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18トリソミー(エドワーズ症候群)
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

18トリソミー(エドワーズ症候群)の概要

18トリソミー(エドワーズ症候群)は、染色体異常の一種で、第18番目の染色体が通常の2本ではなく3本存在することによって引き起こされます。遺伝子が過剰な情報を持つため、さまざまな身体的および発達的な問題を引き起こします。出生時の男女比で見た場合、女児に多く発症する傾向があります。

この病気の患者は、低体重、心臓の欠陥、手足の変形、発達の遅れなど、さまざまな問題を抱えます。個々の患者によって症状が異なり、軽度から重度までさまざまです。また、出生後すぐに医療的なケアが必要となることが多く、患児の半数以上は生後1週間以内に亡くなり、生後1年を生き延びられるのは5~10%に過ぎないが、最近では治療の進歩により、予後が徐々に改善しているケースも報告されています。

さらに、エドワーズ症候群は、例えば呼吸器の問題、消化器の異常、神経系の障害など他の合併症を引き起こすことがあります。そのため、患者と家族は継続的な医療と支援が必要となることが多いです。

18トリソミー(エドワーズ症候群)の原因

染色体の数が正常ではないことが18トリソミーの原因です。具体的には、細胞分裂の過程で染色体が正しく分配されない場合に発生します。通常、人間は各親から23本ずつ、計46本の染色体を受け取ります。しかし、18トリソミーでは、18番目の染色体が3本になってしまうのです。この異常は、精子や卵子の形成時、または受精後の初期胚の細胞分裂の過程で発生する可能性があります。

この染色体異常は、親の年齢が高い場合に発生するリスクが高くなるとされており、特に母親の年齢が高いほど、トリソミーのリスクが高くなることが知られています。しかし、どの年齢層でも発生する可能性があり、特定の予防策は存在しないのが現状です。染色体異常の正確な原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境要因が複合的に関与していると考えられています。

18トリソミー(エドワーズ症候群)の前兆や初期症状について

エドワーズ症候群の前兆や初期症状は、妊娠中から見られ、超音波検査において、胎児の成長が遅いことや、多くの先天性異常が確認されることがあります。具体的には、胎児の心臓や腎臓に異常が見られたり、羊水過多や胎盤の異常が確認されることがあります。

出生後の初期症状としては、低体重で生まれることが多く、通常よりも小さな頭、特有の顔つき(小さな顎、耳の低位付着)、手足の異常(握りこぶし、重なり合う指、湾曲した足)などが見られます。これらの特徴は、エドワーズ症候群の診断の際に手がかりとなります。また、心臓や腎臓の欠陥、呼吸器系の問題なども頻繁に起こり、新生児の生命に重大な影響を及ぼすことが多いです。

さらに、これらの症状に加えて、成長と発達の遅れが顕著で、運動能力や知的発達にも大きな影響を与えます。親や医療従事者の早期発見と治療により、症状の重症化を防ぎ、患者の生活の質を向上させることができます。

これらの症状が現れた場合、 産婦人科などを受診して適切な検査・治療を受けることをおすすめします。

18トリソミー(エドワーズ症候群)の検査・診断

18トリソミー(エドワーズ症候群)の検査・診断は、妊娠中および出生後に行われます。妊娠中の検査には、非侵襲的な検査と侵襲的な検査があります。非侵襲的な検査としては、母体血清マーカー検査やNIPT(新型出生前診断)が一般的です。母体の血液中の胎児のDNA断片を解析することで、18トリソミーのリスクを評価します。

超音波検査も重要な診断手段で、妊娠11〜13週頃に行われる初期の超音波検査では、胎児の首の後ろのむくみ(NT:ヌーカルトランスルーセンシー)を測定します。この数値が高い場合、染色体異常の可能性が疑われます。詳細な超音波検査では、胎児の発育状況や心臓の構造、内臓の異常などを確認します。

羊水検査や絨毛検査などの侵襲的な検査によって確定診断を行います。羊水検査は妊娠15〜18週頃に行われ、絨毛検査は妊娠10〜13週頃に行われます。

出生後の診断では、身体的な特徴や症状から18トリソミーが疑われることがあります。診断を確定するためには、血液検査を通じて染色体異常の有無を確認します。

18トリソミー(エドワーズ症候群)の治療

18トリソミー(エドワーズ症候群)の治療は、個々の患者の症状や状態に応じて多岐にわたります。この疾患自体を根本的に治療する方法は現在存在しませんが、症状を緩和し、生活の質を向上させるための医療ケアをします。

新生児期には、先天性心疾患や呼吸器の問題など、生命に関わる重大な症状が多く見られます。これらの問題に対しては、新生児集中治療室(NICU)で専門的なケアをします。心臓手術が必要な場合もあり、適切な時期に行われることで生存率が向上することがあります。

呼吸器の問題に対しては、人工呼吸器の使用や酸素療法が行われることがあります。食道閉鎖や胃食道逆流などの消化器系の問題に対しては、外科的な治療が必要となることもあります。

さらに、成長と発達を促すために、理学療法や作業療法、言語療法などのリハビリテーションが行われます。これにより、運動能力やコミュニケーション能力の向上を図ります。加えて、遺伝カウンセリングや心理的支援によって、家族全体が適切な支援を受けられます。

18トリソミー(エドワーズ症候群)になりやすい人・予防の方法

18トリソミー(エドワーズ症候群)は、特定の遺伝的要因や環境要因によって発生することがあります。特に、母親の年齢が高い場合にリスクが高くなります。35歳以上の妊婦は、若年の妊婦に比べて染色体異常のリスクが高くなるため、注意が必要です。

しかし、年齢以外の要因も影響を与える可能性があります。過去に染色体異常のある子どもを出産したことがある場合や、家族に遺伝的な疾患の履歴がある場合には、遺伝カウンセリングを受けることでリスクを評価し、適切な対策を講じることができます。

妊娠前および妊娠中に健康管理を行うことである程度予防できます。妊娠前に遺伝カウンセリングを受けることで、リスクを理解し、適切な計画を立てることができます。妊娠中は、定期的な妊婦健診を受け、必要に応じて出生前診断を行うことで、早期発見と対応ができます。

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