オスグッド・シュラッター病

監修医師：
井林雄太（井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院）

オスグッド・シュラッター病の概要

オスグッド・シュラッター病は、成長期の子どもに多い、膝の痛みを特徴とする疾患です。特に、スポーツを活発に行う10歳〜15歳の男子に多くみられます。膝の下部にある脛骨粗面（けいこつそめん）が突出して、痛みを伴います。
骨の成長が急速に進む時期には、筋肉や腱とのバランスが崩れやすくなります。大腿四頭筋（太ももの前面の筋肉）の収縮により、膝のお皿の下にある靭帯（膝蓋腱）を通じて、脛骨に強い牽引力が加わります。その結果として引き起こされるのが、脛骨粗面の炎症・痛み・腫れ・突出などの症状です。

オスグッド・シュラッター病の9割は、成長期が終わると自然に治癒します。ただし、適切にケアしないまま無理に運動を続けると、痛みが長引き、脛骨粗面が隆起してくることがあります。早期に発見し、適切な対処につなげることが重要です。

オスグッド・シュラッター病の原因

オスグッド・シュラッター病の主な原因は、以下の4つです。

• 成長期における急激な骨の成長
• 繰り返しのスポーツ動作
• 柔軟性の不足
• 準備運動の不足

成長期における急激な骨の成長

骨が急激に伸びると、筋肉や腱が成長に追いつかず硬くなります。特に太ももの前面にある大腿四頭筋が硬くなると、脛骨に強い牽引力が加わります。

繰り返しのスポーツ動作

ジャンプ・ダッシュ・キック動作などを繰り返すことで、脛骨粗面への負荷が蓄積され、炎症や痛みを引き起こします。特にサッカー・バスケットボール・バレーボールなどのスポーツを行うお子さんに多くみられます。

柔軟性の不足

運動前のストレッチ不足や筋肉の柔軟性が低下している状態では、膝にかかる衝撃や負担が直接的に脛骨粗面に伝わりやすくなります。
特に太ももの前面にある大腿四頭筋が硬くなると、脛骨粗面に負担がかかり、炎症を起こしやすくなります。

準備運動の不足

ウォーミングアップやクールダウンを十分にしないと、筋肉が急激に収縮・伸張し、関節への負担が増す可能性があります。準備運動不足の状態で、ジャンプやダッシュなどの運動を繰り返すと、オスグッド・シュラッター病の発症リスクが高まります。

オスグッド・シュラッター病の前兆や初期症状について

オスグッド・シュラッター病は、以下のような前兆や初期症状が見られることがあります。

• 膝の下（脛骨粗面）に痛みが出る
• 膝を曲げたり伸ばしたりすると痛みが増す
• 運動中や運動後に痛みが強くなる
• 膝の下が少し腫れている、または硬いしこりがある

初期段階では軽い痛みや違和感程度ですが、進行すると歩行時にも支障をきたすようになります。早期に気付き、適切な治療を受けることが大切です。

受診すべき診療科目は整形外科です。特に、成長期特有の症状に精通している小児整形外科では、より適切な診療が受けられる可能性があります。

オスグッド・シュラッター病の検査・診断

オスグッド・シュラッター病は、問診や触診、画像検査によって診断されます。それぞれについて解説します。

問診

まずは医師が現在の症状や発症時期、どのような運動をしているかなどを詳しく聞き取ります。問診における主なポイントは以下のとおりです。

• 痛みの場所
• 成長期かどうか
• どのような動作で痛みが出るか
• どれくらいの頻度で運動をしているか

視診・触診

医師が膝を実際に見たり触れたりして、膝下の骨（脛骨粗面）の突出や腫れ、熱感の有無を確認します。押したときに痛みがあるか、歩き方に異常がないかもチェックします。
触診で重視するのは、以下の3点です。

