

監修医師:
五藤 良将(医師)
仮性半陰陽の概要
仮性半陰陽(かせいはんいんよう)とは、生まれつき外性器の見た目と染色体の性が一致しない状態を指します。
胎児期における性分化の過程で何らかのトラブルが生じることが原因とされています。
たとえば、染色体は女性型(XX染色体)であっても、胎児期に男性ホルモンの影響を強く受けることで、外性器が男性的な特徴を示すことがあります。
反対に、染色体は男性型(XY染色体)であっても、外性器が女性的な特徴を示すパターンもあります。これらは生まれた直後に気付く場合もあれば、ある程度成長してから気付く場合もあります。
最近はこのような状態を「性分化疾患」と呼ぶことが増え、「仮性半陰陽」や「インターセックス」という呼び方を避ける傾向があります。
仮性半陰陽は医学の進歩や理解の深まりが進んだことで、適切な介入が可能となってきています。
仮性半陰陽の人を支えるためには、身体的な介入のみでなく、心理的なケアを含めた包括的なアプローチが重要です。
仮性半陰陽の原因
仮性半陰陽は男性仮性半陰陽と女性仮性半陰陽に大別されます。どちらの場合も染色体(XXとXY)、性腺(卵巣と精巣)、性器(子宮・膣と陰茎)が決められる過程において何らかの異常が生じることが原因です。
主に胎児期における性ホルモンの産生や作用の異常によって引き起こされます。性器の発達は、胎児が自身で産生する男性ホルモンの影響を強く受けており、このバランスが崩れることで仮性半陰陽になると考えられています。
性ホルモンの産生や作用に異常をきたす原因は大きく3つあります。
1つ目は性腺機能が不十分であることです。性腺からの性ホルモンの分泌が適切に行われないことで、外性器の発達に影響が出ることがあります。
2つ目は性ホルモンに対する感受性の低下です。身体の細胞が性ホルモンに対して反応しない場合も外性器の発達に影響が及びます。
3つ目は副腎の機能異常です。副腎は男女ともにごく少量の男性ホルモンを分泌する器官です。「先天性副腎過形成症」という状態では、副腎から過剰に男性ホルモンが分泌されることで外性器の発達に影響を与えます。
性腺の発生そのものに異常があり、性ホルモンの分泌ができない場合は、外性器は女性型になります。その場合は新生児期に仮性半陰陽に気付くことは難しく、思春期に入っても第二次性徴が現れないことで初めて判明するケースもあります。
仮性半陰陽の前兆や初期症状について
仮性半陰陽の主な症状は、外性器の形が非典型的な特徴を示していることです。外性器の形が通常の男児や女児とは異なる特徴を示したり、外性器の形だけでは性別の判定が困難であったりします。
男性仮性半陰陽の場合、陰茎は小さく、尿道下裂(にょうどうかれつ:尿道が陰茎の先端まで作られず、陰茎の下側に尿道口がある状態)や停留精巣(ていりゅうせいそう:陰嚢の中に精巣が入っていない状態)をともないます。
女性仮性半陰陽の場合は外性器が通常より大きく見えたり、男性的な特徴を示したりすることがあります。
これらは出生直後に発見されることもありますが、二次性徴が現れない、または遅延しているといった症状が出現して初めて気が付くケースもあります。
これらの症状に気が付いた場合は、できるだけ早期に専門医による診察を受けることをおすすめします。早期発見や早期治療により、患者本人の身体的または精神的負担の軽減につながります。
仮性半陰陽の検査・診断
仮性半陰陽は外性器の形や大きさ、その他の身体的な特徴を確認するための視診や触診を中心に、染色体検査や血液検査、画像検査を組み合わせて診断します。
染色体検査では性染色体の構成を確認します。先天性副腎過形成症が疑われる場合は、血液検査によって副腎の酵素活性を調べる検査も実施します。
画像診断では超音波検査やMRI検査により、子宮や卵巣、精巣など内性器の有無や状態を確認します。
仮性半陰陽の診断は患者本人や家族の精神面にも影響を及ぼす可能性があるため、いつ、どのような検査をおこなうかなど、医師と家族がよく話し合うことが重要です。
仮性半陰陽の治療
仮性半陰陽の主な治療はホルモン補充療法や手術療法です。仮性半陰陽の原因が先天性副腎過形成症である場合、不足しているホルモンを適切に補充して正常な発達を促します。
手術治療では外性器や内性器の手術をおこないます。手術の時期や方法については、患者の年齢や状態、家族の意向などを総合的に考慮して決定することが非常に重要です。
仮性半陰陽の一部は性腺腫瘍が発生するリスクがあるため、予防的に性腺を摘出するケースもあります。
そして、仮性半陰陽の患者および家族に対しては、心理的なサポートも治療の重要な要素です。医師や看護師、専門のカウンセラーなどによって、専門的なカウンセリング心理面のケアをおこないます。
治療は長期的な経過観察を必要とすることが多く、小児期から成人期まで成長に合わせた包括的なケアが求められます。
仮性半陰陽になりやすい人・予防の方法
仮性半陰陽は胎児期における性分化の過程の中で、何らかの異常が生じることで発生するものであるため、現時点では完全な予防は困難とされています。
したがって、早期発見に重きを置いて適切な介入につなげることが大切です。
出生時に外性器の異常が認められた場合や、思春期に入っても二次性徴が現れない場合はできるだけ早く専門医へ相談をすることをおすすめします。
早期発見は、患者本人とその家族の心理的または社会的な側面を含んだ包括的なアプローチにつながります。
医療の進歩により仮性半陰陽に対する理解は深まっており、それぞれの患者の状況に応じた個別的な対応が重要です。
仮性半陰陽は場合によっては生涯的なサポートを要するものです。患者やその家族と信頼関係を築くことが健やかな生活につながります。
関連する病気
- 性分化疾患
- 先天性副腎過形成症
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- 女性仮性半陰陽




