眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

顔面外傷の概要

顔面外傷は主に交通事故や転倒・転落・スポーツなどが原因で生じます。皮膚や筋肉などの軟部組織(骨以外の柔らかい組織)損傷と眼や頬、鼻・顎の顔面骨骨折に大別されます。

顔面外傷では痛みのほか、見た目の問題も軽視できません。外傷自体は治癒しても、傷跡やシミが残り、見た目が悪くなると心理的な負担となることがあります。

軟部組織損傷では、皮膚の大きな損傷があれば皮膚移植が適応となります。そのほかの治療として、シミに対するレーザー治療も検討されます。

顔面骨骨折では骨の歪みなどによる見た目の問題と、骨折による機能障害が生じます。見た目が悪いだけであれば、日常生活に支障がない限り、一般的には経過観察となります。しかし眼や鼻の機能が低下するなどの機能障害を伴う場合には、骨の修復と損なわれた機能回復のための手術が行われます。

顔面外傷を予防するためには、顔面に対しての衝撃を緩和することが重要です。転倒しないようなバランス練習や杖の使用、スポーツの際にはフェイスガードをつける、高所作業時には命綱をつけるなどの対策を行いましょう。

顔面外傷の原因

顔面外傷は、交通事故や転倒・高所からの転落・スポーツなどが原因で生じることが多いです。
また、他人からの殴打やペットに噛まれることも原因になり得ます。

顔面外傷の前兆や初期症状について

顔面外傷の初期症状は、顔面の皮膚や筋肉などの軟部組織損傷による痛みや、眼や頬、顎の骨の骨折による症状が現れます。これらの症状は損傷した部位によって症状が大きく異なります。

軟部組織の損傷では、軽いすり傷や切り傷でも見た目の問題から心理的な負担につながりやすいです。また、傷が深いと顔面神経や涙腺・唾液腺の管を損傷し、顔面神経麻痺や涙・唾液の分泌障害を引き起こす可能性があります。

また、顔面の骨折を伴う場合には顔の変形に加えて、知覚障害(しびれ)や物が二重に見える複視、口が開きにくい開口障害、噛み合わせが悪い咬合不全といった症状もみられます。

眼窩骨折(眼の周囲の骨折)では、眼球運動障害と神経障害がないかを十分に観察する必要があります。眼球運動障害による複視と神経障害による頬(ほお)のしびれ、網膜剥離(もうまくはくり)、眼の凹みといった症状がみられます。

頬骨骨折では、眼の骨と顎に隣接している部分の骨折であるため、眼の症状と顎の症状どちらも発現する可能性があります。具体的な症状としては複視、目の凹み、開口障害、咬合不全などが挙げられます。

上顎骨折(じょうがくこっせつ)と下顎骨折(かがくこっせつ)はどちらも顎の骨折で、噛み合わせの機能が悪くなるでしょう。また、顔の歪みにつながりやすく、見た目の問題が生じやすい骨折です。

鼻骨骨折はとくに見た目の問題で心理的負担になりやすいです。鼻骨は顔の中心に位置する骨なため、歪みが目立ちやすい特徴があります。また、鼻骨骨折は鼻詰まりの原因にもなり得るため、注意が必要です。

顔面外傷の検査・診断

顔面外傷では詳しい問診と、視診・3次元CT検査が有効です。問診ではどの部位に衝撃が加わったか、どのような状況で負傷したかなどを聞き取り、怪我の原因や状況の把握をします。

また、視診によって損傷している部位、見た目の問題の大きさを確認します。加えて、問診や視診を通して、脳に異常がないか確認することも大切です。脳の異常がある場合、呂律が回っていない、視線が合わないなどの症状がみられ、脳の状況を詳しく検査する必要があります。

3次元CT検査は顔面外傷による骨折の詳細を評価するのに有効です。骨折部位の特定だけでなく重症度を図り、手術のための画像シミュレーションに活用されます。

顔面外傷の治療

顔面外傷の治療は傷跡や歪みによる見た目の問題の改善と、顔面外傷によって損なわれた機能の改善を目的におこないます。

軟部組織の損傷では、皮膚の広範な損傷がある場合、皮膚移植が行われることがあります。また、瘢痕(傷跡)が目立つ場合には、瘢痕修正やレーザー治療が検討されることもあります。

顔面の骨折に対しては、骨の整復と機能回復を目的とした治療を行います。本人が見た目の改善を希望する場合や機能的な問題がある場合には、手術が検討されます。

鼻骨骨折や眼窩骨折・頬骨骨折では、骨折の程度が重い場合には鼻詰まりや複視といった症状が現れる場合があります。これらの症状によって日常生活に支障が出る場合には、手術が適応です。しかし、日常生活に支障が出ないのであれば、経過観察となることが一般的です。

上顎骨折・下顎骨折では多くのケースで噛み合わせが悪化し、手術が必要になります。手術は顎の骨を外科的に修復し、ワイヤーやゴムなどで固定する処置をおこないます。

顔面外傷になりやすい人・予防の方法

顔面外傷になりやすい人は、高齢者やスポーツ選手などの転倒が多い人や、自転車やバイクなどに乗ることが多く交通事故に遭いやすい状況にある人、高所作業が多く転落の可能性がある人が挙げられます。

予防するためには、顔面への衝撃を防ぐことが重要です。転倒しやすいのであれば転倒しないようにバランス練習をしたり、杖を使用したりなどの対策をしましょう。

また、事故の危険があるのであれば事故による衝撃を事前に防ぐことも有効です。スポーツをする時にはフェイスガードをする、高所での作業の時には転落しないよう命綱をつけるなどの対策が有効でしょう。


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