• 膝のお皿の下（脛骨粗面）の突出の有無
• 脛骨粗面を押した際の痛みの有無
• 症状がみられるのは両足か、片足だけかどうか

画像検査（X線・エコー）

骨の状態を詳しく確認することを目的として、一般的にX線（レントゲン）の検査が用いられます。X線にて確認する事項は以下のとおりです。

• 成長軟骨（骨端線）の変化
• 骨がはがれている（剥離している）様子
• 骨折や感染など、ほかの病気との鑑別

ただし、X線では初期段階の異常が見つからないこともあります。これに対しエコーでは初期段階でも異常を発見できるほか、血流の程度も評価できるため、重症度や治療方針を決める際に有用です。
MRIや超音波検査は、ほかの病気との鑑別や重症例において行われることもあります。

オスグッド・シュラッター病の治療

オスグッド・シュラッター病の治療として、保存療法が行われるのが一般的です。保存療法にて痛みが改善されない場合は、手術が行われることもあります。
治療方法として、以下の5つが挙げられます。

• 安静・休息
• アイシング・消炎鎮痛剤
• ストレッチ
• サポーターやベルトの着用
• 手術

上記について、一つひとつみていきましょう。

安静・休息

痛みが強い場合、膝に負担がかかる運動を4週間程度中止し、安静に過ごすことが大切です。休息を取ることは、炎症を抑えるために有効です。

アイシング・消炎鎮痛剤

運動後に痛みが強い場合、氷で膝を冷やす行為であるアイシングを行います。必要に応じて、消炎鎮痛剤が処方されます。

ストレッチ

大腿四頭筋やハムストリングス（太ももの裏の筋肉）のストレッチも治療の一つです。柔軟性を高めることで、膝への負担を軽減できます。

サポーターやベルトの着用

膝にかかる負担を減らすために、専用のサポーターやベルトを着用することもあります。これにより膝の靱帯への負荷を軽減できます。

手術

上記の治療方法にて痛みが改善されない場合、手術が行われることもあります。
痛みが落ち着いたら運動を再開できます。医師や理学療法士の指導のもと、徐々に負荷を戻すことが重要です。運動を再開して半年以内は痛みが出やすいため、無理しないようにしましょう。

オスグッド・シュラッター病になりやすい人・予防の方法

続いて、オスグッド・シュラッター病になりやすい方の特徴と、予防方法について詳しくみていきましょう。

オスグッド・シュラッター病になりやすい方の特徴

オスグッド・シュラッター病は、10歳〜15歳の成長期のお子さんに多くみられます。特にこの病気になりやすいお子さんの特徴は、以下のとおりです。

• ジャンプやダッシュの多いスポーツをする男子
• 毎日ハードな練習をしているお子さん

上記に該当する方は、オスグッド・シュラッター病を発症しやすいため、日常的なケアを意識することが重要です。以下に紹介する予防方法を参考にするとよいでしょう。

オスグッド・シュラッター病の予防方法

オスグッド・シュラッター病を予防するには、日頃のケアや準備運動の徹底が重要です。具体的な予防行動は以下のとおりです。

• 運動前後のストレッチ習慣をつける
• 運動と休息のバランスをとる
• 身体の柔軟性と筋力バランスを整える
• 身体の変化に注意する

それぞれについて、一つずつみていきましょう。

運動前後のストレッチ習慣をつける

運動前後のストレッチやウォームアップ・クールダウンを欠かさないようにしましょう。筋肉が硬いまま運動をすると、膝への負担が大きくなりやすいためです。
特に、太ももの前面（大腿四頭筋）や後面（ハムストリングス）の柔軟性を保つことが重要です。

運動と休息のバランスをとる

毎日の運動で膝に過度な負担をかけないよう、休養日を定期的に設けることも予防のポイントです。
成長期の関節や骨に負荷をかけすぎないためには、週に1〜2日は休むことを心がけましょう。

身体の柔軟性と筋力のバランスを整える

柔軟性だけでなく、筋力のバランスも予防には不可欠です。特に太ももや股関節周りの筋肉をバランスよく鍛えることで、膝関節への負担を軽減できます。

身体の変化に注意する

身体の成長が著しい時期は、膝の痛みや違和感を見逃さないことが大切です。少しでも痛みを感じたら、運動を控えて早めに専門医の診察を受けましょう。

上記の方法を参考にして、オスグッド・シュラッター病の予防に努めることが重要です。