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ガラクトース血症
前田 広太郎

監修医師
前田 広太郎(医師)

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2017年大阪医科大学医学部を卒業後、神戸市立医療センター中央市民病院で初期研修を行い、兵庫県立尼崎総合医療センターに内科専攻医として勤務し、その後複数の市中急性期病院で内科医として従事。日本内科学会内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本医師会認定産業医。

ガラクトース血症の概要

ガラクトース血症とは、単糖類である血中ガラクトースの代謝に関わる酵素が先天的に無い、もしくは活性が低く、血中ガラクトース濃度が上昇する病気です。Ⅰ型からⅣ型に分類されます。Ⅰ型は新生児期から嘔吐や下痢、ミルクを飲まないなどの症状をきたし、肝障害、腎尿細管障害、血液凝固障害などが生じます。新生児マススクリーニングにより発見され、治療には乳糖が含まれている食事を制限することが必要になります。治療しなければ死に至る疾患であり、治療しても長期的な合併症として白内障や低身長、卵巣機能不全や知的障害や運動障害といった症状が生じる可能性があります。

ガラクトース血症の原因

ガラクトースとは、単糖類といわれる糖の一種です。母乳、牛乳など、哺乳類の乳汁に含まれる炭水化物のほぼすべては乳糖です。新生児や乳児にとっては乳糖は摂取する炭水化物のほとんどを占めます。乳糖を摂取すると、小腸にある乳糖分解酵素によってガラクトースとグルコースに分解・吸収され肝臓に取り込まれます。ガラクトースを代謝する酵素としては、ガラクトースムタロターゼ(GALM)やガラクトキナーゼ(GALK)、ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(GALT)、ガラクトース-4-エピメラーゼ(GALE)などがあります。ガラクトースは最終的にUDP-ガラクトースとグルコース-1-リン酸という物質となり、エネルギー源として利用されます。このガラクトースを代謝する経路にある酵素が欠損する部位によってガラクトース血症はⅠ~Ⅳ型に分類されます。

ガラクトース血症Ⅰ型(GALT欠損症)は常染色体劣性遺伝疾患で、90万人に1人生まれてくるとされ、新生児早期から様々な症状を呈し、乳糖除去を行わなければ死に至ります。

ガラクトース血症Ⅱ型(GALK欠損症)は常染色体劣性遺伝疾患で、55~100万人に1人生まれてくるとされ、新生児期からの白内障を呈します。

ガラクトース血症Ⅲ型(GALE欠損症)は常染色体劣性遺伝疾患で、7~16万人に1人生まれてくるとされます。肝臓を含む全身に酵素欠損がみられる全身型は、Ⅰ型と同様に重篤な症状をきたしますが、日本人の症例は報告されていません。肝臓での酵素活性が保たれる末梢型は治療不要とされており、本邦でのガラクトース血症Ⅲ型はすべて末梢型です。

ガラクトース血症Ⅳ型(GALM欠損症)は、本邦での報告8例中2例に白内障が報告されていますが、その他の症状は認められていません。

ガラクトース血症の前兆や初期症状について

ガラクトース血症Ⅰ型では、新生児早期から母乳やミルクをあげた後の不機嫌、食思不振、下痢、嘔吐といった消化器症状、体重が増えない、採血後の止血困難、低血糖といった症状が見られます。ガラクトース血症Ⅱ型では新生児期から白内障にともない水晶体が濁ったりして見えます。ガラクトース血症Ⅲ型で全身型の場合はⅠ型と同様の症状をきたしますが、末梢型では無症状です。ガラクトース血症Ⅳ型では一部白内障により水晶体が濁って見える場合があります。

ガラクトース血症の検査・診断

ガラクトース血症は新生児マススクリーニングで調べることができます。生まれて4~6日目に採取された乾燥濾紙血を用いてガラクトースやガラクトース-1-リン酸の濃度を測定します。ガラクトース-1-リン酸高値の場合は、GALTという酵素の働きがあるかどうかを確認します。血液検査では肝酵素上昇やビリルビン高値、凝固異常をきたすこともあります。鑑別としては、胆汁うっ滞をきたす疾患(胆道閉鎖症、シトリン欠損症)、門脈体循環シャント、ファンコニ・ビッケル症候群などがあります。

ガラクトース血症の治療

ガラクトース血症Ⅰ型の治療は、食事療法により乳糖の摂取を制限することです。新生児マススクリーニングで陽性となった場合は、家族へ早急に連絡を行い、大豆乳か乳糖除去ミルクに変更します。乳糖を含む食品でも、果物、野菜、豆類、非発酵の大豆食品、熟成したチーズは制限不要とされています。凝固異常や肝障害をきたす場合は対症療法を行いますが、ガラクトースの摂取を制限することにより改善します。直ちに治療を開始した場合は予後は良好ですが、治療が遅れた場合は大腸菌による敗血症などで死に至ります。治療を行っていても慢性期合併症として精神・神経症状として言語発達遅滞、筋緊張低下、振戦、失調性歩行といった神経症状がみられる場合があります。他にも、生鮮機能不全がみられ、新生児期からの治療に関わらず、80~90%の女児で卵巣機能不全がみられ、無月経や月経が少ないことで発見される場合が多く、10歳ごろから内分泌専門医による定期的なフォローが望ましいです。大部分は不妊となりますが、自然妊娠の例も報告されています。男児の性腺機能はほぼ正常とされます。また、長期にわたる乳製品除去から骨密度の低下をきたすことがあり、運動や骨病変に対する画像検査などを行い、必要であればビタミンDの補充を行います。

ガラクトース血症Ⅱ型は白内障予防目的に乳糖摂取制限を行います。診断時に白内障があるかどうかを確認し、異常があれば消失するまで眼科でのフォローを続けます。食事制限がしっかりできていない患者であれば、眼科でのフォローは継続した方が良いとされます。

ガラクトース血症Ⅲ型は、本邦ではすべて末梢型であることから治療は不要です。極めてまれな全身型の場合はⅠ型と同様に新生児早期からの乳糖除去を行います。

ガラクトース血症Ⅳ型は重篤な症状はないものの白内障がみられることはあり、血中ガラクトース濃度を基準に乳糖除去を行います。成長とともにガラクトース血中濃度の上昇がなくなることもあり、食事療法が不要となる例もあります。

ガラクトース血症になりやすい人・予防の方法

ガラクトース血症はまれな遺伝疾患で、予防の方法はありません。治療可能な疾患であり、新生児期マススクリーニングによる早期発見と早期治療が重要です。

参考文献

  • 1)日本先天代謝異常学会・編:新生児マススクリーニング対象疾患診療ガイドライン2019. 診断と治療社. 東京. 2019
  • 2)伊藤 哲哉:総論 ガラクトース血症. 小児科診療 84巻 2号 pp. 193-198. 2021
  • 3)齋藤 寧子, 和田 陽一:ガラクトース血症. 小児科診療 88巻 4号 pp. 449-453. 2025
  • 4)Up to date:Galactosemia: Management and complications

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