

監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
成長障害の概要
成長障害は、同年代の子どもと比較して成長に遅れがある状態で、主に身長の伸びが悪い場合を指します。 乳幼児期の健診や学校の健康診断などで測定される身長や体重が、成長曲線から大きく外れる場合、成長障害が疑われ、精査や治療の対象になります。
成長障害の原因は、下垂体や甲状腺のホルモン異常、染色体異常、骨や軟骨の疾患、臓器の機能障害、胎児期の発育不全などが挙げられます。 症状としては同年代の平均よりも成長発達が遅れるほか、原因となる疾患に応じた特有の症状が現れることがあります。
診断は、成長曲線の評価、問診、身体診察、血液検査、画像検査などを通じておこなわれます。 治療法としては、成長ホルモンの補充療法や、原因疾患に応じた適切な方法が選択されます。
子どもの健全な成長と発達を促すためには、成長障害を早期に発見し、適切な診断と治療につなげることが重要です。 定期的な健康診断や成長の記録を通じて、異常の早期発見に努めることが推奨されます。
成長障害の原因
成長障害は生まれつきのホルモンや染色体、骨、臓器の異常、子宮内発育不全によって生じます。 それ以外にも運動量や睡眠量の不足、低栄養、ストレスなどが原因で発症することもあります。
ホルモンの異常
下垂体から分泌される成長ホルモンや、甲状腺ホルモンの分泌低下は、成長障害が起こる原因の一つです。 成長ホルモン分泌不全性低身長症や甲状腺機能低下症がこれに該当します。 下垂体の成長ホルモンの分泌低下は、出産時の重症仮死や脳腫瘍によって引き起こされることがあります。 また、特定の原因なくこれらのホルモンの分泌が低下することもあります。
染色体の異常
ターナー症候群やプラダー・ウィリー症候群、ヌーナン症候群などの染色体異常も成長障害の原因になります。 ターナー症候群は女児に発症する病気で、X染色体が1本もしくは一部欠けることによって生じます。 プラダー・ウィリー症候群は15番染色体の変化によって発症し、ヌーナン症候群は特定の遺伝子の異常によって引き起こされます。
骨や軟骨の異常
先天的な骨や軟骨の異常によって、軟骨無形成症や軟骨低形成症が起こり、低身長となったり、体のバランスに異変が生じたりすることがあります。 これらの異常は親からの遺伝によって引き起こされることもあれば、突然変異によって生じることもあります。
臓器の異常
心臓や肝臓、腎臓などの臓器に病気がある場合、低栄養状態に陥り、結果として低身長になることがあります。 慢性的な臓器疾患は体の成長に必要な栄養素の吸収や代謝に影響を与え、成長障害を引き起こす可能性があります。
子宮内発育不全
正期産であっても体が小さく産まれた場合や、早産によって小さく産まれた子どものなかには、成長障害のリスクが高いケースがあります。 特に3歳以降も低身長の程度が強い場合は、治療の対象になることがあります。
成長障害の前兆や初期症状について
成長障害の主な兆候は、身長の伸びが徐々に鈍化し、成長曲線から外れていくことです。 周りの子どもと比較して、低身長が次第に目立つようになります。
成長障害の原因によって、さまざまな症状が伴うことがあります。 ターナー症候群では卵巣の発育不全により思春期の遅れや欠如が見られ、心臓病や難聴を伴うこともあります。 プラダー・ウィリー症候群の場合、乳幼児期の筋緊張低下や、成長に伴う肥満傾向、発達障害などが特徴的です。 ヌーナン症候群では思春期の遅れや心疾患、特徴的な顔貌が見られます。
軟骨無形成症や軟骨低形成症では、低身長に加えて体のバランスの異常が生じ、頭囲の増大や前頭部の突出、四肢短縮などが観察されます。 臓器疾患が原因の場合は、それぞれの疾患に特有の症状が現れます。
成長障害の検査・診断
成長障害の診断や原因の特定は複数の検査によっておこなわれます。 始めにSD(標準偏差)スコア表を用いて身長を評価します。 身長がー3SD 以下の場合は成長障害と診断し、低身長の精査が必要になります。 低身長の精査では骨年齢の評価や血液検査などをおこないます。 骨年齢の評価には、手の骨の発育段階を分析する「TW2法」が用いられ、手のレントゲン撮影が必要になります。 血液検査では、下垂体や甲状腺のホルモン分泌状況、染色体の分析などがおこなわれます。
診断の過程では、母子手帳などの成長記録や両親の生育歴も参考にされます。 胎児週数、出生時の体重・身長、分娩時の異常の有無、栄養摂取状況なども重要な情報になります。 さらに、顔貌(顔つき)や身体のつり合い、肥満状態なども観察することがあります。
これらの総合的な評価により、成長障害の原因を特定し、適切な治療計画を立てることが可能になります。
成長障害の治療
成長障害の治療では、原因に応じたアプローチをおこないます。 多くの場合、成長ホルモンや甲状腺ホルモンの補充療法が主な治療法になります。 ターナー症候群では、成長ホルモン療法に加えて、女性ホルモン治療がおこなわれることもあります。
軟骨無形成症や軟骨低形成症では、骨延長術や軟骨の成長を促す治療が検討されます。 臓器疾患が原因の場合は、それぞれの疾患に特化した治療が実施されます。 成長障害はできるだけ早く診断し、適切な治療をおこなうことが子どもの健全な成長と発達を支援するうえで重要です。
成長障害になりやすい人・予防の方法
成長障害になりやすい人は、遺伝的に原因疾患にかかりやすい要因を持つ人が挙げられます。 乳児期の哺乳量不足や幼児期以降の栄養状態の不良も成長障害のリスクを高めます。 さらに、早産や胎児期の栄養不良による低体重児として出生した場合も、成長障害のリスクが高くなる傾向があります。
成長障害を完全に予防することは難しいですが、子どもの生活習慣を整えることでリスクを軽減できる可能性があります。 栄養バランスの取れた食事を心がけ、適度な運動をおこない、十分な睡眠を確保するように促すことが重要です。 子どもにとってストレスの少ない生活環境を整えることも、健全な成長を促進するうえで必要になります。 これらの対策によって、子どもの成長を支援し、成長障害のリスクを最小限に抑える可能性が高まります。




