多趾症の治療
多趾症の治療は、余剰な足趾を切除する手術をおこないます。単に余剰足趾を切除するだけではなく、筋肉を繋ぎ合わせたり骨の角度を整えたりなどの調整も必要です。
手術を行う時期は、手術や麻酔が乳児に及ぼす影響を考慮したうえで、慎重に決定されます。また、前述の筋肉を繋ぎ合わせたり骨の角度を調整したりする手術はある程度関節が成長した状態が望ましいとされています。そのため、生後1〜2年経ってから手術が検討されることが一般的です。
なお、多趾症の場合、手の指と比較すると靴や靴下でカバーできることから、多指症と比較すると手術時期が遅くなる傾向があります。しかし、放置すると爪や関節が変形する可能性が高いため、手術が推奨されます。
多趾症の余剰な足趾を取り除いた後も、形成した足趾が変形しないように経過観察を行います。とくに関節の調整や筋肉を繋ぎ合わせるような症例では、足趾が変形するリスクが高まるため、注意深く経過観察する必要があります。
多趾症になりやすい人・予防の方法
多趾症は胎児期に形成されるため、予防する方法はありません。また、現在のところ遺伝など多趾症になる原因ははっきり判明していないため、なりやすい人もわからないといえます。
多趾症で余剰な指がある場合、足趾や爪の変形、歩行障害・痛みを予防するために定期的な受診が必要です。多くのケースでは、適した靴が見つからず、靴による圧迫が足趾や爪の変形を引き起こし、歩行障害や痛みにつながる可能性があります。
手術をしたとしても、成長に伴って足趾が変形する可能性は否定できません。手術後に足趾が変形する可能性は、関節の調整や筋肉を繋ぎ合わせる処置をしたケースほど高くなります。 場合によっては追加で手術をして足趾の調整が必要になるケースもあるため、手術後の定期診察が重要な病気です。
関連する病気
- 多指症
- 合指症(合趾症)
参考文献




