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多指症
眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

多指症の概要

多指症は指の数が通常5本のところ、1本以上多い状態で出生する先天性の異常です。
正常よりも多く見られる指の形は完全に形成されたものから、小さな突起物のようなものまで、さまざまなタイプがあります。

胎児の腕や手は妊娠4〜7週目にかけて形成され、その1週間後に足が形成されます。
手は最初、しゃもじのような形をしていますが、その後、先端が分かれて5本の指と手のひらが形成されます。
この指が分かれる過程で通常より多くの裂け目ができ、指の数が増えることによって発症します。
多指症は出生前の超音波検査で発見されることもあれば、出生後に初めて気づくこともあります。

多指症は約1万人に5〜6人の割合で見られる、比較的多い先天性の異常です。
手では親指に多く見られ、親指多指症といいます。
足に出来た場合は多趾症とよばれ、小指に多く隣の指とくっついていることもあります。

多指症

多指症の原因

多指症は遺伝的な問題や染色体の異常、胎児の発育に有害な影響を与える環境などが要因として考えられていますが、多くの場合、原因不明です。

なんらかの原因によって、指が形成されていく過程で成長が止まったり、骨がうまく分かれなかったりすることで指が多くできてしまいます。

多指症の前兆や初期症状について

多指症の症状は、手の親指や足の小指などの近くに生まれつき指が多く形成されることです。
手の親指は、曲げたり伸ばしたりするだけでなく、広げて大きな物をつかむことも役割です。
多指症によって余分な指が親指の近くに形成されると、成長に伴い本来の親指の動きに影響が出て、指の曲げ伸ばしや、物をつかむ動作が難しくなる可能性があります。

余分な指が小さくて豆のような形をしている場合では、見た目は目立ちますが動きには大きな影響はありません。

余分な指が隣り合う指の骨や関節を共有している場合も、成長するにつれて本来の指の動きが制限されることがあります。

骨や関節が共有される場所によっては、痛みや不快感を感じることもあります。

多指症の検査・診断

多指症の検査には妊娠中の超音波検査、出産後の視覚検査、画像検査があります。
異常が起きている部位が骨や腱、軟部組織、皮膚のどこにあるのかを特定し、適切な治療法を決定するために検査を行います。

超音波検査

妊娠中に行われる超音波検査で、妊娠8〜9週目以降から多指症を発見することがあります。
しかし、生まれて初めて多指症だったとわかる場合も多いです。

視覚的検査

生まれた後、新生児の手や足を医師が視覚的に確認し異常がないかを診察します。
余分な指や趾があるかどうか、形や位置、動きの範囲、関節の異常や他の形態的な特徴をチェックします。

画像検査

画像検査は余分な指の骨の構造や位置を確認するために行います。
X線撮影を使って、余分な指や趾の骨の構造や関節の状態を観察し、それらが周囲の組織や他の骨とどのように結びついているかも確認します。
超音波検査も使用して、手や足の軟部組織(筋肉や腱など)の状態を調べ、どの部分に異常があるか詳しく把握します。

多指症の治療

多指症の治療では、全身麻酔を利用した手術が行われます。
どの指を切除するか、余分な指の組織をどの程度利用するかは、余分な指がどこから分かれているかによって異なります。
余分な指が小さく、他の指と骨や関節を共有していない場合は余分な指を切除するだけで済みます。
しかし、余分な指が隣り合う指とほぼ合致している場合は、余分な指を取り除くだけでなく筋肉や骨の位置を移行させて新しい指を再建する必要があります。

手術の時期

治療時期は個々の状態に合わせて慎重に決めますが、1歳過ぎてから手術を行うことが一般的です。
手は見た目や機能の面で重要な部分であり、幼児にとっては手を使って大人と触れ合うことも大切であるため、早めに手術を行うことが望ましいです。
早期に治療することで正常な手の動きも身につけやすくなります。

ただし、手術や麻酔が子どもに与える影響を考えた場合、ある程度成長してから手術を行う方が良い場合もあります。
特に関節形成や腱移行が必要な場合は、手指が成長してから行うことが推奨されます。

術後の注意点

関節形成や腱移行が必要な手術を行った場合、成長とともに指が曲がったり爪の変形が見られることがあります。

変形の程度によっては、追加の修正手術が必要になるかもしれませんが、専門の医師による適切な治療を受ければ、十分に機能する指を得られます。

多指症になりやすい人・予防の方法

多指症は遺伝的な要因が関与しているため、家族に多指症の人がいる場合に見られる可能性があり、女児よりも男児に多い傾向があります。

現時点では、多指症を予防する明確な方法はありません。
ただし、定期的な妊婦健診を受けることで、早期に異常を発見して先に向けた対策を立てられる可能性があります。


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