

監修医師:
高宮 新之介(医師)
目次 -INDEX-
頭蓋底骨折の概要
頭蓋底骨折は、頭蓋骨の底部に発生する骨折で、通常は外傷や強い衝撃によって引き起こされます。頭蓋底は前頭蓋底、中頭蓋底、後頭蓋底の3つに分類され、脳や生命維持に重要な脳幹、血管、脳神経など重要な構造が存在する部分です。
骨折によって脳や神経が損傷される場合、意識障害や神経麻痺、出血などの重篤な症状が現れることがあります。生命維持に関わる機能が影響を受けるため、早期診断と適切な治療が必要です。
治療は骨折の重症度や合併症によって異なります。軽度の場合は安静や観察が行われますが、重度の場合や合併症がある場合には手術療法が選択されます。
このように、頭蓋底骨折はさまざまな症状と合併症を伴う複雑な外傷なため、早期の診断と適切な治療が重要です。
頭蓋底骨折の原因
頭蓋底骨折は、強い衝撃が頭部に加わることで発生します。以下に主な原因を解説します。脳神経外科でCT検査、MRI検査の画像診断などを行えば詳細な評価ができ、適切な治療を早期に開始できます。
頭蓋底骨折は、適切な治療を受けないと重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、軽度の症状でも自己判断せずに医療機関で精密検査を受けましょう。
交通事故
自動車の衝突や自転車などの交通事故で、頭部に強い衝撃が加わった結果、骨折を発症します。特に、高速の状態で衝突すると発症する可能性が高くなります。
高所からの落下
階段からの転落や高い所での作業中の事故が原因となることがあります。
スポーツ事故
ラグビー・アメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツや、ボクシング・空手などの格闘技で、頭部に直接的な衝撃が加わることが原因で発症する場合があります。
暴力的な外傷
喧嘩などの暴力行為によって、外部から強い力で殴打された場合にも、頭蓋底骨折が発生することがあります。
転倒
転倒によって頭を打った結果、骨折を発症することがあります。特に高齢者の場合、骨が弱くなっているため、弱い外力でも骨折する可能性があります。
頭蓋底骨折の前兆や初期症状について
頭蓋底骨折は突然の強い外力によって発症し、前兆が見られることはほとんどありません。しかし、骨折が発生した際には以下のような初期症状が現れることがあります。これらの症状を感じた場合は、すぐに脳神経外科または救急外来を受診しましょう。
パンダの目徴候
前頭蓋底の骨折を発症した場合、目の周りの黒っぽいアザが現れるパンダの目徴候がみられます。これは、眼の周囲で外傷が起き、血液が漏れることで形成されるアザです。
眼の周囲の皮膚は薄く、透明度が高いため、わずかな血液の漏れでもアザが目立つようになります。
バトルサイン
中頭蓋底を骨折した場合は、耳の後ろに紫色のアザが出現するバトルサインがみられます。
耳や鼻からの液体漏れ
頭蓋骨骨折によって脳を包む硬膜が破れ、髄液が体外に漏れる状態を髄液漏(ずいえきろう)といいます。この漏れは、骨折部分の隙間を通り、鼻や耳から出るのが特徴です。
頭痛や意識障害
骨折に伴う脳の損傷や圧迫によって、頭痛やぼんやりする、意識がもうろうとするなどの意識障害が見られることがあります。
神経症状
頭蓋底骨折は神経に影響を及ぼす可能性があり、視覚・聴覚障害や麻痺などの運動機能低下、感覚障害などが現れることがあります。
頭蓋底骨折の検査・診断
頭蓋底骨折は主に外傷によって引き起こされ、脳や神経に深刻な影響を及ぼす可能性があります。そのため、迅速かつ正確な診断が求められます。以下では、頭蓋底骨折の検査および診断方法について解説します。
身体評価
医師は、以下のような内容や症状を問診や視診で確認します。
- どのような状況で頭を打ったか(交通事故、スポーツ外傷、転倒など)
- 意識障害の有無
- 鼻や耳から髄液が漏れていないか
- パンダの目徴候、バトルサインの有無
- 頭痛、めまい、吐き気、しびれなどの症状の有無
