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岡田 智彰

監修医師
岡田 智彰(医師)

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昭和大学医学部卒業。昭和大学医学整形外科学講座入局。救急外傷からプロアスリート診療まで研鑽を積む。2020年より現職。日本専門医機構認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定整形外科指導医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リハビリテーション医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。

骨腫瘍の概要

骨腫瘍とは、骨に発生する腫瘍の総称です。主に良性骨腫瘍と悪性骨腫瘍に分けられます。良性骨腫瘍の場合、生命に悪影響を及ぼす可能性は低いといわれています。成長が遅く、自然に消えることもあります。
良性骨腫瘍は20種類以上あり、骨軟骨腫や内軟骨腫などが多くを占めます。生じやすい部位は、膝関節や股関節の周囲の骨、手の骨などです。

一方、悪性骨腫瘍転移や再発のリスクがあるため、早期の診断と治療が重要です。転移性骨腫瘍と原発性骨腫瘍があり、転移性の腫瘍が多くを占めます。
転移性骨腫瘍とは、ほかの臓器に発生したがんが骨に転移する腫瘍のことで、肺がん・乳がんなどから転移するのが特徴です。

また原発性骨腫瘍は、がんが骨自体から発生する腫瘍です。10代で発症しやすい傾向にありますが、種類によっては40代に好発する腫瘍もあります。
腫瘍ができやすい部位として挙げられるのは、膝・股関節・肩周辺などです。

原発性悪性腫瘍の代表的な疾患は以下の4つです。

  • 骨肉腫
  • 軟骨肉腫
  • ユーイング肉腫
  • 骨巨細胞腫

原発性骨腫瘍の大半は、肉腫と呼ばれる腫瘍であり、日本全体では500〜800人/年の患者さんで発症していると推定されています。そのうち、骨肉腫が30%を占めています。
肉腫にもさまざまな種類があり、それぞれに異なる治療が必要です。

骨腫瘍は頻度の少ない病気ですが、早期発見できれば治療の選択肢が広がり、生活の質(QOL)の維持につながります。違和感や気になる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診し早期発見することが重要です。

骨腫瘍の原因

骨腫瘍の原因は、はっきりとはわかっていないことも多くあります。ここでは骨腫瘍の原因について、良性と悪性に分けてみていきましょう。

良性骨腫瘍

良性骨腫瘍の原因について、解明されていないことも多くあります。しかし、一部の良性腫瘍では遺伝的な関与があることが知られています。

また、良性であっても骨の表面が隆起して運動の妨げになったり、腫瘍によって骨が脆くなることで負担がかかり痛みを生じたりすることがあります。骨の発達や成長との関連性が指摘されることもあります。

悪性骨腫瘍

悪性骨腫瘍のうち、原発性骨腫瘍の多くは原因が明らかになっていません。一部の腫瘍において、特異的な遺伝子異常や染色体異常の存在がわかっています。しかし、遺伝子を持ったすべての人が発症するわけではないと言われています。転移性骨腫瘍とは、別の部位でのがん(肺がん、乳がんなど)のがん細胞が、血液やリンパの流れに乗って骨に運ばれてしまい、骨髄で増殖してしまうことを指します。

骨腫瘍の前兆や初期症状について

続いて、骨腫瘍の前兆や初期症状と、受診すべき診療科目について解説します。

良性骨腫瘍の前兆・初期症状

骨が隆起していたり、運動や歩行時に痛みを感じたりして気付かれることがあります。多くの場合、痛みは軽度ですが、夜間痛が生じることもあります。

悪性骨腫瘍の前兆・初期症状

怪我をしていないのに痛み・腫れが持続したり、骨がもろくなり骨折したりして気付かれることがあります。
肉腫の一種である軟部肉腫では、痛みを伴わないしこりが感じられることもあります。痛みがないために放置してしまい、悪化してから受診する方も少なくありません。
また肉腫が隣接する神経を圧迫し、しびれや麻痺などの神経症状を認める場合もあります。さらに症状が進行した場合、皮膚表面のただれ(潰瘍)が生じることもあります。

受診すべき診療科目

上記の症状が続く場合は、整形外科の受診をおすすめします。成長期の子どもが訴える、なんとなく足が痛い・よくつまずくなどの症状も、専門医に相談しましょう。

骨腫瘍の検査・診断

骨腫瘍が疑われる場合、血液検査・画像検査・組織検査が行われます。

血液検査

骨腫瘍の種類によっては、血液検査で異常値がみられることがあります。骨肉腫では、ALP(アルカリフォスファターゼ)という酵素の値が高くなることがあります。またユーイング肉腫では、LDH(乳酸脱水素酵素)や、炎症反応を示す白血球数(WBC)・C反応性蛋白(CRP)などの数値が上昇することがあります。骨腫瘍においては、腫瘍マーカーと呼ばれるがんに特徴的なタンパクはありません。

