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線維性骨異形成症
松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

線維性骨異形成症の概要

線維性骨異形成症とは、通常の骨が線維性結合組織に置き換わる病気です。通常の骨よりも柔らかい線維性結合組織に置き換わることで、病的骨折の原因となります。良性腫瘍のような病変が現れますが、悪性化することはほとんどありません。

線維性骨異形成症は10〜20代の若年層に多く発症する病気で、体の成長とともに病変の拡大も止まるケースが多いことが特徴です。骨を形成する遺伝子の異常が原因ですが、子や孫に遺伝することはないと考えられています。

症状は発生する部位によって異なります。頭蓋骨に発症した場合は、病変が脳や視神経などを圧迫することがあるため注意が必要です。また、四肢(手足)に出現した場合には痛みなどによる日常生活の制限のほか、成長障害が大きな問題となります。また、無症状で経過することも少なくありません。

治療法として、症状がある場合は病変の除去を第一に考えます。外科的な病変の除去のほか、病的骨折の既往がある場合には「髄内釘」などで骨の固定を検討します。

また、関連疾患である「マッキューン・オルブライト症候群」にも注意が必要です。マッキューン・オルブライト症候群では皮膚や内分泌系に異常が生じるため、対症療法や予防のための定期検診が重要になります。

出典:日本臨床口腔病理学会 線維性骨異形成症

線維性骨異形成症の原因

線維性骨異形成症の原因は、骨を形成する遺伝子(GS蛋白αユニット)の異常です。この遺伝子に異常が起こることで正常な骨が線維性の骨組織に置き換わります。また、親から子に遺伝するタイプではなく、遺伝子の突然変異によって生じます。

線維性骨異形成症の前兆や初期症状について

線維性骨異形成症は、とくに前兆なく10〜20代に好発します。病変が一つの「単骨性」と病変が複数ある「多骨性」に分類され、単骨性であれば徐々に全身に症状が進行します。なお、発育の終了とともに症状の進行も止まります。多くが良性腫瘍であり、悪性化することはまれです。

線維性骨異形成症が頭蓋骨に発症した場合、腫瘍による顔面の非対称や頭痛、複視、視力低下といった症状がみられることがあります。四肢に出現した場合に多くみられる症状は、腫瘍による痛みや歩行障害、成長障害による四肢長差、骨の脆弱性による病的骨折です。

また、線維性骨異形成症の関連疾患であるマッキューン・オルブライト症候群を合併している場合は、骨以外にも症状が出現します。とくに多いのは皮膚症状で、大半の症例で出生直後もしくは出生後まもなく「カフェオレ斑」が発症します。加えて女児の性的早熟や甲状腺疾患などの内分泌障害もみられることが特徴です。

線維性骨異形成症の検査・診断

線維性骨異形成症の検査ではレントゲンやCT、MRIといった画像検査で骨の状態を確認します。しかし、画像検査だけでは線維整骨異形成症とは診断できないため、確定診断には病理検査が必要です。

病理検査は、骨の病態に加えて、皮膚のカフェオレ斑や性的早熟、甲状腺疾患など、マッキューン・オルブライト症候群の特徴が見られた場合に行います。画像所見と病理検査の結果を踏まえて線維性骨異形成症と診断されます。

線維性骨異形成症の治療

線維性骨異形成症の治療は、手術によって線維化した骨を除去するのが主流です。手術方法は線維化した骨の一部を取り除く骨掻爬(こつそうは)や骨移植、骨切り術、髄内釘固定術(ずいないていこていじゅつ)、人工関節置換術などがあります。

このうち、骨切り術と人工関節置換術は、骨の成長に関わる「骨端線」を破壊する可能性があるため、成長過程の若年者には骨掻爬や骨移植が望ましいです。しかし、病的易骨折の既往がある症例では強固な固定が必要になるため、髄内釘固定術が選択されることもあります。

また、線維性骨異形成症は発症する部位の機能が低下し、骨の変形が進む可能性があります。股関節の内反変形や脊柱側弯は骨の成長に悪影響となるため、筋肉の機能を高めて骨の安定性を図る運動療法が効果的です。

マッキューン・オルブライト症候群を併発している場合は、それぞれの症状に対して対症療法が行われます。多くの症例でみられる皮膚のカフェオレ斑に対しては、レーザー光線や内服薬、皮膚移植が検討されます。

女児の性的早熟には成長ホルモンを調整する薬、甲状腺疾患に対しては甲状腺の機能を抑える薬が検討されます。しかし、マッキューン・オルブライト症候群による甲状腺の機能亢進は永続的であるため、症状によっては甲状腺の一部を切除することも必要です。

線維性骨異形成症になりやすい人・予防の方法

線維性骨異形成症になりやすい人や予防の方法は明らかになっていません。

しかし、発症後の病的骨折やマッキューン・オルブライト症候群の症状悪化を予防する方法はあります。発症後は、転倒や骨への衝撃が骨折の原因となるため、激しい接触を伴うスポーツは骨折予防のために避けたほうが良いでしょう。

マッキューン・オルブライト症候群の症状悪化を防ぐには、それぞれの症状に対する定期検診が重要となります。そのため、皮膚科や内科それぞれの医師の診察を定期的に受けることが不可欠です。

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