

監修医師:
岡田 智彰(医師)
目次 -INDEX-
リスフラン靭帯損傷の概要
リスフラン靭帯損傷は、足にかかる強い力やねじれ、捻挫などによって発生する外傷です。交通事故やスポーツ外傷、転倒などが主な原因で、損傷が進行すると、歩行障害や慢性的な足の痛みを引き起こし、生活の質を大きく低下させることがあります。
リスフラン靭帯は、足の中足部(足の甲の中央あたり)と前足部(つま先側)をつなぐリスフラン関節を支えている重要な靭帯の一つです。この靭帯は複数の線維束で構成され、足の骨をしっかりと固定して歩くときのバランスや足の安定性を保つ役割を担っています。しかし、靭帯の本数が多いからといって必ずしも関節の安定性が高いわけではないことも最近の研究で示されています。
リスフラン靭帯損傷はリスフラン関節を構成するなかでも第1中足骨と第2中足骨の根本の靭帯が損傷する外傷を指します。足の土踏まずは前後左右ともにアーチ構造をしています。リスフラン靭帯損傷はこのアーチ構造の中心、土踏まずの中でも最もストレスがかかる部位での外傷です。この関節の機能が損なわれると足全体の機能低下を招きます。しかし、リスフラン靭帯は足の深い部分に位置しているため、症状が軽微な場合は初診時に診断しづらいこともあります。
リスフラン靭帯損傷の原因
リスフラン靭帯損傷は、足のリスフラン関節周辺に強い外力が加わることで起こります。具体的には以下のような状況が原因となります。
強い衝撃やねじれ
交通事故や高所からの落下など、足に強い衝撃が加わった場合に靭帯が引き伸ばされて損傷します。
スポーツ外傷
サッカーやバスケットボール、ラグビーなど、足を強く踏み込んだり急に方向転換をするスポーツでの土踏まずに対する強い衝撃が原因となることがあります。
軽微な外傷でも発症
転倒や足首の捻挫など、軽い外傷でもリスフラン靭帯が損傷することがあります。特に足の爪先立ちや内返し(足の裏が内側に向く動き)が過度に行われると靭帯に負担がかかります[3]。
足の構造的な問題や加齢
長時間の負荷や靭帯の老化によって靭帯の強度が低下し、損傷しやすくなることもあります。
リスフラン靭帯損傷の前兆や初期症状について
リスフラン靭帯損傷の初期症状は、受傷直後から現れることが多く、以下のような特徴があります。これらの症状が現れたときは整形外科を受診しましょう。
足の甲の痛み
足の甲の中足部(土踏まずの中央あたり)、特にリスフラン関節周辺に強い痛みを感じます。
腫れや熱感
足の甲が腫れたり、熱を持ったりすることがあります。
歩行困難・体重をかけにくい
痛みのために足に体重をかけるのが難しくなり、歩く際に体重がかかることで痛みを生じます。歩行がしにくくなります。
足の変形や不安定感
靭帯が損傷すると関節が不安定になり、足の形が変わったり、ぐらつきを感じたりすることがあります。
足底のあざ(皮下出血)
リスフラン損傷が重度の際に、足の裏に足底斑状出血と呼ばれるあざができることがあります。
これらの症状は、受傷後すぐに現れることもあれば、数日経ってから徐々に強くなることもあります。軽度の損傷では痛みや腫れが軽く、確定診断に至らないことがあるので注意が必要です。
リスフラン靭帯損傷の検査・診断
リスフラン靭帯損傷の診断には以下の検査が用いられます。
問診・身体診察
受傷の状況や症状の詳細を聞き、足の腫れや痛みのある場所を確認します。足の変形や関節の不安定性を調べることも重要です。
単純X線検査(レントゲン)
足の骨の位置関係を確認し、骨折や関節のずれ(離開)がないか調べます。第1中足骨と第2中足骨の基部間の距離が広がっている場合はリスフラン靭帯損傷が疑われます。ただし、軽度の靭帯損傷ではX線に異常が見られないことも多いです。
荷重時X線撮影