画像検査

骨の状態や腫瘍の広がりを確認するために、以下の画像検査が行われます。

  • 単純X線検査(レントゲン)
  • CT検査
  • MRI検査
  • 骨シンチグラフィやPET検査

それぞれの検査について、詳しく解説します。

単純X線検査(レントゲン)

単純X線検査は、骨腫瘍において特に重要な検査です。骨の変形や、骨が溶けているのか異常に増殖しているのかの違いがわかります。レントゲン写真から、骨腫瘍の種類が推測できる場合もあります。

CT検査

単純X線検査ではわからない微細な骨の構造まで詳しく確認できます。腫瘍の形や大きさや位置を正確に把握するためには造影剤が用いられます。

MRI検査

MRI検査は病変の性状を評価できるため、良性か悪性かの判断、腫瘍の周囲への影響を確認できます。そのため手術前の切除範囲の計画や化学療法後の効果の確認として検査する場合もあります。

骨シンチグラフィやPET検査

骨シンチグラフィやPET検査の結果では、腫瘍の転移有無と位置を確認できます。

組織検査

組織検査により、骨腫瘍の最終的な診断を行います。組織検査として、生検が行われます。生検とは、腫瘍組織を採取して病気の種類を判断したり、細胞が良性か悪性かを確認したりする検査です。
生検の方法として、針生検や切開生検、切除生検があります。それぞれの特徴は以下のとおりです。

  • 針生検:細い針で腫瘍の一部を採取する方法
  • 切開生検:皮膚を切開して腫瘍の一部を採取する方法
  • 切除生検:腫瘍を摘出して診断を確定する方法

切除生検は、悪性腫瘍だった場合に追加手術が必要になることがあるため、針生検か切開生検が行われるのが一般的です。
生検の手技が的確でないと、より大がかりな手術が必要となったり、腫瘍の周辺組織を汚染したりする恐れがあります。信頼できる地域の基幹病院や大学病院などで行うことが望ましいでしょう。

骨腫瘍の治療

骨腫瘍の治療方法は、腫瘍の進行度や、良性か悪性かによって異なります。

良性骨腫瘍の治療

良性骨腫瘍には、特に治療を必要としない場合がある一方で、早期に専門的な治療が必要な場合もあります。
手術は痛み・変形などの症状を改善するために行われ、隆起している腫瘍を切除したり、骨内の腫瘍を掻き出してほかの場所から骨を移植したりします。

悪性骨腫瘍の治療

悪性骨腫瘍の大半を占める骨肉腫の治療法として、基本となるのは手術療法です。病気の種類によっては、手術に加えて抗がん剤治療や放射線治療を追加します。それぞれについて解説します。

手術療法

腫瘍細胞を取り残さないように、周囲の正常な骨や筋肉も含めて切除する広範切除が行われます。腕や脚において腫瘍が重要な神経や血管に及んでいる場合は、切断せざるを得ない場合もあります。

化学療法(抗がん剤治療)

骨肉腫やユーイング肉腫と診断された場合は、手術の前後に抗がん剤治療(化学療法)を行います。

放射線療法

肉腫の種類によっては、手術や化学療法に加えて放射線治療を行うこともあります。

その他の治療法

転移性骨腫瘍の治療においては、抗がん剤や放射線治療のほかに、ホルモン治療や骨吸収抑制剤などを用いた治療が行われることがあります。

骨腫瘍になりやすい人・予防の方法

骨腫瘍の多くは原因が明らかになっておらず、なりやすい方の特徴はわかっていません。
一部の腫瘍においては、遺伝的な要因が関係していることが明らかになっており、家系に骨腫瘍を患う方がいる場合は発症の可能性があります。
また悪性骨腫瘍のうち、転移性腫瘍については、がんの既往がある方に発症リスクがあります。

いずれも確実な予防方法は明らかになっていないため、早期に発見し治療を開始することで、悪化を防ぐことが重要です。

関連する病気

  • 骨軟骨腫(外骨腫)
  • 類骨骨腫(Osteoid osteoma)
  • 骨嚢腫(単純性骨嚢腫)
  • 線維性骨異形成
  • 巨細胞腫

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