この段階で、意識障害がある場合は緊急対応が必要と判断し、すぐに画像検査を行います。
画像検査
頭蓋底骨折を評価するために、以下のような画像検査を行います。
X線検査
頭蓋骨骨折の有無は、X線検査で確認することができるため、初期評価として使用されることがあります。しかし、X線検査では骨折の詳細な情報を得ることが難しいため、一般的にはCT検査の方が行われます。
CT検査
頭蓋底骨折の診断において、CT検査はよく行われる検査です。3D画像を用いた検査の場合、骨折の位置や程度を迅速かつ正確に評価できます。
MRI検査
CT検査での評価が不十分な場合には、MRI検査が追加で行われることがあります。MRI検査は、骨折による脳や神経の損傷を詳しく評価するのに役立ちます。
ただし、MRI検査はCT検査より撮影時間が長いため、緊急時にはまずCT検査が優先されます。
頭蓋底骨折の治療
頭蓋底骨折の治療方法は、重症度によって異なりますが、一般的には、保存療法と手術療法に分類されます。
保存療法
軽度の頭蓋底骨折で症状が安定している場合、特別な手術を行わずに経過観察を選択します。
入院期間は1週間程度が一般的で、頭部を安静に保ちながら、神経症状や髄液漏の有無を定期的に観察します。髄液漏は患者さんの状態によって異なりますが、50〜80%は1〜3週間以内に自然に止まるとされています。髄液漏がみられず、全身状態が安定している場合が退院の目安となります。
手術療法
2〜3 週間の保存的療法を行っても症状が改善せず、髄液漏が止まらない場合には、髄膜炎(ずいまくえん)などの感染症にかかる可能性が高くなるため、手術による治療方法が推奨されます。
髄膜炎は脳と脊髄を覆う髄膜に炎症が起こることで、運動障害や聴力障害、認知機能の低下などが生じ、日常生活に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、骨折が脳を圧迫している場合や、脳出血、神経損傷が認められる場合も手術療法の適用となります。
頭蓋底骨折になりやすい人・予防の方法
頭蓋底骨折は、特定の要因を持つ方に発症しやすい外傷ですが、適切な予防策を取ることで発症リスクを減らすことができます。
頭蓋底骨折になりやすい方の特徴
以下の要因に該当する場合は、頭蓋底骨折を発症しやすくなる場合があります。
交通事故に遭いやすい環境の場合
通勤や通学中の交通事故には注意が必要です。自転車やバイク、車を運転する場合や歩行者として移動する場合、事故の衝撃で頭部を強打する可能性があります。
特に、歩行者はヘルメットを着用していないことが多いため、衝突時の衝撃を直接受けやすくなります。
スポーツ選手
ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツ、またはボクシングや空手などの格闘技を行う場合、頭部への衝撃を受ける機会が多く、頭蓋底骨折を発症する可能性が高くなります。
高齢者
高齢者は筋力やバランス感覚の低下、骨密度の減少により、転倒や事故による骨折の可能性が高まります。骨粗鬆症を併発している場合は、わずかな外力でも骨折する可能性があり、より注意が必要です。
予防の方法
以下の予防方法を意識することで、 骨折の発生を予防できる可能性があります。
ヘルメットの着用
バイクや自転車に乗る際は、適切なヘルメットを着用することが重要です。ヘルメットは頭部を保護し、衝撃を吸収する役割を果たします。
自転車の運転時にはヘルメットを着用していない方も多いかもしれませんが、骨折を予防するために、積極的に着用を心がけましょう。
スポーツ時の安全対策を徹底する
スポーツを行う際は、ヘルメットやプロテクターを正しく着用することが重要です。プレー中に頭部を強打した場合には、速やかに専門医の診察を受けましょう。
環境を整備する
高齢者など転倒の危険性がある場合には、滑りにくい床材を使用するなど住環境を整えることで転倒する可能性を減らす効果が期待できます。
関連する病気
- 脳脊髄液漏出症
- 髄膜炎
- 脳神経麻痺
参考文献




