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大腿骨内顆骨壊死症
松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

大腿骨内顆骨壊死症の概要

大腿骨内果骨壊死症(だいたいこつないかこつえししょう)とは、大腿骨(太ももの骨)の膝関節部分の内側が壊死する病気です。原因が不明な「一次性(特発性)」と薬剤や疾患などが原因で起こる「二次性」に分類されます。

一次性の大腿骨内果骨壊死症は中高年に発症することが多く、男女比は1:2〜3と女性に発症しやすい傾向があります。外傷や血流障害などによって発症すると考えられていますが、未だはっきりとした原因は判明していません。二次性の大腿骨内果骨壊死症は膠原病やステロイドの長期内服が原因です。

どちらのタイプでも発症初期から膝の激痛を訴え、夜間の安静時痛を特徴としています。

大腿骨内果骨壊死症は、壊死範囲の大きさや進行度合いによって4段階にステージ分類され、ステージごとに画像所見や治療方法が異なります。ステージ1ではレントゲン画像に変化が見られません。MRIで早期発見でき、薬物療法などによって自然回復の可能性がある時期です。

ステージ2になるとレントゲン画像で骨の透過像が確認できるようになり、徐々に壊死の範囲が広くなります。多くのケースでステージ2までは薬物療法・運動療法などの保存療法が適応となります。

ステージ3になると、壊死部だけでなくその周囲が白く映る硬化像が見られるようになります。また、壊死部の関節側に石灰板(せっかいばん)が見られることが特徴です。ステージ3以降では壊死の範囲が広く自然回復が見込めないため、症状の程度によって手術療法が検討されます。

ステージ4では関節の変形や骨棘(こつきょく)の形成が見られるようになり、変形性膝関節症と診断される時期です。変形性膝関節と同様に、人工膝関節置換術が適応になります。

出典:澤田浩克 et al 大腿骨果部骨壊死 日大医誌 69巻 6号 2010

大腿骨内顆骨壊死症の原因

大腿骨内果骨壊死症の原因は一次性と二次性でそれぞれ異なります。

一次性大腿骨内果骨壊死症の原因は未だ判明していません。血流障害や骨粗鬆症、半月板損傷、骨折などさまざまな可能性が考えられていますが、はっきりとした原因は不明です。二次性大腿骨内果骨壊死症はステロイド薬の服用や膠原病などが原因です。

大腿骨内顆骨壊死症の前兆や初期症状について

大腿骨内顆骨壊死症の初期症状は突然発症する急激な痛みです。膝を動かしたり体重をかけたりすると増悪する痛みで、日常生活動作が困難になります。動作時の痛みだけでなく夜間の安静時痛も見られることがあります。

このような急激な痛みは2ヶ月程度で軽減していくことが多いですが、その後もわずかに持続します。

大腿骨内顆骨壊死症の検査・診断

大腿骨内果骨壊死症はレントゲン検査やMRI検査による画像検査で診断されます。

レントゲン検査では骨壊死がある大腿骨内果部が透けて見えます。さらに、骨壊死部の周囲が白くなる骨硬化像が特徴です。このような所見が認められず変形性膝関節症との鑑別が難しい場合、MRI検査を行います。

大腿骨内顆骨壊死症の治療

大腿骨内果骨壊死症の治療ではまず保存療法をおこない、壊死が広がった場合や保存療法で効果が出せなかった場合に手術療法を検討します。保存療法では消炎鎮痛薬などの薬物療法、自宅での体操やリハビリテーションなどの運動療法が中心です。

薬物療法

薬物療法では消炎鎮痛薬や関節内注射で痛みの緩和を図ります。とくに夜間の痛みなどで日常生活に支障が出るケースでは有効と考えられています。

運動療法

膝・股関節まわりの筋力トレーニングや、膝に負担をかけない動作の練習を行います。大腿骨内果骨壊死症では壊死部に体重をかけると壊死が進行するリスクがあるため、膝へ負担をかけない動作の練習が重要です。

手術療法

保存療法で効果が改善が乏しい場合、手術療法を検討します。壊死している部位が狭くあまり進行していない場合、関節鏡手術や、脛骨骨切り術、人工膝関節置換術が適応です。

壊死が広がっていて変形性膝関節症のような変形も合併しているケースでは、人工膝関節置換術を検討します。

大腿骨内顆骨壊死症になりやすい人・予防の方法

一次性の大腿骨内果骨壊死症は原因が判明していませんが、中高年の女性に発症しやすい傾向があります。二次性の大腿骨内果骨壊死症では、膠原病の既往歴がある人やステロイドの内服をしている人に発症しやすいことがわかっています。そのため、該当する場合には定期検診を受け、変化を注意深く見極めることが大切です。

予防方法は、大腿骨内果部へかかる負担を減らすことです。そのためには、膝関節周囲の筋肉をつけることや体重を減らすことが大切になります。

また、O脚変形があれば大腿骨内果への負担が大きくなる傾向があります。そのような人は靴の中敷(インソール)や足底板などの装具を使用し、O脚変形を矯正することで予防につながる可能性があります。

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