立って体重をかけた状態でX線を撮ることで、関節の離開や不安定性をより明確に評価します。ただし、痛みが強い場合は荷重が困難なことがあります。
CT検査
骨の詳細な状態を確認するために行われます。骨片の剥離や微細な骨折の有無の確認に有効です。
MRI検査
靭帯や軟部組織の損傷を評価します。靭帯が損傷している場合が線維の破綻や部分的な出血の所見が色調変化として表れます。
キシロカインテスト
局所麻酔薬を痛みのある関節内に注射し、痛みが軽減するかを確認する検査です。痛みが改善すれば、損傷部位の特定に役立ちます。
これらの検査結果と症状を総合して診断が行われ、損傷の程度や関節の安定性に応じて治療方針が決まります。
リスフラン靭帯損傷の治療
リスフラン靭帯損傷の治療は、損傷の程度や関節の安定性によって異なります。大きく分けて保存療法と手術療法があります。
保存療法
軽度の損傷で関節の安定性が保たれていれば、保存療法で多くは良好な結果が得られます。
安静・免荷(体重をかけない)
痛みや腫れがある間は、松葉杖などを使って足に体重をかけないようにします。通常は4~6週間程度行います。
固定
ギプスやシーネ(副木)で足を固定し、関節の動きを制限して靭帯の回復を促します。
消炎鎮痛剤
痛みや炎症を抑えるために薬が使われます。
リハビリテーション
痛みが落ち着いた後、筋力やバランスを回復させるために運動療法を行います。
装具療法
アーチサポート付きインソールという中敷きを使用することで、土踏まずにかかる負担を軽減させ、靭帯の回復を促します。
手術療法
関節の離開や不安定性が重度である場合、保存療法で改善がみられない場合、あるいは慢性的な痛みが続く場合に手術が検討されます。
手術内容
損傷した靭帯の修復や、関節の整復(骨の位置を正しく戻すこと)、骨片の除去を行います。固定具(プレートやスクリュー)を使って関節を安定させることが一般的です。
術後管理
手術後はギプス固定や免荷を行い、徐々に体重をかけるリハビリを開始します。完全なスポーツ復帰には術後3-6ヶ月の期間を要します。
手術を行った場合でも、リハビリテーションをしっかり行うことが重要で、早期に適切な治療を受けることで長期的な足の機能障害を防ぐことができます。
リスフラン靭帯損傷になりやすい人・予防の方法
なりやすい人
スポーツをする方
特にサッカー、バスケットボール、ラグビーなど足に強い負荷や急激な方向転換が多いスポーツをする方はリスフラン靭帯損傷のリスクが高い傾向にあります。
過去に足の捻挫や外傷を経験した方
靭帯の脆弱化や関節の不安定性が残っている場合、損傷しやすいと言われています。
足の構造に問題がある方
扁平足や凹足など足のアーチの大きさに過不足がある方は足部の負担が増え、靭帯損傷のリスクが高い傾向にあります。
高齢者や靭帯の劣化が進んでいる方
靭帯の緊張が低下し、損傷しやすい状態です。
予防の方法
適切な靴の着用
足に合った靴を履き、足の安定性を保つことが重要です。スポーツ時は専用のシューズを使いましょう。
足首や足の筋力強化
足の周りの筋肉を鍛えることで関節の安定性を高め、靭帯への負担を減らします。
柔軟性の維持
ストレッチやウォームアップを十分に行い、関節や靭帯の柔軟性を保つことが大切です。
無理な動作や過度な負荷を避ける
特に足の爪先立ちや急激な方向転換、ジャンプの着地などで足に強い負荷をかけないよう注意しましょう。
早期の受診と適切な処置
足の痛みや腫れが続く場合は早めに専門医を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
関連する病気
- リスフラン関節脱臼骨折
- 中足部不安定症
- 慢性足部痛(足根部痛)
- 外傷性関節症(変形性関節症)
- 偽関節・骨癒合不全
参考文献




