

監修医師:
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)
目次 -INDEX-
脊椎分離症の概要
脊椎分離症(一般には腰椎分離症が多い)は、椎弓の一部が疲労骨折を起こすことで椎体と椎弓の連続性が失われる疾患です。
とりわけスポーツ活動が盛んな10~20歳代に好発し、腰椎に繰り返し強い負荷(過度な伸展や回旋動作など)がかかることで骨折に至ると考えられています。長期間の激しい運動や不適切なトレーニング量などが背景要因となりやすく、特に小学生から高校生の時期に腰痛が2週間以上続く場合、脊椎分離症を強く疑う必要があります。
多くは腰椎の下部、特にL5レベルで発生し、場合によっては偽関節を形成してすべり症へ移行することもあります。
脊椎分離症の原因
脊椎分離症の多くは、椎弓の「関節突起間部」に繰り返される負担が主な原因です。椎弓の後部(椎間関節周辺)が、運動時に伸展や回旋によって集中した負荷を受け、結果として疲労骨折が生じるとの考え方が主流です。
- スポーツ活動
野球、サッカー、バレーボール、体操など、腰を大きく反らしたり、ひねったりする動作を繰り返す競技で特に発症リスクが高い。 - 日常的な負荷
重い物の持ち上げなどで繰り返し腰にストレスがかかる状況も誘因となる。 - 遺伝的要素
骨の形態や発育上の特徴により椎弓が脆弱である場合、分離症の発生リスクが高まる可能性が示唆されている。
椎弓の疲労骨折が一度発生すると、進行や治癒の状態によって初期、進行期、終末期(偽関節)などと分類されます。初期・進行期に適切な治療を行えば骨癒合が期待できますが、終末期になると偽関節化してしまい、骨癒合は得られない状態となります。
脊椎分離症の前兆や初期症状について
脊椎分離症の前兆や初期症状は下記のとおりです。疑わしいときは整形外科を受診しましょう。
腰痛
最も多い症状は腰痛で、腰を反らす(伸展する)・ひねる(回旋する)動作で痛みが強まることが特徴的とされます。ただし、初期にはどの動作でも痛む場合があり、スポーツ活動や日常動作の制限が生じることもあります。特に激しいスポーツを行う中学生・高校生に多く、痛みが2週間以上続く場合や、再発を繰り返す場合は要注意です。
下肢症状
椎弓の分離部に形成される線維組織や骨片などが神経根を圧迫すると、下肢にかけてのしびれや痛み(坐骨神経痛様症状)が出現することがあります。長期間放置され、分離すべり症にまで進行すると、さらに神経圧迫が強まる可能性があります。
触診・視診
腰椎の棘突起や椎弓付近を押すと強い圧痛が認められることがあり、また腰椎の後弯や前弯の状態、姿勢、歩行状況などを総合的に観察することで分離症を疑う場合があります。
脊椎分離症の検査・診断
脊椎分離症の検査および診断は下記のとおりです。
単純X線検査
腰椎の正面像・側面像・斜位像を撮影しますが、初期・進行期の疲労骨折では単純X線検査のみでの診断が難しい場合が多いです。斜位像で見られるスコッチテリア犬の首輪サインは、終末期(偽関節)になってから明瞭になることが多いため、早期診断の頼みとはなりにくいです。
CT検査
椎弓の関節突起間部を斜めにスキャンすることで、骨折線(分離部)の有無や骨硬化、偽関節の形成状況などを正確に把握できます。分離の進行度は、CT所見によって以下のように大別されます。
- 初期
部分的な骨透亮像や細い亀裂(hairline)がみられる - 進行期
明瞭な亀裂を伴い、分離部が開大しているが、骨硬化はまだ少ない - 終末期
分離部に骨硬化がみられ、偽関節状態にいたっている
CTは分離の状態評価に極めて有用な手段ですが、放射線被曝の問題もあるため、撮影範囲などを慎重に検討します。
MRI検査
CT検査で骨折線がはっきりしない段階、いわゆる超初期でもMRIで椎弓根部の骨髄浮腫(高信号)として検出可能です。これは骨折が発生する前段階のstressreactionと解釈され、早期の診断や経過観察に欠かせません。また、MRIでは分離部付近の軟部組織や神経根の圧迫像も確認でき、下肢症状の原因を評価する際に有用です。
神経ブロック・選択的神経根造影
下肢症状が出現している場合、その神経根レベルを特定し、症状の原因が椎弓分離によるものか椎間板病変など別の要因かを判断するために行われることがあります。
脊椎分離症の治療
保存的治療
初期・進行期(骨癒合を目指す場合)
完全な運動中止や硬性コルセット装着などの局所安静を徹底し、3~6ヶ月程度を目安に治療します。CTやMRIで骨癒合の進行を定期的に確認しながら、痛みが引いても骨癒合が確認されるまでは激しいスポーツは再開しないように指導します。
終末期(偽関節化)
骨癒合は望めず、主に症状緩和を目的とします。コルセット着用や消炎鎮痛薬の内服、リハビリテーションなどが中心です。分離部が痛みの原因と判断される例には、分離部ブロック(局所麻酔薬・ステロイド注射)が有効な場合もあります。
手術療法
分離部修復術
分離部由来の痛みが強く、保存的治療やブロックで改善しない場合に行われます。椎弓根スクリューやロッドを用いて分離部を内固定し、骨移植を行う方法などが報告されています。骨癒合が得られると長期的な腰痛改善につながる場合が多く、運動への早期復帰が期待される例もあります。
脊椎固定術
分離すべり症を伴い、神経圧迫や不安定性が高度な場合には、すべり椎間を金属固定(椎弓根スクリュー固定)しながら神経除圧(椎弓形成術など)を行うことがあります。ただし、成長期の骨に対する手術は将来的な脊椎の成長や柔軟性に影響する可能性もあり、十分な検討が必要です。
脊椎分離症になりやすい人・予防の方法
ハイリスク群
スポーツ選手や運動量の多い小中高生が主な対象となります。例えば、野球・サッカー・バレーボール・体操など腰部を大きく伸展・回旋する競技でリスクが高いとされます。また、姿勢が悪く腰に負担がかかりやすい生活習慣も誘因となる可能性があります。
予防・対策
- 適切なトレーニング量と休養
疲労の蓄積を防ぎ、腰痛を感じたら早めに練習量を調整する - 体幹のストレッチ・筋力トレーニング
腹筋・背筋など体幹周りの筋力をバランスよく鍛え、椎弓への負担を軽減 - 正しいフォームと動作
コーチやトレーナーの指導を受け、無理のないフォームで競技を行うことが重要 - 早期受診・早期対応
腰痛が数週間以上続く場合や痛みが増強する場合は、すぐに専門医を受診し、必要に応じてCTやMRI検査を受ける
関連する病気
- 脊椎すべり症
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 脊椎骨折
参考文献
- WiltseLL,WidellEHJr,JacksonDW.Fatiguefracture:thebasiclesionisisthmicspondylolisthesis.JBoneJointSurgAm.1975;57(1):17–22.
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- SakaiT,etal.Diagnosisandtreatmentofpediatricspondylolysis.OrthopClinNorthAm.2015;46(2):269–275.
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